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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第二章 仇国の魔女

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20225 【印】


「…………白く光って人間とは思えない動きをする奴がいる。『くねくね』と呼ばれていた」

《変な名前だな》

「あるいは『河童』。なんにせよ精神に異常を与える妖怪だ」


 目貫(めぬき)(あまた)は忘れがたいあの夜……精神的には二十日ほど前だが、現実では地続きの時間を思い出していた


「直視すると魂が抜かれるようだ。脱糞? あるいは失禁する」

《…………物質化した魂を排出させるのか。物質化の方法は分からないが。合理的だな》


「…………尻からだぞ?」

《生物の構造的に物質を体内から排出するなら尻が最有力だろう? 口は窒息死の危険をはらむ》


 千は小野を見た。小野は明らかに自分を見るなと目で語る。当たり前だ。

 しかし、それにしても何か反論はできないだろうか。生理的嫌悪感以外に何か無いのか??


「魂が何なのかいまいち分かっていないんだが、なんで物質化してから出すんだ? 霊的エネルギーというものが存在するならそのままで出せばいいだろう」


 千が欲しいのは、答えではない。ただ、脱糞という形に納得したくない。なんかやだ。


《魂は、それ単体では極めて不安定な構造をしているのだ。器が無ければ大気中でも簡単に破損する。魂だけの状態で摘出するのが難しいから、おそらく体液を流用したゲル状の保護膜を作ったのだろう。

 目的は収集と解析だろう。『奴ら』が現地人に紛れ込むのが上手い理由が分かったな》


 …………『現地人に紛れ込むのが上手い』。

 千は戦慄した。奪った魂から情報を読み取り、その人になりすますということか。


「対処法は?」

《ない……というか、必要ないだろう? 『魔力』で肉体を保護していれば問題ない》

「は?」

《【客人(ディシディアン)】なら自動的にやっているはずだ》


 ダメじゃん。千は言葉を失った。現代は生身の普通の人間なんだよ……待てよ?

 【望み】を叶えて自分の肉体を強化なり【義体】化するなりすればいいのか??


「思った以上に、有意義な話し合いになったな。探偵さん、最後の質問はどうする?」

「…………好奇心よりも実用性だろう。知りたいのは【印】のことだ」


 他に考えた質問は、【ドラゴン】とは何者なのかといった興味本位のものばかりだ。

 もちろん、その先に有益な情報が無いとも限らないのではあるが。やはり確実で必要な情報が有線であろう。


「【印】を使用した場合のメリットとデメリットを確認したい。使うとお前らの手先になってしまうのならば使う選択肢は除外される」

《ククッ》


 イムやネヘプを見ている限り、自由意志を感じる。【ドラゴン】に絶対服従する訳でもなさそうだ。


《【印】が与えるのは主に三点。『知識』『魔力』『権能』だ。

 『知識』はシンプルだ。その時代に無いはずの知識や技術を与える。といっても、与えただけで使いこなせれば世話はない。使い物になるかどうかは本人次第だ》


 言い方を変えると、過剰で強力な知識を与えられる可能性もある。

 具体的には分からないけれど、一気に技術革命が起きかねない……イムの医術とか?


「『魔力』ってなんだ? 魔法でも使うのか?」

《使っているだろう? こちらの魔法とはシステムが異なるが、『魔力』で作った【武器】で俺の命を一つ奪った》


 なるほど、千は納得した。イムが石板に向けた緑の光も、『セト』の指先に灯った紅い光も【武器】が放つ粒子光に近いと思っていた。

 『名前が異なる同じ物』だ。


「…………『魔力』が増えて、あたしらにメリットあるのか?」

《単純に出力が上がるのと、使える種類が増える。俺の【印】を受け入れて名前を呼べば、破壊と嵐、砂漠と炎の力を与えられる》


 それが喜ばしいのか便利なのか、千はいまいち理解できない。横の小野も同様の様子。


《『魔力』は肉体制御や強化に使うのが一般的だが、それ以外の使い方もある。炎を操り、獣を友とするなどな。だがそれらは術者の性質と相性次第だ》


 つまり考えても無駄ということだ。


 千と小野は理解していないが、『魔力』=【体内粒子】量が増加した場合、【義体】の肉体スペックが増加し、治癒能力や連続活動時間にも影響する。

 その増加量と出力は完全に比例する。具体的には平均的な【狩人】の粒子量が100ならば【印】で得られる増量は50。


 千は完全に失念しているが、ヤオとの遭遇路に【体内粒子】について言及されている。つまり、【体内粒子】の使い方次第で彼女のような高機動や、成人男性を持ち上げるような謎の力も利用できるという事である。

 事であるが、千たちは軽く流した。


「『権能』ってのは?」

《関係する能力か、知識野へのアクセス能力だと思えばいい。【馬鹿女(シンビウス)】の印があれば『セクメト』の起動ができるような》


「問題はデメリットだな、あんたたちへの服従とかあるのか?」

《ないが、知識のインストールには知恵熱を出す者が多い。そして、その際に思想に染まる可能性もある》

「…………可能性ね」


 『セト』は嘘を吐いていないだろう。だから、それがどれほどの確率なのかは分からない。九割方だとしても『可能性』だ。

 そして、そう聞いたところで千は小野を見た。自分の尻を触る小野。そこにあるとされる【印】。


 小野の『一回目』に関する欠落は、【ドラゴン】の【印】に関係があるかもしれない。

 二人の意見は一致していた。



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