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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第二章 仇国の魔女

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20217 待て待て待て待って


『神殿』に着いた頃には日はとっぷりと暮れていた。この時代の人々の夜は早い。日暮れと共に家に帰り夕飯と睡眠、夜明けと共に目覚める。

 だが、宮殿と神殿には赤々と火が灯っている。夜間も動いているのだ。


 病院としても機能しているならば、それも納得行く。探偵目貫(めぬき)(あまた)と小野は、その目で現状を確認するために『神殿』に訪れていた。


「こんばんわ。もう夜も遅いので、お急ぎでなければまた後日に……あら?」


 現れたのはゆるりと巻かれた金髪で、バッチリ化粧をした水商売風の女だった。美白された肌。薄衣のドレス。


「いや待て、待て待て、待て」

「【狩人】かよ……つーか、探偵さんは知り合いか?」

「違う。知り合いじゃないが知ってる。なんでここに居るんだ? 【狩人】だからだな? それはいい……待て待て、いやなんで??」


 珍しく錯乱(さくらん)する千に、小野は小さく笑った。


「大丈夫〜? ちょっと落ち着こ? おっぱい揉む?」

「揉まねーし」

「結構だ」


 かなりボリュームのある乳房を持ち上げる女。ノーブラである。透けている。目を凝らせば何とは言わないが見えそうだ。千は自制心を総動員した。

 見れるなら見たいし、揉めるものなら揉みたいよ!!! 千は心の中で血涙を流した。ここでおっぱいに引き寄せられたら、ちまちまと積み上げた小野の信頼度は即座にどん底、千株はストップ安だろう。


「個人的に……いや、なんというか。佐摩(さま)椿姫(つばき)さんだな? オレは私立探偵目貫千、お姉さんの依頼を受けてN県豆降(まめふり)村に来ている」

「あ…………ええと、はじめまして津原椿姫で〜す。えへえへ」


 頬を染めてクネクネする椿姫。小野は理解できなかったが千はドン引きした。

 ヤベーよ妹さん、踏み込みが達人技のお姉さんより怖い。


 人妻を名乗るのに初対面の男におっぱい揉ませようとしたの???


「オレは神奈川県М田市から来た。お姉さん、愁子さんは君と連絡が取れないからオレを雇った」


 М田の名前が出た所で椿姫がポンと手を叩いた。


「あ! 貴方が例の〜。イケメンだけど下戸でゲイの探偵さん!!」

「探偵さん、ゲイだったのか? さっさと言えよ……」

「下戸でもゲイでも……たぶんない」


 知朱(ちあき)が男だったらゲイになりそうだが、今のところ千はノーマルのつもりだった。


「でも、絶対に一杯しか飲まないし、どこのお店でも女の子に指一本触れないでしょ〜?」

「仕事だからだ。飲むのが仕事ならいくらでも飲むが、酔っぱらいの用心棒なんて要らないだろう?」


 小野が身をかがめ、上目遣いで千を見る。胸を強調しないでください。窮屈(きゅうくつ)なスーツをずっと着ている小野だが、そのバストサイズが巨を超えて爆あるいは超なことは隠しきれていない。


「女の子は?」

「生憎、女を抱かなきゃならない仕事をした事はなくってね」

「じゃあプライベートならいいんだ〜? そこにベッドあるけど、しない?」


 興味津々で見上げるな小野!!


「お前の姉さんも誘惑したきたが、賭けでもしているのか?」

「うん。下戸でゲイの探偵さんを酔い潰すかベッドインしたら、シャンパン入れてもらえるんだってさ〜」


 どこのどいつの差し金だ……? 面白がって言い出しそうな知り合いばかりで、千は頭を抱えた。

 ハードボイルドのために抵抗していて良かった……下手に手を出したら沽券(こけん)に関わる。


 そして、やっぱりM田じゃあ女は買えないな。絶対に噂になるし……。


「とりあえず、オレのことはいい。あんたの事だ椿姫さん。危険が無いなら、生きてるって一報だけでも入れて欲しいと愁子さんは言っていた」

「え〜? あたしお姉に会いたいんだけど、お姉は違うの〜?」


 全く邪気のない椿姫、千は(いぶか)しんだ。何かズレている。


「連絡を入れないから、飛んだのかと思われているぞ?」

「んん〜? お手紙届いてない? ちょっと三ヶ月くらい電波のない場所にいるからって」

「なぜだ?」

「俗世を離れて修行に励むため〜、それに耐えればお嫁さんにしてもらえるってお義父さんが」


 小野が千の袖を引いた。皆まで言わなくていい、絶対に騙されていびられている。


「あんた、エロい事とか暴力とか受けてないのか?」

「慣れてるから平気だよ〜?」

「そういう問題じゃ……」


 食い下がる小野、しかし椿姫は微笑んで首を振るだけ。


「ううん、そういう問題。イジワルも、ウソも、どんな、むちゃくちゃも、必要だというお義父さんを信じるだけ」

「…………」

 

 難癖だと分かった上で、それでも受け入れる他はない。そんな強い決意。狂気すら(うかが)える言動。

 千は納得した。この女は【狩人】だ。


「他に【狩人】はいんのか? …………あたしらがここに来たのは偶然だが、仲間を集めてる。【ドラゴン】を殺すために」

「ん〜〜、それって言っていいのかな〜?」


 椿姫の警戒は正当だ。帯石のようなクズもいる。一人だと言ったら、この場で椿姫に乱暴を働くかもしれない。


「いや、必要ない。そいつらは【狩人】って呼んだ。つまり【互助会】の誰かと情報交換済みだろ」


 柱の陰から、浅黒い肌の女が身を乗り出した。口を開くまで、そこにいることに気が付かなかった! 千は戦慄した。なんだこの女は……!

 細かく縮れた長い黒髪、浅黒く滑らかな肌に黒い瞳、意志の強さを感じさせる太い眉。現地人とは少し違う顔貌。フィリピンかインドネシア系だと、千は判断した。


「はじめまして、【互助会】のクリスだ。…………ん?」


 クリスは無遠慮に小野に近付き、その顔をジロジロ見た。落ちつかない様子の小野に対して、目をカッと見開き、ひとり納得の顔でふむふむと頷いた。


「アンタ、会った事あるよね」




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