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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第三章 合い食む餓狼

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20333 地の底の邂逅


「止まってください。前方、生物がいます。人間大……どうやってここに?」

「クフと同じ『祝福』を受けてんだろ? 単独か?」

「はい」


 クフは『石を歩かせる』他に『俯瞰(ふかん)する』魔法を使える。それは面白いことに、建物内でも扱え、範囲内の動きをなんとなく確認できる。

 それはさながら、レーダーのように作用した。


「俺が行く。二人は待て」


 (ばん)が前に立つ。これまで良いところのなかった蛮であるが、だからこそここで女子供を守る盾になる必要があった。

 蛮の【武器】は長剣である。バスタードソードと呼ばれる両手武器だ。


 『バスタード』とは私生児や雑種を指すスラングである。そのため多くの日本以外では片手半剣(ハンドアンドハーフソード)という呼び方が多い。

 極めて長い名前であるが、なろう系のタイトル同様にその名は体を表している。


 バスタードソードは防御的に片手でも攻撃的に両手でも扱え、斬るにも突くにも適している。どっちつかずの良い所取り。

 重武装の装甲兵は突きで脆弱(ぜいじゃく)な部位を破壊し、軽装歩兵は撫で斬りにする。


 しかし、片手で扱うには長大で重く、両手で持つには短めという、中途半端な性能でもある。

 刀身は3フィート4インチ。そこから更に柄が1フィートもある。こんなもの、片手で振り回そうと考えること自体が馬鹿馬鹿しい。


 無論軽量化のために刃幅は狭く、刃は薄め。これは肉厚の武器に比べて脆弱(ぜいじゃく)であるということでもある。

 刀身の、鍔から8インチまでは刃がない。これは両側に鋭く飛び出た鍔をピックのように使う、あるいは菱形の柄頭を打撃武器のように扱うためである。


 帯に短しタスキに長し、あるいは恐ろしく習熟に時間のかかる武器。有利な点よりも弱点ばかりが悪目立ちする。


 のであるが、どんなスポーツでも万能に適応する、天才的アスリート蓮田蛮に持たせた場合……バスタードソードは『後出しジャンケン』の剣になる。

 相手に合わせて、相性のいい使い方ができる。それがバスタードソードの最大の強みだ。


 左手に松明、右手でバスタードソードを呼び出す。召喚時間は五秒。笛吹やマツのような速攻型【武器】相手には致命的な隙。しかし槍などの大型【武器】より早い。

 【防具】も三段階ある。全身タイツのような鎧下、フード付きワンピースのような鎖帷子(かたびら)


 そして黒地に赤と黄色というバカみたい派手な全身甲冑である。

 今回蛮は鎖帷子までを装着した。真っ暗な地下道内で松明を使い、足を忍ばせる技術もない。どう頑張ってもこっそり近づくのは無理である。


 しかし、甲冑は威圧的過ぎるという気遣いだ。

 剣を背負い、蛮は躊躇(ちゅうちょ)なく進む。少しも臆することはない。名前の通り、必要とあらばいくらでも蛮勇を振るえるのが蛮という男だった。


「…………」


 そいつが逃げた、あるいは攻撃してきたら敵。話しかけてきた、あるいは隠れたら味方。それが蛮の野生の勘である。

 この地下道に入るには特殊な魔法? が必要ならば、存在する理由は二つに一つ。


 『長月救出に来た蛮たちを待ち伏せ』か『【ドラゴン】側から逃げている誰か』だ。


「そこのお兄さん、ちょいと道をお尋ねしてもよろしいでやすかい?」

「全く想像してないタイプが来たな」


 まさかのチンピラ口調の女声が、道を尋ねてきた。しかも、明らかに切羽詰まっている。


「なんでだよ。まさかこんな所で迷子か?」

「へぇ……情けのない話でやすが、手前はここからどうやって脱出したものか……とんと見当がつきませんで」


 蛮は完全に術中にハマっていた。そもそも、女の子ってだけで警戒心がガタ落ちする男である。

 口先で丸め込んで懐に入り込んで来るタイプとの交戦経験もない。完全に警戒心を解き、同情した。助けてあげようと思った。


「そりゃ可哀想に。お姉さん名前は?」

「美咲ってぇケチなコンビニバイト……いや、三流の【狩人】でやす。門浦のおっさんと敵対し、【ドラゴン】である女の子を殺そうと思ってやす」

「…………」


 正直者〜〜〜!! 蛮は合流しようと思った。しかし、脳内で邪魔をするものがある。


『バカ、タコ、浮気者、節操なし。こちらが有利な状況なんだ。もっと情報を引き脱せ』

『何故ここに居るのか、仲間は? 【武器】は? それくらい聞いてもいいだろう』


 脳内笛吹(うすい)はハイレグビキニ姿とミニスカセーラー服姿をしている。ハイレグビキニがツンデレで、セーラー服がクーデレだ。


「ここがどこだか分かってるか?」

「宮殿の地下でやんしょ? 秘密の抜け道とかでやすか?」

「そうだ」


『答えんな、相手に情報を渡してどうする。オレという女がありながら!』

『地下だという事は知っているようだが、問題はこいつ……どうやって入った?』


 脳内笛吹たちの言うとおりだ。


「とりあえず三つ質問がある」

「へぇ」

「どうやってこの通路に来た? 仲間はいないのか? 美咲さんの【武器】は?」


 笛吹本人が居ないなら、蛮は意外と頭が回る。笛吹ばかりを見ていて、笛吹のことで頭がいっぱいのせいでバカなのである。


「穴に落ちやした。仲間は…………死にやした。少し先に死体がありやす」


 穴……? いや、魔法が使えないと出入りできない通路ならば、そこに落ちることは実質死刑だ。


「仲間の名前は?」

「宍戸っていいやす」

「お前、宍戸が言ってた『門浦側』の一人か」


 スパイを行っていた宍戸から、蛮たちは暴君側の情報を得ている。


「そうでやしたね……昨晩までは」


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