第39話 理沙と雫
2026年も、よろしくお願いします!
書きたいネタは沢山あるので、今年も色々出すつもりです。
東雲理沙と高嶺雫は同郷の親友である。中学1年生の時に仲良くなって今に至る。
理沙は高校3年の間に妊娠が発覚。卒業式の少し後に娘を出産した。だがその件で、両親と激しく揉めた。
その結果理沙は京都を出て、彼氏の地元へ引っ越しを決める。そのまま入籍してから、間島一輝と出会った。
京都を離れてしまった為に、理沙と雫は物理的な距離が出来てしまった。だが友情は続いており、たまに2人で会っていた。
時が流れ雫は東京の大学へ行き、田邉物産の本社へ就職。それから転勤により、偶然にも雫は理沙と同じ土地で暮らす事になった。
ちょうど一輝が畑山彩智と交際を始めた時期であり、一輝が知らない間に理沙と雫は良く会っていた。
元旦那の不倫発覚後もお酒に付き合って貰い、これまでも色々と話を聞いて貰っていた関係である。
雫は雫で仕事の愚痴であったり、プライベートの悩みであったり。色んな話を理沙に聞いて貰っていた。
「間島君に気を遣わせてしまったわね」
理沙と雫が2軒目に行こうと言い出すと、一輝は先に帰っておくと表明した。2人の邪魔をしてはいけないからと。
雅樹は理沙の悲しみを知っているし、女性同士でしか出来ない話もあるだろうと考えた。
「気の利く子やからなぁ。もう子っていう歳ちゃうけど」
バーに入った2人は、ゆったりとテーブル席でお酒を飲んでいる。理沙はカシスミルクを、雫はファジーネーブルを選んだ。
雫は理沙が思っていたより元気そうで安心している。離婚して間もない頃の理沙は、結構荒れていたから。
理沙の元旦那は、不倫相手の女子大生との間に子供を作ってしまった。自分の娘だっているのに、どうするのかと理沙は怒った。
金銭的な余裕はあるとしても、あまりにも無責任過ぎるだろうと。大げんかになった末、離婚へと至った。
そんな背景があったから、雫はずっと理沙を心配していた。心に負った傷は、相当なものだろうと。
「そうね、間島君はとても良い部下だわ。取引先からの評価も良い」
「そうなんや? まあ一輝君やったら、人間関係で困らんやろうしな」
だが一輝と再会した事で、理沙は癒されている。離婚から半年も経っておらず、完全に回復したとは言えないが。
でも一輝の優しさと、献身のお陰で幾らか持ち直す事が出来た。一輝は理沙を女性として、丁寧に愛してもくれる。
セフレという関係であっても、一輝からの温かな気持ちを受け取っている。どっぷりと沼に嵌るぐらいには。
行為には性欲の解消も当然含まれているが、それ以上に理沙が幸せであって欲しいという、一輝の想いが籠っている。
10歳だった男の子が、大人になってから理沙へ熱心に愛情を向けてくれた。理沙にとっての支えになってくれた。
「理沙、本当に今のままで良いの? 間島君なら、真剣に交際してくれるんじゃない?」
「……ほら、ウチはバツがついてもうたし。1回失敗した女やのうて、バツのない人と結ばれるべきや」
理沙は好きか嫌いかで言えば、間違いなく一輝の事が好きだ。共に過ごす時間が長くなるだけ、その想いは強くなっている。
これまでに交際経験のある歴代の男性達と比べても、一輝は誰よりも素敵だと理沙は思っている。
ただ乱暴に性欲を向けるセックスではなく、理沙の為を思う思いやりのある行為。初めて知った、心の底から満たされるセックス。
お陰で理沙は、一輝に対する依存度がどんどん上昇している。ダメだと分かっていても、もう心が止まらない。
「ウチの話はもうエエやん、雫は最近どうなん? エエ男、見つかった?」
理沙が言っているのは、結婚相手や恋人という意味ではない。雫に結婚願望が無いと知っているから。
子供は別に要らないし、恋人も面倒くさいと雫は公言している。昔に何度か恋人を作ってみたが、あまり楽しめなかった。
だから雫は、セフレしか作らないと決めている。それで満足出来るし、後腐れなくて良いという考えだ。
だが中々上手く行かず、相手が本気になって関係が終わる。その繰り返しとなっており、中々定着しない。
大体1年から2年の間に、相手が雫に告白をして来る。お陰でややフラストレーションが溜まっているのが現状だ。
「全然ダメよ。今日も関係を終わらせて来たばかりよ。また告白されたわ」
「そうなんや~。お互い上手い事行かへんなぁ」
30歳の美女が2人、バーの隅で黄昏ている。どちらも微妙に理由が違うものの、大人の恋愛に悩んでいる。
片やバツイチである事に悩まされ、片や都合の良い相手が見つからない。やや恋バナとしては特殊だが。
そうして次の酒を頼んだ理沙は、ふと思いついた事がある。年上が好きらしい一輝と、雫は結構相性が良いのではないかと。
雫はわりと年下を囲う傾向にあり、昔から関係を持つのは年下が多かった。雫がリードをしたいからだ。
何より一輝だったら、雫だって結婚しても良いと思うのではないかと。理沙から見て、一輝は男性として評価が高い。
大切にしてくれるし、真面目で真摯な性格をしている。雫が好むタイプの男性に、ピッタリと合致する。
「……なあ雫、提案があんねんけどエエかな?」
「何かしら?」
この提案は理沙にとって、非常に複雑な内容だ。だけど一輝の幸せと、親友の幸せを願うなら、良いプランだから。
きっと最後に苦しむのは、自分だと分かっている。だけど相手が信頼出来る女性であるなら、まだ納得が出来るから。
「一輝君……シェアするか?」
「……理沙あなた、本気?」
雫から見て、明らかに一輝は理沙の支えだ。どう見ても理沙は、一輝に惹かれていると分かった。
だからこれで良いのかと聞いた。結婚まで行きたいのではないのかと。でも真逆の提案を理沙は提示した。
セフレとして、一輝を2人の間で共有しようと言っている。それは雫にとって、願ってもない事。
雫は会社で一輝と知り合ってから、結構良いなと思っていたから。あくまでセフレとしてだが。
恋人にしたいとまでは思っていない。ただ見た目と性格が雫の好みに合っており、隙あらばとは思っていた。
「一輝君やったら、雫も結婚まで行くんちゃう?」
「……そのつもりは無いんだけど」
確かに異性として魅力的だと、雫も感じていたが結婚までは望まない。だが一輝のシェアには惹かれている。
セフレが社内に居るぐらい、雫は気にならない。例えそれが自分の部下でも。それに一輝も、理沙を好いているらしい。
先程まで見ていて、それは良く分かった。ならば自分へと恋愛感情を向ける可能性は低い。
雫から見て、非常に魅力的な提案でしかない。だが本当にそれで親友は良いのかと、改めて問わねばならない。
「本気でシェアするつもりなの?」
「雫やったらエエかなって。ウチよりも、一輝君に相応しいし」
理沙にとって、数少ない一輝の相手として認められる相手。交際や結婚をするとなっても、雫なら仕方ないと思える。
寂しいとは思うけれど、心から祝福出来る。下手な相手と一輝がくっつくより、余程安心して託せる。
一輝が雫の部下だと知って、理沙が思い描けた未来の形。一輝が理沙の前から居なくならず、近くに残ってくれる。
雫と一輝が交際を始めたら、セフレという関係は終わらせねばならない。だがそうなるまでは、時間が掛かると理沙は見ている。
親友は結婚も恋人も必要無いと言っているので、すぐ心変わりするとは思えないから。
「ただ雫がその気になるまでは、ウチにもちゃんと一輝君を分けてや」
「その気にはならないわよ。で、本当に良いのね?」
雫は正直一輝への興味がある。親友がこんな事を言い出すぐらい、魅力的な男性なのかと。
もし夜の方がそれだけ素晴らしいのなら、雫としては是非ともお願いしたいところだ。
それと同時に、雫は理沙の気持ちに気付いている。不器用で頑固な親友の背中を押す意味も含めて、動き出す事に決めた。
一輝の知らないところで、とんでもない話が進んで行った。新たに雫がセフレに加わるなど、呑気にゲームをしている一輝はまだ知らない。




