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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第二章 仇国の魔女

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20212 襲撃者


「ポロル、そのままだ。絶対に離すなよ」

「ぁい」

「むぐぅぅぅ!!! んぐぅぅぅう!!」


 比較的清潔な布の上に横たえられたちどり、目貫(めぬき)(あまた)たちは麻酔無しの手術を実行していた。

 メスの代わりは炙ったバタフライナイフ。ヤキトの手下だったチンピラは、根性はなかったがナイフの手入れだけはしっかりしていた。


 ピンセットの代わりに、千の【武器】のマイナスドライバーを使った。袖搦(そでがらみ)がフラッシュライトで照らし、千が器用にゴミを取り除く。


  袖搦が【互助会】で得た情報によると、呼吸不全に(おちい)った【義体】は【休眠】モードに入るらしい。

 外部からの刺激をシャットアウトして、回復力が高まるのだとか。


「…………念のため聞くが、首絞めて『休眠】中に手術とどっちがいい? あたしゃ、【休眠】と死の見分けがつかんけど」

「ふひっwwwそれ、ただの絞殺じゃんwwwwww」


 という訳でちどりは絞殺体になる事を拒否し、麻酔無しの手術の運びとなった。

 ポロルと名前を変えたヤキトは、おどおどとちどりを押さえつけていた。しかし、体重は二倍近くある。ちどりがいくら暴れても無駄だった。


 ちどりの怪我に不審なところは何もない。しかし、千には不可解な違和感が残った。何か、当たり前のことを見逃しているかのような。それが何なのかは分からない。だから保留にした。


 翌日、ちどりは荷物と一緒くたにされて荷馬車に乗せられた。そして丸一日気絶するように眠り、さらに翌日の昼にムクリと起き上がった。


「痛い……ふひっ、むちゃ痛い……ちぃの手、どうなってんの……ふへひひっ」

「魔王の力が封印されてそうかな……」

「ふっ……ふひっ……痛すぎて草生えるwww笑ってないと吐きそwwwwww」


 乾いた血液、黄色っぽい体液、ドス黒い薬草の色が混じり合って酷い有様だ。右手だけジャアクなパワーに溢れるビジュアルになっていた。


「あ! 川!! ふひひっ水飲み放題??」


 ちどりが寝ている間に、湿地帯は完全に『河』になっていた。と言っても、明らかに水量が少ない。


「イムの話では、『河』の流れを変えたのではないかということだ」

「ふへっwww無理でしょwww」


 普通に考えれば不可能だ。不可能だが……本当に切り捨てていいかという問題がある。

 なにしろそもそも、【ドラゴン】がどれほど超常的な存在なのかがいまいち分からない。


 シスは魂をどうこうと言っていたし、ピラミッドのような巨大建造物を作れるのなら、ダムを作れても不思議ではない。


「正直、僕の聞いた話だと【ドラゴン】と【敵】は常識の範囲内にあった。現代知識チート系だったんだよね」


 袖搦(そでがらみ)が困ったように言う。【狩人】側にもある種の超能力者は居たようだが、しかし精神に多少作用するとか、共感性が高いとか……普通の人間が持つ少し説明しづらい特性を濃くしただけのものであった。

 千が語るような宇宙人や妖怪みたいな存在は、そもそも想定の外だった。


 道すがら、そんな結論の出ない話をしていた。ちどりの載せられた馬車の側に、その時は千とポロル、そして袖搦がいた。


「…………袖搦さん、何かくる」

「何か?」

「全員構えろ! 待ち伏せだ!!」


 不意に顔を上げた千が叫ぶ、彼は同時に駆け出していた。一瞬躊躇(ちゅうちょ)した袖搦もすぐに続く。小柄で小太りだが、袖搦の動きは極めて滑らかで、滑るように走る。


「襲撃に備えろ!! ポロルはちどりを守れ、今度こそな!」

「んぅっ」

「目貫さんはっ!」


 叫びながら一目散に岩陰に向かう目貫。一瞬その全身が粒子に包まれる。【防具】である。

 ラクダ色のトレンチコート、革靴、黒の革手袋。恥ずかしくなるくらいの『私立探偵』だ。


「気付かれた!! 撃て撃てぇ!!」


 岩陰に隠れていた十人程度の集団が立ち上がり、千に向かって散発的に投石する。石礫(いしつぶて)は、一見すると地味な攻撃である。

 しかし、実際の戦場でも重宝された極めて実戦的な武器である。


 当然ながら、弓矢や手斧、投げ槍など洗練された射撃武器に、比べてしまうと射程距離も威力も落ちる。携帯性もよくない。

 しかしそれでも、投石は余りあるほどに手軽で、少ない訓練でも使用でき、入手しやすい。


 職人の手を借りずとも、安価どころか無料で手に入る射撃武器としては申し分ない。

 なにより…………この時代、この地域の人間の多くは防具はおろか服すら着ない。


 素肌に対しては、石は簡単に致命的になり得る。


 医療が発達していない時代だ。優秀な医者がいなければわずかな傷も致命的になり得る。

 襲撃者たちは一瞬躊躇(ためら)った。集団な投石は、殺戮(さつりく)を意味していた。


 複数の死傷者を出すことが目的ならば違ったろう。


「グズどもがよぉ!! 言った通りやれってんだ!! 一人くらい見せしめにすりゃいいんだよ!!」


 そんな中、真っすぐ飛んできた投石の鋭さ。あからさまな殺意。それを放ったのが何者なのかは、その服装から明らかだった。

 ギラギラとした目つきの痩せぎす、片手に紐状の道具。タンクトップに膝の抜けたジーンズ。


 【狩人】だ。



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