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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第三章 合い食む餓狼

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20324 交換条件


「ねえ、ストーくん……アタシはキミががんばってるの、知ってるよ……何もしないでアトリエに籠ってるだけのひとよりも、怪我だらけになってがんばって戦ったのに……評価してもらえないのおかしいよ。

 ストーくんはもっと評価されるべきだとアタシは思うな……だって、すごく優しくて、頭が良くて、格好いいし……いつもアタシを守ってくれる王子様みたいで。

 そんなストーくんがないがしろにされるのって、ちょっと信じられないな…………だからストーくん、どうしてもって思うなら……奪っちゃえば…………?」


 捕らえられた長月は、巌野のアトリエ『屠殺場』に運ばれた。解体され『中身』を確認される。

 痩せっぽちて生育不良の少女を、巌野は大喜びした。こんなにも輝いている者は滅多にいない。現代ではごく稀だ! 


 対して、口では何も言わずとも明らかに不服だったのが出羽崇道(すとう)である。

 彼はパレードの日に、長月に手酷くやられ、侮辱(ぶじょく)を受けていた。


 出羽は長月への復讐を求めていた。徹底的に叩き潰して、屈辱を与えてやりたいと。それこそ、門浦のように。


 彼の不機嫌を敏感に嗅ぎ取った美咲は、賭けに出た。今は亡き、消えてしまった人格を思い出す。

 美咲たちを虐げた男たちに媚びる、娼婦の人格、瞳。男たちの隙を突き、物を盗んで隠し、口八丁と機転で逃げ出すこそ泥の人格、無道(ムド)


 あの二人なら、どうやって出羽を堕とす? 思わせぶりな喋り方で、共感と見せかけて焚き付けるだろう。


 美咲は長月が、敵対的な【狩人】が捕まったと聞いて、足りない頭で少しだけ考えた。

 『敵対的な【狩人】』?? 門浦と敵対する理由なんて、二つしか思いつかない。


 つまり『ムカつくから』か『【ドラゴン】だから』だ。

 捕縛されたのがローティーンの少女だと聞いて、美咲は後者だと考えた。幼さ故の反抗心かもしれないが、【ドラゴン】だと考える方が納得がいく。


 といっても、美咲も【狩人】である門浦が【ドラゴン】でもあるだなんて妄想めいた考えに至った訳ではない。

 シスだ。あの妖しげで美しい、少女でありながら特別な地位にあり、何よりも『王権』の授与者。


 静を除く五人は、美咲、出羽、巌野、マツ、神崎は、シスから祝福をもらった。【シンビウス】の名を呼び、肉体的に強化された。その良し悪しは分からないが、美咲は嫌な予感がしていた。何か取り返しのつかないことをしてしまったような感覚があった。


 シスは何かを与える存在だ。その何かは、極めて危険なもの……【ドラゴン】に属するものなのだろう。

 美咲はどう動くべきか……もちろん、決まっている。【ドラゴン】を殺す。死地妊(しちにん)と消えていった人格たちと、本体のために。生き残るために。


 そのために出羽から自由にならなければ。

 そして、少しでも彼らの戦力を減らさなければ……!


「そのガキは……僕を侮辱(ぶじょく)した。許せない、殺させろ」

「勝手を言うな『薬いらず』、お前には『空っぽ』があるだろう」


 深夜、まさかの正面から寄越せと言いに行った出羽、いやいやいや!? というか、美咲に言わせればこの分配は正当だ。

 門浦は巴静をおもちゃにして、マツは一人と戦いを楽しんだ。出羽は美咲を着せ替え人形にしている。巌野も報酬をもらうべきだ。


「僕をバカにしたな……?」

「羨ましいくらいだが? 自分で脳内麻薬を分泌できる。インスピレーションも湧き放題だ」

 

「…………」

「しかし……ふむ」


 遠巻きに見学に来ていた美咲、殺し合うようなら、生き残った方が怪我を負っていれば倒せるかもしれないという甘い考え。

 巌野がどんよりとした眼を向ける。ねっとりとした視線がまとわりつく。ひどく不愉快で美咲は総毛立った。


「何か入れたな?」

「お前……僕の『あの子』をそんな目で見るなっっ!!」


 【武器】を、出刃包丁を振り上げる出羽、巌野も玄翁(げんのう)(たがね)を出す。


「その娘と交換してやってもいいが?」

「やだ! 気持ち悪っ!」


 わざとらしい悲鳴をあげると、巌野は嬉しそうに唇を歪め、出羽は視線を遮るように動いた。そのままやり合え!


「冗談だ。釣り合わん……『薬いらず』、一人生け捕りにして連れてこい。それまで生きていたら交換してやる」

「…………それでいい。僕が苦しんだ百分の一でも苦しめばいい」


 本当に気持ちが悪いのは出羽の方だ。美咲は内臓から溢れてくる不快感をひた隠しに隠した。シンプルに死んで欲しい。

 巌野が被害者をどうするのか、出羽が知らないはずがない。


 どこで手に入れたか分からない外科知識と薬物で、被害者を解体する。腹を割いて、内臓を綺麗に取り除いたり、手足を取り外したり。

 見ていて胸が悪くなるような、悪魔の所業だ。


 それを、これから受ける少女に向かって……百分の一? 地獄の責め苦の百倍、お前は苦しんだというのか?

 冗談キツイ。いや、本気で言っているのが手に負えない。


「ストーくん、残念だったね」

「問題ない。代わりにあのムカつく剣士を捕まえる。僕を傷つけたあの悪魔に、クソクソクソ……女の子みたいな顔しやがって、マジでムカつく」


 逆恨みも甚だしい。美咲は心中で嘲笑した。



「ストーくんならできるよ! こんなにも強くてかっこいいんだもん!」

「ふふ、『あの子』に言われたらやれる気になるなぁ……!」


 できるはずがない。こんなにも不様で弱いのだぞ?

 【防具】を切り裂いて肋骨まで切り込んでくるような怪物相手に、どうやって勝つつもりだ?


「アタシが囮になろうか?」



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