2.父の夢・墜落と始まり
夕暮れ時、空が橙色に染まり、空を舞うカイトが家路を急ぐ。キラは工房に戻り、日中の依頼で得た知識と経験を、父が遺した設計図をもとにある装置を作っていた。
工房の片隅に貼られた絵を見つめる。
はてしなく広がる草原、空に向かってそびえ立つ山の連なり、空と地面がひっつくまで無限に広がる世界。そんな想像がその絵には描かれていた。
それは、父親が描いた大地の想像図だった。
キラの父親は空島の人々が想像もしない、「大地」の存在を信じ、研究していた。
キラは大地の絵を見ては、そこに行く想像を膨らます。
そ父が追い求めた「光の核」と「大地」。それらが、この閉ざされた空島から抜け出す唯一の鍵だと、キラは信じていた。
そのためにも、今開発している『装置』を完成させようと、日々取り組んでいた。
「いつか、僕もこの目で見たい。父さんの研究を完成させて、大地を見たい。…でも、どうすればいいんだ?誰も空島がおかしいなんて考えないのに。この装置を完成させたら、何か変わるだろうか…。」 誰にもその憧れや研究のことを相談できず、キラは孤独を深めていた。彼の心の奥底には、焦燥感にも似た感情が燻っていた。
カチカチと小さな部品が噛み合う音、微かな電気の走る音が工房に響く。キラが父の遺した謎の装置に没頭しているその時だった。
ガーーーンッ!
耳を劈くような激しい衝撃音が工房全体を揺るがした。天井の一部がまるで爆撃を受けたかのように崩れ落ち、無数の部品が飛び散る。キラは咄嗟に作業台の下に身を伏せた。金属の瓦礫がガシャガシャと音を立てて降り注ぐ。
振動が収まり、ゆっくりと顔を上げると、散乱した部品と大破したカイトのようなものの中に、一人の少女が倒れ込んでいるのが見えた。プラチナブロンドの髪が瓦礫の中に広がり、服は破れ、煤で汚れている。そして何よりも、彼女の体から放たれる、信じられないほど美しい七色の光に、キラは息を呑んだ。それは、彼が日頃扱う光石の何倍も強く、そして生きた光だった。
「だ、誰だ!?」
警戒しながら問いかけるキラに、少女は怯えた目を向けた。怯えた表情で身を硬直させている。そうするうちにに、少女から放たれていた光は収まっていった。
その時、遠くから複数の足音と、叫ぶ声、金属が擦れる音が聞こえてきた。少女が微かに震える声で言う。
「た、助けて…。」
キラは一瞬、躊躇した。見知らぬ少女。しかも、謎の光を放ち得たいがしれない。そして、外を騒がしている、誰かを探している声と複数の足音。トラブルの予感しかない。
「このあたりに逃げ込んだはずだ!探せ!」
頭の中で警鐘が鳴り響く。
(関わるな。危険だ。)
だが、彼の視線は、彼女の怯えた黄金の瞳と、小さく差し出された震える手に釘付けになった。誰からも理解されず、手を差しのへてもらえないという、閉塞感を感じている自分と、目の前で助けを求める少女が重なった。
彼はとっさにティアの手を取り、工房の奥にある隠し通路へと導いた。
「こっちだ!早く!」
隠し通路の奥で息を潜める二人。追っ手たちが工房に踏み込んできた。
「この中に逃げ込んだはずだ!探せ!」荒々しい声が響く。
「誰もいないな、素早いやつめ、逃げたのか。」
しばらく瓦礫の中を踏み荒らして探していたが、隠し通路を見つけることができず、去っていった。 足音が聞こえなくなるのを待って、キラは横で震える少女に尋ねた。
「君は、一体?」
「わ、私、、無我夢中で。気がついたら、ここに落ちてたの。」
そこまで言うと少女は意識を失った。




