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鷲羽国物語 〜異世界救済2 救済されない世界の話  作者: たかなしコとり


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16/19

その16 浅はか

いい天気だった。

パコパコと馬を進めて、時々馬を休めつつも昼前には領都に着く。

一年近くぶりのエシルの帰省に、またも城門の門番がざわつく。


「何だ。」

「急いで御屋敷に行って下さい。」

門番に声をかけられて、気が逸る。何かあったのか。

屋敷まで行くと、門番が門を開けてくれたが、

「今、御屋敷には誰もいらっしゃいません。」

「母上は?」

「王都の御屋敷に。お手紙を預かっております。」


門番が持って来た手紙には、これを読み次第王都に来るように、とある。

日付は、二十日前。

十ヶ月も留守にしていた割に、そう日は経っていないと言うべきか。


しかし王都へ行っていては、さすがに今日中にはタニアの所へ帰れない。

どうする。

手紙も気になる。わざわざ手紙を残すからには、余程重大な何かが起こったと考えるべきだろう。


父に何かあったか。あるいはサディナか。

どうする。


悩んだ末、王都へ向かうことに決める。

手紙に詳細がないという事は、他人に絶対知られてはならないことが起こったという事だ。

父に何かあった可能性がある。

さすがに放ってはおけない。


これがタニアと再会する前なら、絶対許さなかっただろう。

でも会えた。お互いを確かめ合った。

ちょっとぐらいなら、許してもいい気持ちにもなっている。

今日中に帰るのは無理でも、明日には帰れる。

一日帰りが遅くなったら、タニアを心配させてしまうかもしれないが、そこは勘弁してもらおう。


愛馬を屋敷の厩番に預けて、別の馬を引きだす。

ここまで負担をかけているし、明日帰る時にここに寄ればいい。楽勝だ。


その考えが浅はかだったと、後に思い知ることになる。


王都へは夕方に着いた。

北門から入る。

門番には、おや?という顔をされた。

西から入った方が領都からは近いが、歩く距離が長くなる。王都の中は人通りが多いので、馬を飛ばすことが出来ない。

その点、北から入るとすぐ屋敷街だから、馬でもやや速く走れる。


王都にある、エルデム将軍の屋敷に向かう。

門番は、エシルの姿を見てすぐ門を開けてくれた。

「お帰りなさいませ、若様!」

エシルが王都を出て、三年以上が経っている。

門番は、やや涙ぐむようだった。

「ご無事で何よりでございます。」

馬の轡を取って、声をかけて来る。


「母上は?」

「中に。どうぞお急ぎを。」

やはり何か相当緊急な事が起こっているらしい。

案内を待たずに中へ入ると、目の前に見知った男が立っている。


「うお。テュルン兄上。」

従兄だった。

外の話し声に気づいて出てくる所だったらしい。


「おお!エシル!戻ったのか。よかった。」

テュルンは自分より背が高いエシルの褐色の髪をくしゃくしゃに掻き回した。

「何があったんだ。」

「叔父上が・・まあとにかく、二階だ。そこに叔母上もいる。」


旅装を解く間もなく、二階へ上がる。

後からテュルンもついてくる。

「お前がいなくなった後、叔父上がずいぶん弱られてな。」

「それは聞いた。」


「どのみち後を継ぐものがいなくては、陛下に申し訳が立たぬと言い出されて。」

「それはまた・・、ずいぶんと弱られたものだな。」

エシルには、頑固でいかつい、巨岩のような父の姿しか思いつかない。


「色々あって先月、将軍位を返上するとか言い出してな。」

「え。」

思わず立ち止まる。テュルンはエシルの背中にぶち当たる所だった。


「将軍位の返上?」

「おう。それで叔母上がびっくりして、とりあえずうちのテミルを養子にして、この家を継がせるかという話になっている。でもなぁ。」

テュルンは、肩をすくめた。

「将軍家同士がこれ以上近しくなることを、陛下はお望みでない。」


確かに、どこを見ても「あの家とあの家は親戚」ばかりの貴族界だが、兄弟で将軍を継いだ者はいない。

テュルンが自分の父を継ぎ、テミルがエルデム将軍家を継ぐと、それが成立してしまう。おそらく許可されまい。


しかし将軍位を返上し、将軍家としての立場を失うと、家屋敷はともかく、領地は返上しないとならない。領地はいわば将軍としての給料代わりだからだ。

エシルが連絡すると言った数年後まで、どうやってしのぐか。

この十日ほどは、ずっとそんな相談ばかりしていたらしい。


驚いた。

将軍位を返上するという事は、収入がなくなるということだ。

もちろん、今ある蓄えでしばらくは暮らしていけると思うが、この屋敷を維持していくのは大変だ。いずれここを手放さなくてはなるまい。


それにタニアだ。

領地を返上し、誰か他の者があの地の領主になった場合、前の領主の息子があの村に住むのを快くは思うまい。

タニアの存在が王宮にバレるのも困る。


そんなことを高速で考えていると、すぐそばのドアが開いた。

「そんなところで何しているの。」

母だった。


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