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6.赤炎島

 皇帝の追っ手を振り切り、カイトを飛ばし続けた先に、姿を現した最初の目的地。赤炎島は、その名が示す通り、燃えるような赤に染まっていた。


 夕暮れ時、島全体が巨大な燃え盛る岩塊のように見え、切り立った岩肌や、燃え立つような色の植物が赤い夕陽に照らされて、島が燃えているように見えた。遠くには、活火山の巨大な噴煙が空へと立ち上り、島の底知れないエネルギーを示唆している。岩陰に着陸すると、すぐに夜の帳が降りたが、あたりはの他に明るいように思えた。遠くの火山から流れ出る溶岩が、不気味なほど鮮やかな赤色で大地を照らし、荒々しい島の心臓が脈打っているかのようだった。


 赤炎島の堅牢な建物や人々の雰囲気、厳格な空気が島全体を覆っていた。あたりを巡回している兵士の数や装備が、この島が軍事国家であることを雄弁に物語る。


 二人は、食堂を併設する質素な宿を見つけた。滅多に見かけない他の島からの訪問者に、宿の女将さんは伺うような視線を向けた。


「二人かい?食事?泊まり?部屋は一部屋しか空いてないよ。」


「宿と食事の両方お願いします。」


 キラは女将さんの警戒を解こうと笑顔で話す。ベッドが二つ置かれただけの部屋に案内された。


「食堂で食事しな。朝も必要なら、厨房に言っとくよ。」


「赤炎島は初めてで、朝から街を散策するから朝食は結構です。」


 キラが丁寧に伝えると、女将さんは「ふん」と鼻を鳴らして、部屋から出ていった。



 食堂へ降りると、そこには意外なほどの活気があった。質素な木製のテーブルには、屈強な兵士や、日に焼けた職人らしき男たちが集い、それぞれの食事を囲んでいる。粗野な笑い声や、酒を酌み交わす音が響く中、二人の座る隅の席からは、話し声が嫌でも耳に入ってきた。


「まったく、最近は物騒な話ばかりだぜ。皇帝が攻めてくるって噂じゃねえか。」


「ああ、それだけじゃねえ。『火の遺跡』の調子が悪いって聞くぜ。島の防衛システムが完璧じゃなけりゃ、たまったもんじゃねえな。」


 ティアは静かに耳を傾けた。キラもまた、器の中のスープを見つめるふりをして、会話に意識を集中させる。


「侯爵様もご心労のようだぜ。領地と領民の暮らしを守るのが軍人の役目って、いつもおっしゃってるけどよ、連日、『火の遺跡』の力の不安定さに頭を悩ませていらっしゃる。防衛体制の強化が急務だってのに、これじゃあ……」


 兵士の一人が、酒で赤くなった顔で愚痴をこぼす。別の男がそれに続いた。


「侯爵様はすげえ軍人だけどよ、遺跡の不調ばかりは、武力や統率力でどうにかなるもんじゃねえからな。」


「まぁ、俺たちにできることと言えば、限られてるけど、きっちり守りを固めて、侯爵様のご負担を減らせるようにすることだな。」


 ティアは、こっそりキラの袖を引いた。キラも彼女の意図を察し、小さく頷く。「火の遺跡」の力は、キラたちの目的とも深く関わっている。おそらく、この島の軍事力の要とも言える遺跡には、簡単には入れてもらえないだろう。侯爵に協力することで、遺跡の秘密にたどり着けるのではないか? 二人はそう考えていた。


 

 夜明け前、宿の厨房から漂うかすかな匂いに誘われるように、ティアは目を覚ました。ベッドの隣では、キラがすでに身支度を整え、地図を広げている。


「よく眠れた?」


 キラの声に、ティアはゆっくりと瞬きをした。昨夜の食堂での会話が、鮮明に蘇る。


「うん。ねぇ、キラ、昨日の話……『火の遺跡』の力を私たちで安定させることはできないかな?」


「ああ。ティアの村の伝承を信じると、ティアの力で制御することは可能かもしれない。」


 その時、宿の扉が荒々しく開かれた。数人の兵士が押し入り、二人に銃口を向ける。


「動くな!」


「っ!?」


 キラは思わず息を呑んだ。兵士の一人が威圧的に言い放つ。


「昨夜、島に未許可のカイトが上陸しているのを発見した。お前たちには同行願おう。」


「俺たちは別に何もしていない!」


 キラはすぐに弁解しようとしたが、兵士たちは耳を貸さない。


「島民以外の奴らが許可なく上陸できる港は限定されている!不法侵入は重大な罪だ。連れて行け!」


「離せ!俺たち、知らなかったんだ!離せよ!」


 キラは兵士の手を振り払おうともがいたが、体格の違う大人相手には全く歯が立たない。兵士たちは手荒にキラの腕を掴み、彼の手首に冷たい手錠をかける。ティアもまた、あっという間に別の兵士たちに取り囲まれ、身動きを封じられた。


「キラ!」


 ティアが叫び、キラも思わず手を伸ばす。


「ティア!」


 しかし、二人の手は届かない。兵士たちは二人を引き離し、宿の外へと連れ出した。


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