20300 第三章予告
……転覆画策者
「俺はあいつの、火嵐の代わりだ。真に価値があるのは弟のほうさ」
皮肉に歪む赤い唇。剃刀の美貌。美しくも強い孤高のフェンサー。その真の姿は思うほど強いものではなかった。
流れる銀星、鋭く毒を孕む舌鋒。替え玉となることを選んだ者。
『レイピア』笛吹冷火。
「お前だ。お前だけなんだ。俺が欲しいのは世界でお前だけなんだ。お前の中で俺がどれだけ小さくても、俺の中ではお前だけが一番大きい」
巌のような身体。女好きの『種馬野郎』。その末路。たった一人の女を愛し、そのためになら何もかもかなぐり捨てられる。
彼女の中で価値がなくとも、一方的な愛であっても。
『バスタードソード』蓮田蛮。
「この先私はどこにも届かず、何者にもなれずに死ぬのだろうが、恋は知っている。それだけでいい。その想いを抱いて死ねるとも」
痩せぎすの子供、長い緑の黒髪、あどけない顔立ちに似合わぬ視線の鋭さ。
永遠に辿り着けない少女、戦士としても、女としても。
『トンファー』長月瞳花。
「一番高い所に立つということは、周りがよく見えるということだ。言い方を変えると、自分がまだまだ低い位置だって見えるってことなんだよ」
『落とし穴』穴戸俊夫。
「おいしいものを食べて、女の子を抱いて、それ以上の幸せなんて無いじゃないか、それが人生のすべて、全てさ」
『コルテッロ』郡貞郎。
「お酒お酒! お酒忘れてるわよ! おビール様! ポン酒! ワイン! ウィスキー!! お酒があればいつでもハッピー!!」
『酒』楠野佐香。
……暴君
「全て俺様のもんにして、全部壊して全部犯す。国中のレリーフと女を俺色に染めてやるよ……それが王様の振る舞いだろ?」
ビール腹の中年男性が、似合わない派手な服で、下卑た笑みで舌を出す。控えた女奴隷の乳を揉み、女の椅子に座りながら。
求めても求めても、その飢えは満たされることはない。
『カトラス』門浦随一。
「やだ! 死地妊!! 死地妊!! あっしじゃぁダメでやしょぉ!? あっしは『外面』、魂なんて無いんでやすよぉ!!」
悲鳴は、延ばした手は虚空を掻いた。何にも届かず、どこにも行けず。
復讐の過程を乗りこなすための『繋ぎ』主役になれない、道化の仮面。
『 』美咲。
「幸福のために何が必要なのか、何を差し出せばいいのか。何かを得るためには何かを捨てなきゃ。だから私は手段を選ばないの」
艶めかしい美女が物憂げに語る。手に入れた女。それは即ち、もう一度失う恐怖を得たと言うこと。
『簪』神崎紫杏。
「闘争だ。もう一度、いや何度でも、血が沸騰するような、魂を削り合うような闘争が欲しいのだ」
『エスパーダ』マツ。
「人間の内側には輝きがある。光がある。私はそれを見たいのだ。形にして残したいのだ。だから死ぬな、生きよ、輝きを見せておくれ」
『玄翁と鏨』巌野違畝。
「僕を見ろ、僕を見ろよ。あいつじゃなくて僕を見ろ。あの子の代わりにしてやるんだから、キチンと役割を演じきれ」
『出刃包丁』出羽崇道。
「我々は善のために戦うべきです。我々の力は人々を守り悪を討つためのもの、私利私欲のために使うなど言語道断です」
『薙刀』巴静。
十三人の【狩人】。六体七の殺戮遊戯。尾を食み合うケダモノのように。
【シンビウス】の掌の上で。踊れよ踊れ皆殺しの流儀。最期の一人が斃れる時まで。
武器を取れ、ドラゴンを殺す
第二部 補欠の僕らも星を見る
三章 『合い食む餓狼』




