最終話 憧れの元ヤンギャルママ(36)が可愛すぎる
気が付けば俺もアラサーになり、あの日のリサと変わらない年齢になりつつある。由衣が産まれてから3年が経った。
今日は俺とリサの結婚式を行う日だ。付き合い初めてから、6年越しにして漸くの結婚式だ。
これまでにも本当に色々とあった。1年前に4人家族から5人家族となり、中古物件だが戸建ての家に移り住んだ。
新たに産まれたのは男の子で、杏奈が求めていた弟が出来た。結局由衣が産まれてからも、俺とリサは熱烈な日々を過ごした。
結果もう1人産む事をリサが求めたから、俺も応える事にした。その分大変だけど、俺の働くモチベーションは上がる一方だ。
「パパー! 抱っこ!」
タキシードを着た俺の下へ、3歳になった由衣が駆け寄って来た。顔立ちがリサに似た可愛らしい少女へと育った。
リサの控室に続く教会の廊下を、トコトコと走る姿はとても可愛い。ショートカットの黒髪が揺れている。
「こら由衣、走ったら危ないよ」
「えへへ~」
足にしがみつく娘を抱いて、リサの控室へと向かう。ドアの前に立っているのは、18歳になった杏奈だ。
リサとは違い真っ白な肌と、真っ赤なインナーカラーを入れたウェーブの入った長い黒髪。
腰まで伸ばした髪は、高身長でスタイルの良い杏奈に良く映える。読者モデルとして活躍しつつ、受験生をやっている。
結婚式の会場内なので、杏奈は学校の制服を着ている。制服が可愛いと女子に人気の高校だけに、杏奈が着ると都会の芸能人みたいだ。
「もう由衣、髪の毛が跳ねているじゃないの」
「ねーねが直してー」
仲良し姉妹をやっている2人は、いつも仲睦まじい姿を見せてくれる。姉を慕う妹と、妹を可愛がる姉。
父親は違えども、血の繋がった姉妹として上手く関係が構築出来ている。良い家庭が築けたと俺は思っている。
走り回って崩れた髪型を、杏奈が直してあげている。俺に抱っこされて由衣はご機嫌のようだ。
杏奈がバッグからブラシを取り出して、杏奈の後頭部を梳いている。2人が外に居たという事は、リサの着替えが終わったのかな?
「杏奈、お母さんは?」
「完璧だよ! 超綺麗だからって、びっくりしないでね」
そんな事を言われたら、期待してしまうじゃないか。写真を撮る為に、リサがウェディングドレスを着た姿を見ている。
ドレスを選ぶ時に、色んな姿を見ている。だけど当日に見るのと、事前に見るのでは意味が違う。
結婚式だからこそ、込み上げて来るものがある。今日俺はリサと、待ち望んでいた瞬間を迎えるのだから。
出産の為に、先延ばしにしていた結婚式。入籍してからは4年以上経ってしまった。だけどその選択に後悔はない。
お陰で俺達の間に、新しい家族が増えたのだから。結婚式をしてからだったら、出来なかったかもしれない命だ。
期待を胸に俺はリサの控室に入って行く。扉を開けた先には、最高に美しい女性が立っていた。
マーメイドラインと呼ばれている、体型がハッキリと出る形の真っ白なドレスを着たリサがそこに居る。
上半身から膝の辺りまでは生地がフィットし、胸元から腰回りまでの曲線がセクシーかつ美しい。
改めて対面してみると、本当に最高で言葉が出て来ない。本来ならば、俺には絶対見られ無かった筈の姿。
妻として目の前にリサが立っている。こんなに嬉しい事が他にあるだろうか? 1つの到達点の俺は居る。
「お父さーん? ありゃ、固まってる」
「流石の間島君も、声が出ないみたいね」
見惚れていた俺は、リサの隣で立っている高嶺さんに気づいていなかった。彼女が着ているドレスは自分で作ったもの。
落ち着いたライトブルーのクラシカルなイブニングドレスだ。高嶺さんは2年前、遂に自分のブランドを立ち上げた。
今や上司ではなくなり、友人としての関係が続いている。もちろん性的な意味は一切無く、本当の意味での友人だ。
彼女は性的な欲求を全て衣装作りに転換し、バリバリと新作を発表し続けている。とても勢いのある会社の経営者だ。
将来的には杏奈も専属になる予定で、リサも従業員として働いている。最初の間は信頼出来る身内で固めているのだそう。
「いやもう、リサが凄く綺麗だったから」
「もう一輝ったら。何回も見たやんか」
それはそうなんだけど、やっぱり本番となるとインパクトが違う。小麦色の肌に純白のドレスがこうも似合うとは。
何回目だろうと、見惚れてしまうのは仕方ないだろう。そんな最高に可愛い姿を見せてくれているリサのすぐ近く。
ベビーカーで寝ているのは、1歳になって間もない俺達の息子。間島颯太は穏やかな表情をしている。
寝る子は育つというが、本当に良く寝る子だ。順調に成長を続けており、健康そのものである。
自宅では良く飼い猫のケンタと並んで眠っている。結局以前の約束通り、高嶺さんと共に猫を飼い始めた。
颯太と同じく1歳で、兄弟のように生活している。ケンタはマンチカンのオスで、綺麗なシルバーの猫だ。
高嶺さんの猫も同じで、メイという名前のメスだ。年齢も殆ど変わらず数週間メイの方がお姉さんである。
ちょくちょくどちらかの家で、交流をさせている。現時点では良好な関係で、無事番になれそうだ。
家族が一気に増えて、我が家も随分と賑やかになった。たまにお互いの実家にも顔を出しつつ、楽しく生活している。
両家の親達も喜んでおり、リサのご両親も大層歓迎してくれている。京都は少し遠いので、最近はタブレットをプレゼントした。
テレビ通話機能を使い、祖父母と孫たちの交流に活用している。リサのご両親も今日は来場してくれている。
先程も挨拶に行ったけど、リサのお父さんが泣いていた。紆余曲折があっての結婚式だからな。
1度目の結婚式は、ご両親が参列していない。事実上今回がリサのご両親にとって、初めての娘の結婚式なのだ。
父親として込み上げて来るものもあるだろう。俺も将来、あの父親としての気持ちが分かるのだろうか。
杏奈はともかく、由衣はまだまだ先の話。杏奈ならばあと数年で、結婚するとしても不思議ではない。
「ほら貴方達、私が写真を撮ってあげるわ。並んで頂戴」
スマートフォンを構えた高嶺さんが、俺達にカメラを向ける。俺は由衣を抱いたまま、リサの隣に立つ。
杏奈がリサを挟む形で反対側に回る。タイミング良く颯太が目を覚まし、リサの腕に抱かれた。
「さあ笑って」
高嶺さんのスマートフォンがシャッターを切り、俺達の家族写真が撮影された。一生残る最高に幸せな瞬間だ。
約18年前、10歳の時に俺はリサと出会った。見た目は少しキツイ印象を受ける美人なお姉さん。
幼い娘を頑張って育てる若き母親であり、お茶目で可愛らしい内面の持ち主だった。毎日のように共に過ごして来た。
俺が初めて恋をした女性であり、当時は既婚者で諦めるしかなかった。最初から終わっていた筈の俺の密かな恋。
それが今こうして、結婚式をやろうとしている。あの時憧れたお姉さんと、3人の子供を連れている。
「エエ写真が撮れたやん。リビングに飾ろうや」
「お父さんちょっと緊張してて笑っちゃう」
「ゆいも見せて! 見せて!」
こんなにも温かな家庭を、俺は築く事が出来た。誰かがリサを幸せにするのではなく、俺がこの手で幸せにした。
もう昔のように、誰かに頼る事はない。これからもずっと、俺の手でリサを幸せにし続ける。そう誓って6年が経った。
きっとこれからも、大変な事はあるだろう。今では高嶺さんの代わりに部長となった俺は、職場でも責任ある立場だ。
職場に家庭と、守らねばならないモノが沢山増えた。だけど俺は恐れてはいない。だって俺の側には家族がいる。
「さあリサ、そろそろ行こうか」
「せやな。もうちょいで時間やし」
もうすぐウェディングプランナーさんがやって来る時間だ。俺達の記念すべき結婚式が、これから始まる。
きっと一生忘れる事はないだろう。俺が憧れた元ヤンギャルママのお姉さんが、こんなにも可愛い姿を見せてくれているのだから。
■お礼とあとがき
ここまでお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
今までは女性の読者も意識した内容にしていました。それが今回は、ガッツリと男性向けに振り切ってみました。
本作はこれで終了ですが、処女作を完成させたらスピンオフを数日で思い付いた人間なので、また同じ事をするかもしれません。
今も投稿を続けているホラーの方に専念するかもしれません。漢の子が好きなタイプの現代ファンタジーネタも温めています。
某姉系ギャルゲー風味のラブコメも候補としています。女性向けを一旦挟むかもしれない。
どうするかは決めていませんが、もしまた何かの作品でお会い出来たらなと思っております。




