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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第二章 仇国の魔女

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20223 魂の同期


「アマタ! お前なんて事を!!」

《良い、騒ぐな。ククッ。俺が力を見誤った。彼の戦働(いくさばたら)きを讃えよ、メヌキアマタは真の勇士である!》


 探偵、目貫(めぬき)(あまた)は警戒を続けた。端から見れば一瞬の攻防だった。千は自称【ドラゴン】『セト』の右腕を破壊し、心臓を穿った。


「動くなよ、ドタマかち割られたくなけりゃ」

《好きにしろ、命を一つ失うだけだ》

「…………その『命』が無限か? 有限か? 無限ならそもそも『防御しない』よな?」

《ククッ、クッ、クククッ》


 小野の言葉に『セト』が苦しげに笑う。その笑いは、彼の『命』が有限であり、同時に『死』を無視できないことを物語る。


《女、そして幼子も武器を納めよ。俺の負けだ。汝らに祝福……は要らんという顔をしているな。ククッ。

 では質問に三つ答えるが……その前に名乗れ、宣誓する》


「あたしは小野、そっちはポロルだ」


 手斧を振りかぶる斧、ポロルは歯をガチガチ鳴らしながら飛びかかろうとしていた。


《メヌキアマタ、オノ、ポロル。汝らの問いに嘘偽りなく答えると、『セト』の名において誓う……勇士とその友らに嵐と蛇除けの祝福あれ》

「勝手に祝福するな」

《おまけだ。おまけ。ククッ。それともう一点、俺は貴様ら【客人(ディシディアン)】の言う【ドラゴン】。六柱の次元介入者の一つだ》


 息を吐き、あぐらを組む『セト』。事もなげに右腕を上げる。へし折れた関節は繋がり、脇の傷は完全に消えていた。


《俺の役割は『反逆者』。他の龍のやり方に疑問を挟む立場となる。例えば》

「物理法則と常識的にあり得ない、破壊兵器の貸与とか?」

《ククッ。聡いなメヌキアマタ。勇士でありながら賢者でもあるか》


 名探偵扱いは嫌だが、賢者も抵抗がある。なんのいうか、持ち上げ過ぎだ。


《俺は過剰介入のカウンターとしてこの地に推参した。お前たち【客人(ディシディアン)】のようにな》

「『セクメト』を破壊するためのってことか?」

《そうだ。そしてオノ、お前の推測は正しい。俺の命は有限で、半日しか保たん。命を奪われ再生のたびに時間を消耗する》


 時間制限付きだが、不死身の【義体】なのであろう。


《さて、自己紹介は十分だろう。以降は質問とみなす》

「最後に一つだけいいか?」


《なんだ?》

「オレたちが『セクメト』を動かそうとしていたらどうした?」

《全ての権能を利用して皆殺しにした》


 千は頷いた。素手格闘では千に分があっただけで、本気で殺し合った場合は話が違う。

 不死身を利用して、刺し違えに来ていただろう。


「小野、どう思う?」

「困った話だが信用するしかない。せっかくだから情報を引き出すべきだ」

「これとこれは確定で……」

「なら質問の内容を……」


 千が小野と頭を突き合わせている間に、ポロルが不思議そうに『セト』に近付いた。

 『セト』の皮膚は黒檀(こくたん)のように黒い。黒人であるポロルよりもさらに黒い。


「あーだー」

《よし。答えよう。俺の身体は戦闘用に特化し、それ故に闇に溶け込むジャッカルのような色をしている。種族が同じなのではない。

 お前と彼らの肌の色が違うのは人種が違うからだ。しかし『人間』という枠組みでは同じだ》


 千と小野は青ざめた。『セト』の前に座り、おとなしく話を聞くポロル。


《俺はお前たち【客人(ディシディアン)】のいう【ドラゴン】だが、偉大なる六龍の一柱であり、【(ドラゴン)】ではない。お前たちの【世界律】が区別をしていないせいで複数の混乱が起きている。

 俺は多次元的に投影されている影の一つ、あいつらと同じく、かりそめの肉体にに魂を乗せているだけだ》


「んだーぅぅ」


《お前が他の者と違うのは、お前の肉体は外のものであるが、魂はこの時代のものだからだ。肉体との同期がうまく行っていない。

 【祝福】をやろう。お前がお前のままでその肉体を乗りこなせるように》


 『セト』がポロルの胸に指を伸ばす。指先が赤く輝き、ポロルの胸に三本の線を描いた。

 全ての交点が飛び出た逆三角。


《必要とあらば我が名を呼べ。我が真名は…………》

「待て! ポロルに何をした!!」


 掴み掛かる千。しかし、『セト』は殺して殺せる相手ではないし、話も聞かねばならない。

 だがそれでも、それでも……!


《すでに【馬鹿女(シンビウス)】の【印】があるのだ。俺のがあっても対した違いはあるまい。

 俺はこの幼子の魂と、肉体の魔力を紐付けただけだ。必要な時に、必要な力を振るうためにな》

「それは…………」


 千は理解した。

 ポロルはヤキトではない。【武器】は魂に紐付けされている。つまり、ポロルはヤキトの【武器】が使えなかったのだ。


 ここまで、そんな機会はなかったけれど、いずれポロルが【武器】を手にしなければならない時が来ると思っていた。

 そして、それは『セト』なしではあり得なかったことを。


「…………肉体の元の持ち主に、引きずられる事は?」

《ない。というか……面白いほど綺麗に魂を抜き取られている。何があったのか聞きたい位だ》

「なんだと?」


 理解ができず、千はしばし言葉を失った。

 頭の片隅で、美咲の言葉が警告を出す。ついさっきの、『セト』からポロルへの説明が、そして……『セト』が二度口にした言葉。


 絶対に看過できない、質問しなければならないと思っていた言葉の意味が、繋がった。


「教える代わりに、『それ』について情報交換がしたい。残り二つの質問とは別口で」

《勇士で、賢者で、弁も立つ。面白いぞメヌキアマタ。それは俺にとっても意義のある話かもしれん》


 


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