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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第三章 合い食む餓狼

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20321 四対七


「はははははは! ははははははははは!!! 素晴らしい! 素晴らしい闘争だった!!!」


 郊外の一軒家に、血が凍りつくような哄笑が響き渡る。室内は凄惨(せいさん)無比。家具という家具は破壊され、血でまだら模様に染まっていた。


「死んだら消えるのか……殺すなよ静」

「はぁはぁ……はい」


 室内に人影は五つ。床に倒れて動かない……顔面を殴られ続け死亡した(こおり)貞郎。自身も血まみれのボロボロながら、マウントポジションで高笑いするマツ。


 完全に拘束され、身動き取れない長月と、抵抗されて左目に傷を負った巴静。

 そして、唯一無事な椅子に座って、佐香の残していった酒を楽しんでいた門浦。


「楽しかったか?」

「素晴らしい戦士だった」


 血まみれの奥歯を吐き捨てながらマツが笑う。地獄の悪鬼のような、血まみれなのにとろけるような微笑み。


「門浦様、あ、あ、あの……」

「あ?」

「わ、私は何も、誓って誰にも……!!」


 静は秘密警察活動と、今回の襲撃をどの【狩人】にも秘密にしてきた。門浦にそう言いつけられていたからだ。

 だが、この場にはマツがいる。静は彼の出現以降震え上がっていた。過呼吸気味だった。拘束した長月に一度は振りほどかれて、目潰しをされる程だ。


「お前の秘密警察も大したことねーな」

「ひっ」

「俺様が出かける時、マツはいつでも遠巻きに尾けて来てる。強敵が俺を襲うのを楽しみにしてやがるからな」


 楽しそうに笑う門浦、マツは悪びれもせずに頷いた。


「……え?」

「門浦は囮だ……笛吹(うすい)は次こそ来てくれるだろうか」

「まあ、そういうこった」

「…………」


 生き残った長月は手足を拘束され、猿轡(さるぐつわ)を噛まされていた。ぐったりと抵抗をやめた彼女を、門浦が舐めるように見る。


「安心しろ長月、すぐには殺さねえよ」

「…………」


 郡の死は、無駄にできない。死んではならない。長月は静かに門浦を見た。

 門浦について分かったことが三つ。マツの弱点が一つ。巴静についてが一つ。


 門浦は、というか【ドラゴン】には、銃弾による攻撃が効かない。粒子によって守られた。これが発射速度なのか、火薬に反応したのか、別の理由なのかはまだ不明。検証が必要になる。

 二つ目、門浦は相手を屈服させた場合【武器】を奪えると聞いていた。少なくとも『一回目』はそうだったのだろう。


 それは川魚(かわな)の精神的成長、あるいは制限時間超過によって返却され、逆に門浦のカトラスが貸与された。

 それが恐らく【ドラゴン】化によって強化されていた。郡がナイフを手放した時に奪われたのだ。


「お前の【武器】……【盾】にもなんだろ? 最高じゃねぇか」


 強制的にトンファーを奪われる。一度に何種類奪えるのか、保持できるのか分からない。

 しかし三つ目。持ち主が死んだ場合は保持できなくなる。郡が死亡した今、もはやナイフは出せない様子だ。


 【盾】を奪われたのは致命的だ。門浦の戦闘能力に貢献してしまう。舌を噛みたいところだが、誰かに伝えるまではそれもできない。


「静、表の連中にマツを運ばせろ」

「は?」

「気を失ってやがる」


 マツの弱点、それは相手に合わせるところだ。

 郡相手にマツは【武器】を抜かなかった。殴り合いで決着した。それでもマツが勝ったわけだが、これは確実に付け入る隙だ。


 戦いに固執するあまり、ハンデを喜んで自分に課す。馬鹿だ。

 その結果メリケンサックでボッコボコにされて、顔面はズタズタ、肉はえぐれて血も大量に失い重傷だ。狙うなら今だろう。


 最後、静は【武器】が無い、使う気配が一切無かった。狭い室内だからとかそういう理由もなく、【武器】を使う発想がない。


 彼女もまた門浦に奪われている。

 つまり、最低でも門浦はいま、長月のトンファーと静の【武器】を使える。


 どうにかしなければ。どうにか伝えなければ。


「こいつはどうします? 牢屋にでも入れますか」

「いや、ちょうど【狩人】を欲しがってる奴がいるだろ?」

「…………は?」


 ろくでもない事になりそうだ。長月は眉根を寄せた。


「巌野にくれてやれ、ただし一週間は保たせろと。よし、返ってやることやるぞ」

「はっはい……っ」


 メスの声をあげる静。その顔面を、門浦がノーモーションでぶん殴った。


「勘違いすんなボケがッ!! 迎撃の準備だ! こちとら居城が知られてんだよ!」


 長月は舌を巻いた。困ったな、門浦が優秀に見える。勝って兜の緒を緩めず、強襲してくるだろう笛吹たちを迎え撃つつもりだ。


「全員に状況説明の伝令を飛ばせ、ついでに監視だ! 内通者が居たらそいつも殺す。まあ、宍戸か神崎だろうがな」


 疑われているぞ宍戸……長月は彼の無事を祈った。自分が死んだとしても、宍戸が生き残れば、お互いの現代での死は回避できる可能性が高まる。

 門浦が【ドラゴン】である以上、宍戸は門浦に心から恭順することはありえない。


 そうであってほしいと、長月は考えていた。もちろん、希望的観測に過ぎないが。





 ――――――郡貞郎、死亡。

 ――――――長月瞳花(どうか)、拘束。



 四対七。



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