第36話 夏と言えば
夏と言えばやはりアイスだ。冷たい食べ物が欲しくなる。いつものようにリサ姉と食事をした後、2人でアイスを食べている。
土曜日の昼間から、クーラーの効いた部屋でアイス。庶民にとっては十分な贅沢だ。
男として見れば、美女までセットで豪華すぎる。リサ姉は抹茶のアイスで、俺はベタにバニラをチョイス。
「なあ一輝君、バニラちょっと貰って良い?」
ラフな格好のリサ姉が、一口欲しいとねだって来た。今日も小麦色の肌が眩しい。
「良いよ……ハイ」
俺がスプーンで取った一口分を、リサ姉の口元に運ぶ。可愛らしい小さな口で、リサ姉はアイスを食べる。
お返しにとリサ姉が、俺に抹茶のアイスを同じように突き出して来る。当然俺も一口で食べた。
友達以上恋人未満の、何とも言えない関係性。だけど俺達はこれで良い。降って湧いた特別な関係性。
停滞かも知れないけど、こういう関係でしか得られない体験もある。そう悪いものじゃない。
こうして慣れてしまえば、何て事は無い。ちょっと普通より、仲が良い男女というだけ。
「甘いのも控えんとアカンねんけどなぁ」
「これぐらい大丈夫だって。リサ姉は十分細いから」
太るからと気にしているけど、リサ姉のボディラインはとても綺麗だ。1児の母とはとても思えない。
ほっそりとしているのに、出る所は出ている。豊満な胸に形の良いおしり。全てが美しく完成されている。
「でもちょっと体重増えてんで?」
「え? でも体型は変わってないよ」
ほぼ毎日のように、俺はリサ姉の裸を見ている。だけど太ったと感じた事は無い。昨夜だっていつも通り細い腰だった。
体重が増えたというけれど、一体どこに脂肪がついたというのか。どう見ても腰や太ももに変化は……あ。
「もしかして、胸?」
「一輝君もそう思う!? 何か最近ブラが合ってない気ぃすんねん!」
まだ大きくなるというのか。既に相当なものをお持ちだと思うけれど。どこまで行くのだろうこの人は。
それはそれとして、大きくなるのは歓迎である。リサ姉と関係を持ってから、俺は巨乳に目覚めてしまった。
昔はどっちでも良かったけど、あの揉み心地を知ってしまうともうダメだった。大きいは正義だと俺は思う。
「胸なら良くない? 腰回りとかより」
「変わらへんよどっちでも! これ以上大きくならんでエエのに……」
そう言いながらリサ姉が胸元を寄せる。タンクトップの胸元から、とても素晴らしい景色が覗いている。
小麦色の谷間が、俺の目の前にある。今より大きくなるというなら、どうなってしまうのだろう。
現状でリサ姉はHカップらしい事を聞いて知っている。Hの95だそうで、この領域は中々ブラのサイズが無いらしい。要らぬ豆知識が増えた。
もう1つ胸にまつわる下らない真実として、挟んで貰うのは別に気持ちよくなかった。俺は少しだけ、悲しい気持ちになった。
アダルトビデオはファンタジーだと知っていたけど、まさかそんな事まで幻想だったなんて。
「スケベ心が漏れてんで~今日はもうすぐ出掛けんねんから」
「ご、ごめんつい」
なまじ知ってしまったお陰で、リサ姉の胸が俺の視線を簡単に吸い寄せてしまう。魔の谷がそこにあるせいで。
触れたい気持ちが沸き上がるけど、今日はそういう日じゃない。これから一戦なんて、やっている場合じゃない。
これから2人で買い物に出掛ける。俺達はこの夏、どこかのタイミングで海へ行く予定を立てている。
お互い水着やビーチサンダルなどを、買いに行く必要が出たのだ。ズルズル後回しにせず、さっさと行こうという話だ。
リサ姉の水着姿を見るのは初めてじゃない。昔に何度も見た事がある。だけどそれは、想い出に過ぎない。
俺はこれから、水着姿のリサ姉をセフレとして見る事が出来る。あの頃とは見る意味が違う。
「でも海とか、ホンマ久し振りやわ」
「俺は去年に、何回か行ったなぁ」
内定が決まっている者同士で、海へ遊びに行った。体育会系ばかりだったから、本気のビーチバレーをやって来た。
彩智とのデートで行った事もあったな。その思い出は地味にダメージを受けるから、あまり思い出したくはないけど。
彼女が水着姿を見せていても、下着姿は見た事がないという悲しみ。辛かったなぁあの頃は。
友人達は皆が非童貞で、俺だけが未経験だった。高校生とか大学生だと、童貞って凄いハンデだよな。
俺達男子は何故あんなに拘っていたのか、今でも良く分からない。実際に経験しても、思っていた程何も変わらない。
優秀なスキンシップだとは思うけど、それ以上の何かを見出せてはいない。子供が出来たらまた違うのかな?
「リサ姉の水着姿が楽しみだよ」
「もう若くないねんから、あんま期待せんとって」
照れ臭そうにリサ姉はそんな事を言う。また若くないなんて考える。全然まだまだ現役なのに。
ほぼ確実に注目を集めるだろう。またナンパの被害に遭わないよう、俺が目を光らせないと。
リサ姉の水着姿は楽しみだけど、不届き者が出そうな点は不安材料でしかない。
もうちょっとリサ姉が自分の魅力を理解してくれていたら、安心も出来るんだけどなぁ。
若くないからと、自分を安く見ているのは良くない。どう考えても超のつく高嶺の花だというのに。
「そんな事ないよ。いつも言ってるけど、リサ姉はまだ若い」
「……もう、物好きなんやから。でもありがとうな」
やっぱりこれ、自覚が足りてないよなぁ? 俺が特殊だと思っているっぽいし。
そうじゃないんだけど、リサ姉は認識を一向に改めてくれない。やはり年齢という数字がネックなのか。
子供を作れるボーダーラインが近付くから、ある程度は仕方ないのかも知れないけど。
男性は産む側じゃないから、あまり気にせず生きられるのだろうか? 自分が男だから、気にしないのか?
でもそれにしたって、30歳はまだまだ若い方だろう。寿命が80歳ぐらいとしても、まだ半分も生きていない。
「おっと、そろそろ出掛けない?」
「あ、ホンマやな。ちょっとゆっくりし過ぎたなぁ」
俺達は食器類を慌てて片付けて、出掛ける準備に移る。俺はリサ姉の家を出て自宅へ戻る。
念の為にサッとシャワーだけして、外出用の格好に着替える。リサ姉と出掛ける時は、いつも気合を入れて行く。
中途半端な格好では、隣へ立つに相応しいと言えないから。恋人ではないけど、それなりの関係ではある。
何であんな奴と、などと思わせてはいけない。それではリサ姉の価値まで下がってしまうから。
趣味の悪い女性だと、好奇の目に晒されてしまわないように。毎回手は抜かずに全力だ。
俺が好きな中堅ブランドの『AT』で買った、タンクトップにハーフパンツ。更に白いシャツを羽織って香水もつける。
「後は髪型と、靴はどうするか……」
俺は洗面所で髪型を整えつつ、合わせる靴について考える。スニーカーで行くか、革靴にするか。
こんなな格好だし、バッシュでも良いか。最近履いてなかったし、たまには使おう。そこそこ値段は高かったしな。
買うだけ買って使わないってパターンを、たまにやってしまう。買ったら満足してしまう時がある。
所有欲を満たしてしまったら、それで終わってしまうんだよな。良くないとは分かっているけど。
「準備良し! リサ姉を迎えに行くか」
俺はショルダーバッグを持って家を出る。リサ姉の家はすぐ隣だから楽で良い。
同じ隣同士でも、昔よりも距離が近くなっている。物理的な距離も、心の距離も。
鍵は閉められていないので、俺はドアを開けて入る。閉まっていても合鍵があるけど。
「リサ姉! 準備出来たよ」
「ごめ~ん! もうちょい待って!」
リサ姉は俺と出掛ける時、滅茶苦茶オシャレをしてくれる。毎回とても可愛い格好をしてくれる。
それがとても嬉しくて、毎回張り切ってしまう。今日はどんな可愛い姿を見せてくれるのだろうか。




