断罪イベント365『北の国編』ー 切れる糸、囁く影
断罪イベントで365編の短編が書けるか、
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから、断罪の先のその先に
どんな物語が見えてくるか
実験中です。
こちら、日付を間違えて公開。(ToT)/~~~
応援して下さった方へ、感謝を込めて誤爆のまま置いておきます。
応援、本当にありがとうございましたm(_ _)m
このお話しの続きはまた後日。
ただ今、追放令嬢の一人リディア嬢がいる
刺繍の国、北の国編 です。
工房の大広間に、再び鈴が鳴り響いた。
三日間にわたる候補者の試験、その初日が始まったのだ。
机の上には漉かれた雪花草の紙が置かれ、
候補者たちは順にそれを裂き、撚り、祈糸へと仕上げていく。
指先を湿らせ、呼吸を整え、ただひたすらに静かな作業を繰り返す。
リディアも席につき、深く息を吸った。
――落ち着いて。雪は焦る心を嫌う。
そう自分に言い聞かせ、紙の端を取り、細く裂いていく。
最初の数本は順調だった。
だが、五本目に差し掛かった瞬間、指先に僅かな乾きを感じた。
裂け目がぶれて、細い糸が途中で――
ぴん、と高い音を立てて切れた。
張り詰めた空気の中で、その音はあまりに大きく響いた。
周囲の視線が一斉に集まり、空気が冷たく重くなる。
「やっぱり、王都の令嬢だからって選ばれただけじゃない?」
「刺繍はできても・・・・ね」
「雪花草に慣れてないのに、候補に入るなんて不公平」
囁き声が広がっていく。
どれも小さな声なのに、耳元で囁かれたかのように生々しく響いた。
リディアの胸に、不安と恥じらいが一気に押し寄せる。
指が震える。
次の紙を取ろうとしたが、呼吸が乱れ、思うように裂けない。
――また切れてしまうかもしれない。
そんなとき、足元から小さな重みが伝わった。
黒猫のハルがぴたりと寄り添い、金色の瞳で彼女を見上げていた。
「大丈夫」と言わんばかりに喉を鳴らし、尾を前に巻きつけて座る。
リディアはほんのわずかに息を吐き出した。
――私は、春を信じてこの子に名をつけた。
ならば、冬の囁きに負けるわけにはいかない。
再び雪紙を手に取り、指を湿らせる。
静かに裂き始めると、今度は切れなかった。
糸は細く、均一に、途切れずに伸びていく。
囁き声はまだ耳の奥で残っていた。
だが、その上から「にゅう……」とプルルの小さな声が重なった。
胸元にしがみついていた小竜が、心臓の鼓動に合わせて喉を鳴らしている。
不思議とその音は、悪意の囁きを打ち消す力を持っていた。
リディア落ち着きを取り戻し、糸は光を帯び始める。
工房長が静かに近づき、撚った裂かれた糸を手に取った。
「……悪くないわ。よく立て直しましたね。」
その一言に、ざわつきがすっと静まった。
リディアは胸の奥で小さく息をつく。
――雪は鏡。囁きに揺れれば、糸も揺れる。
だが、祈りを手放さなければ、必ず繋がる。
足元のハルが目を細め、金色の瞳を輝かせた。
彼女はその光を胸に刻み、糸を撚る。
リディアの挑戦が続きます。
王都から追放された彼女は新しい道を模索中。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m




