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第1巻、第5章: 俺が輝かせすぎた星…[The Star I Shouldn't Have Made So Bright...]

キャビンの外に座りながら、俺は空を見上げていた。今夜は星が明るく輝き、夜空に散らばるまるで暗いカーペットにこぼれたグリッターのようだった。静かだった。あまりにも静かだ。コヤスが夜の見張りをして隣にいるというのに、森全体が息を潜めているような感じだった。俺たちはみんな、次に何かが起こるのを待っていた。次に森から出てくる怪物や、いつものように俺たちの楽しみを台無しにする何かを。


だけど、今俺の頭に浮かんでいるのは彼女のことだけだった。


ミカボシ。俺が最初に作り出した存在。星の小さな女神だ。彼女が小さな存在だったころから育ててきた。生物学的にはまだ赤ん坊だったが、無限の可能性を秘めていた。そして今、彼女は生物学的には若いティーンになっているが、彼女の精神は年齢以上に成熟し、知恵が詰まっていた。多くの点で、彼女は俺に似ている。けれど、彼女には彼女なりのいたずら心や混沌がある。あの火花、あの光…それは俺が彼女の中に植え付けたものだ。


「ミカボシか…」俺はぼんやりと思いにふけりながら呟いた。「今、彼女は何をしてるんだろうな。」


コヤスは、いつも持っている酒の瓶から一口飲みながら、のんびりと浮かんでいた。「お前の小さな星のガキのことか?最後に聞いたのは、天界で騒ぎを起こしてたって話だぞ。」


「ガキじゃねえよ」と俺は弁解した。「まあ、少しはガキかもしれないけど、俺のガキだ。」


コヤスはくすくす笑った。「お前に似てるなら、確かに厄介なことをしてそうだな。」


「それならそれで構わないさ」と俺はキャビンの壁に寄りかかりながら言った。


そう言った瞬間、俺はあのよく知っている感覚を感じた。まるで雷が落ちる直前のような、電気の走るような感覚だった。この感じを忘れるはずがない。


「やれやれ、これは厄介だな」と俺は呟いた。「まさに噂をすればってやつか。」


森の中が突然明るくなり、まぶしい光が俺たちの視界を一瞬奪った。光が消えると、そこには不機嫌そうに腕を組んで立っている人物がいた。長い茶色の髪を高いポニーテールにまとめ、いたずらっぽさと怒りの入り混じったヘーゼル色の目が輝いていた。


「ミカボシ!」俺は驚きと同時に納得しながら叫んだ。「どうしてここにいるんだ?」


「お久しぶりね、‘父さん’」と彼女はニヤリと笑いながら返事をした。声は落ち着いていたが、どこかトラブルの予感を感じさせる鋭さがあった。「メッセージ、全然見てないんじゃない?」


俺は慌ててスマホを取り出した。すると、ミカボシからの未読メッセージが50件ほど溜まっているのが目に入った。ほとんどが「どこにいるの?」や「退屈だ!」といった内容だった。


「おっと…」俺は苦笑しながらスマホをポケットにしまった。「ちょっと気が散ってたみたいだな。」


ミカボシは目を転がし、「気が散ってた、ね。まあ、いいけど。実は、あなたたちがここで楽しんでるって聞いてね、‘ちょっと混乱を起こすのにぴったりだな’って思ったわけ」と言った。


俺は思わず笑った。「そりゃ、そうだろうな。まあとにかく、ようこそパーティーへ、ミカ。」


コヤスは青く光る体を暗闇の中でちらつかせながら、彼女に軽く頷いた。「よう、ミカボシ。最近天界でまた騒ぎでも起こしたか?」


「ニュースにはなってないわ」と彼女は肩をすくめた。「でも、暁の女神に夕闇の女神と場所を入れ替えさせたわよ。おかげで天界は大混乱だったけど。」


俺はにやりとしながら言った。「それでこそ俺の娘だ。だけど、正直に言ってくれよ。ここに何しに来たんだ?ただ夜の見張りを邪魔しに来たってわけじゃないだろ?」


ミカボシは無邪気そうに目を輝かせながら肩をすくめた。「お父さんに会いに来たって理由じゃダメ?」


「嘘つけ」と俺は鼻で笑った。「もう一度言ってみろよ。」


「しょうがないわね」と彼女は大げさにため息をついた。「ただ、退屈だったのよ。あなたたちがもっと面白いことしてるかと思ってね。それに、私も一緒に泊まっていいかどうか確認したかっただけ。まだ部屋ある?」


コヤスが笑いながら、「ボブ、クマとベッドを共有してもいいならな」と言った。


ミカボシは目を見開き、口元に笑みを浮かべた。「クマをキャンプに連れてきたの?さすがだわ。」


「もちろんだ。俺のアイデアだ」と俺は得意気に言った。「常に革新者であるべきだろ?」


ミカボシは頭を振りながらも微笑んでいた。「で、どうするの?私も一緒に来ていいの?それとも、天界に戻れって言うつもり?」


俺は彼女の顔をじっと見つめた。彼女はいつもと変わらないように見えた。いたずらっぽくて、元気で、世界に挑む準備ができている。でも、その目には何か別のものがあった。何か俺には掴めないものが。


「本当はどうしたんだ、ミカ?」俺は少し真剣な声で尋ねた。「お前がこんなところまで来るのは、いつも理由があるはずだ。」


ミカボシは一瞬ためらい、笑顔が一瞬だけ揺らいだ。しかしすぐにその表情を元に戻し、「大したことないわ。ただ、最近天界でちょっと居心地が悪くてね。それで、こっちに来てみたの」と軽く言った。


コヤスがクスクス笑いながら言った。「まあ、さっきまで影のモンスターと戦ってたけど、そっちはもう終わったからな。」


「まさに私好みの楽しいことね」と彼女は挑戦的な口調で応えた。「他に何か面白いことはある?」


「訓練でもどうだ?」俺は提案した。彼女がこの提案を断ることはないと分かっていた。「久しぶりに一緒に手合わせするか?」


ミカボシの目が輝いた。「やっとまともな提案が出たわね。さあ、お手並み拝見よ、お父さん。」


コヤスは俺たちから距離を取り、巻き込まれないように浮かび上がった。「俺は安全なところにいるわ。頑張ってくれ。」


俺は立ち上がり、腕を伸ばして首を鳴らした。「よし、ミカ。泣くなよ。俺だって最近鍛えてるんだからな。」


ミカボシは目を転がし、構えを取った。「泣くのはそっちよ。私に勝てるとでも思ってる?」


俺は笑みを浮かべ、10トンの重さがある刀を手に取った。「俺を甘く見るなよ、ミカ。」


ミカボシは全く動じなかった。俺が着ている重り付きの服や、山をも砕くことができるこの刀、そして俺が持つ力についても、彼女はよく知っている。それでも、彼女は怖がる様子は一切なかった。むしろ、彼女の瞳は興奮で輝いていた。


「かかってこい」と彼女は手に星のエネルギーをまとわせながら言った。「いい運動になるわ。」


俺たちは互いに向かい合い、緊張感が一気に高まった。夜空の星々が輝きを増し、まるでこの戦いを見守っているかのように脈打っているようだった。俺は刀を大きく振りかぶり、彼女の左側に向かって斬りかかった。しかし、ミカボシは素早く動き、残像を残して避けていった。まるで流星がきらめくように、彼女の後には星の粉が舞い散っていた。


「惜しかったわね」と彼女は挑発するように言いながら、星のエネルギーの一撃を放った。俺は手を軽く振るだけでそれを弾き、エネルギーは無害に夜空に消えていった。


「ちょっと調子に乗りすぎてるな」と俺は彼女に向かって突進しながら言った。重い服を着ていながらも、俺のスピードは圧倒的だった。刀を地面に叩きつけるように振り下ろし、その衝撃は大地を揺るがすほどの力を持っていた。しかし、ミカボシはまたしてもその攻撃を受け流し、純粋な星光でできた刃を作り出し、それで俺の刀を受け止めた。


刃と刃が激突し、衝撃波が森全体に響き渡った。俺の足元の地面が震え、木々が音を立てて揺れた。ミカボシは笑みを浮かべ、目が楽しそうに輝いていた。「それが全力?もっと頑張らないと。」


「まだ始まったばかりだ」と俺は答え、さらに力を込めて彼女を押し返そうとした。


ミカボシは軽々と後ろに滑り、まるでダンスをするかのように動きながら、星のエネルギーを次々に放った。俺はその攻撃をすべてかわしながら、熱と光の強さを感じ取っていた。


「だいぶ強くなったな」と俺は言いながら、彼女の攻撃をかわした。「ずっと練習してたのか?」


「もちろんよ」と彼女はニヤリとしながら答えた。「お父さんについていけるようにね。」


俺は笑った。「ついてくる?それじゃ、まだ俺には勝てないってことだな。」


彼女は挑発的に笑みを浮かべ、「まだ分からないわよ」と言いながら、一瞬で俺の背後に瞬間移動した。「これでどう?」


その言葉と同時に、彼女は蹴りを放った。それが当たれば俺は吹き飛ばされていただろうが、俺は瞬時に刀で受け止めた。


「悪くない」と俺は返し、刀を振り回して彼女を押し返した。「だが、まだ修行が足りない。」


「まだまだこれからよ」と彼女は後ろに跳びながら、再び星のエネルギーを手に集め始めた。彼女の周囲の光がさらに強くなり、空気中に力がみなぎるのを感じた。


「またかよ」とコヤスが遠くで呟いたのが聞こえた。


ミカボシは巨大な星のエネルギーを放ち、それは森の木々を貫きながら俺の方にまっすぐ飛んできた。俺はその場に踏みとどまり、刀を掲げてエネルギーを真っ向から受け止めた。


その衝撃はとてつもないものだった。彼女の攻撃が刀にぶつかり、まるで超新星が爆発したかのような激しい力が俺に押し寄せてきた。地面は裂け、木々が倒れ、周囲のすべてが吹き飛ばされたが、俺はしっかりと踏ん張り、刀がその力を吸収していくのを感じた。


「悪くないな、ミカ」と俺は言いながら、そのエネルギーを押し返した。「だが、まだ本気を出してないぜ。」


ミカボシの笑みがさらに広がった。「大丈夫、お父さん。まだ私も本気を出してないわ。」


彼女は手を軽く振り、そのビームは何本にも分かれ、空中をジグザグに進みながら俺を襲ってきた。俺は刀を素早く振り回し、そのすべてを斬り払い、光の矢を空中で消滅させていった。彼女の攻撃には確かに力が込められていたが、俺が汗を流すほどではなかった。


「確かに強くなったな」と俺は歩み寄りながら言った。「でも、誰が教えたかを忘れるなよ。」


彼女は笑い声をあげ、「そうよ、すべての技はお父さんから学んだものだからね」と返した。


俺が返事をする前に、彼女は再び姿を消し、瞬間移動で俺の左側に現れた。すでに星の刃を振り下ろしていたが、俺はそれを刀で受け止めた。鋼がぶつかり合う金属音が森にこだまし、激しい火花が飛び散った。


「速くなったな」と俺は彼女に向き直りながら言った。「だが、スピードだけでは勝てないぞ。」


「かもね」と彼女は反論しながら、次々と繰り出す攻撃で俺を圧倒しようとした。俺はすべての攻撃を受け流し、暗闇の中で雷のように鋭く光る剣の動きに集中していた。「でも、スピードは大事よ!」


俺はその言葉に笑みを浮かべた。「それはその通りだ。」


彼女は足元を狙って低く斬りつけてきたが、俺は軽くジャンプし、彼女の頭上を宙返りで飛び越えた。空中から刀を振り下ろそうとしたが、ミカボシは転がって避け、低い姿勢でこちらを見上げた。彼女の瞳は興奮で輝いていた。


「まさか手加減してるんじゃないわよね?」彼女は息を少しだけ荒くしながらも、まだ余裕の笑みを浮かべて言った。


「するわけないだろ」と俺は嘘をつきながら、再び彼女に向かって突進した。今度は刀に全力を込めて振り下ろし、彼女はその衝撃で後ろへと押し戻された。地面に足を踏ん張り、なんとかバランスを保とうとしていた。


「いい感じね」と彼女は息を整えながら言った。「でも、私も本気を出すわよ!」


彼女は空高く飛び上がり、彗星のように回転しながら星の光をまとった刃を振り下ろしてきた。俺もその攻撃を受け止め、再び激しい衝撃波が森に響き渡った。お互い一歩も譲らず、刃を押し合って力比べを続けた。


「確かに強くなったな、ミカ」と俺は歯を食いしばりながら言った。「だけど、まだ学ぶことはたくさんあるぞ。」


彼女は挑発的に微笑んだ。「それなら、教えてよ。」


俺は笑いながら、彼女を押し返し、膠着状態を打破した。「いいだろう。つづけるならついてきてみろ。」


俺は動きを加速させ、刀の一閃が闇夜に閃いた。ミカボシは素早く反応し、俺の攻撃をかわしてはいたが、彼女の表情には集中力がみなぎっていた。彼女の成長ぶりは本物だった。今や、俺の全力の攻撃を受け止めるだけの力を持っている。だが、俺にはまだ数世紀分の経験がある。


俺は彼女にフェイントをかけ、左に攻撃するふりをして右に斬りかかった。その動きに一瞬戸惑ったミカボシの腕にかすかな一撃を与えた。血が少し滲んだのが見えたが、俺はすぐに動きを止め、刀を下ろした。「大丈夫か?」


彼女は傷口を見てから俺を睨み、しかしすぐに笑みを浮かべた。「ただの擦り傷よ。手加減しないで。」


「その調子だ」俺は満足げに刀を再び構えた。「さあ、かかってこい、ミカ。お前の全力を見せてくれ。」


ミカボシは再び挑戦的な眼差しで俺を見据え、今度はさらにスピードを上げて俺に突進してきた。彼女の星のエネルギーがさらに輝きを増し、俺の前に一瞬の閃光が走った。俺はその攻撃を受け止め、カウンターを放ったが、彼女もまた素早く対応し、再び激しい剣戟が繰り広げられた。


刀と星の刃が交錯し、夜空に火花が散るたび、俺は彼女の進歩に心からの喜びを感じていた。彼女は本気だ。全力で俺に挑んできている。俺もそれに応じて、これまで以上に力を込めて戦った。


俺たちは互いに息を切らしながらも、戦い続けた。時間の感覚が失われ、周囲の森や星の光さえも消え去ったように感じた。ただ、俺とミカボシの激しい戦いだけがそこにあった。


ミカボシの力強い一撃が俺の剣に当たり、その衝撃が腕に伝わった。「やるじゃないか、ミカ」と俺は息を整えながら言った。「本当に強くなったな。」


彼女は息を切らしながらも満足げに笑った。「もちろんよ。お父さんについていけるように毎日訓練してきたんだから。」


俺は笑みを浮かべ、「ついてくるだけじゃなく、もう少しで追い越されそうだな」と冗談めかして言った。


だが、俺の心の奥底では、彼女の成長を誇らしく感じながらも、少しだけ不安がよぎった。ミカボシはまだ若い。そして、彼女は限界を試すのが好きだ。俺は彼女が強くなっていることを認めながらも、少しだけ心配だった。


「ミカ」俺は少し声を落として言った。「本当の理由は何だ?こんなところまで来るのには理由があるんだろ?」


彼女は一瞬だけためらいを見せ、笑顔が少しだけ揺らいだ。しかしすぐにその表情を取り戻し、「だから言ったでしょ。お父さんがまだ戦えるかどうか確かめたかっただけよ」と軽く言った。


俺は彼女の言葉を深く追及しなかった。彼女は話したいときに話すだろう。今はこの戦いがあれば十分だった。


「そうか」俺は再び姿勢を正し、ニヤリと笑った。「じゃあ、この戦いを終わらせよう。」


俺たちは再び剣を交え、その衝撃が夜の静寂を破った。お互いが全力を尽くし、星の光と刀の閃きが闇夜を照らし続けた。だが、徐々に俺が優位に立ち始めた。


最終的に、俺は決定的な一撃を放ち、彼女の星の刃を弾き飛ばした。ミカボシは後ろに飛ばされ、剣が木々の中に飛び込んで消えた。彼女は立ったままだが、肩で息をしていた。


「どうやら俺の勝ちだな」と俺は刀を下ろし、彼女に向かって言った。


彼女は大きく息を吐き、笑顔を浮かべた。「今のところはね。」


俺は笑いながら、彼女の髪をくしゃくしゃにした。「お前は本当に強くなった。よくやったよ、ミカ。」


彼女は俺の手を払いのけたが、顔には笑顔が浮かんでいた。「分かってるわ。でも、次は負けないから。」


「それを期待してる」俺は刀を鞘に納めながら答えた。「お前には大きな可能性がある。ただ、油断はするなよ。」


「誰に教えられたか覚えてるでしょ?」彼女はニヤリとしながら言った。


「お世辞は通じないぞ」と俺はからかいながらも、誇らしさを隠しきれなかった。


コヤスが遠くから拍手しながら、ゆっくりとこちらに戻ってきた。「ブラボー、ブラボー。いいショーだったな。」


ミカボシは大げさにお辞儀をし、「どうも、どうも。一週間くらいここにいるつもりだから、またやりましょうか?」と冗談を言った。


俺は頭を振り、笑いながら言った。「さあ、他の連中が起きる前にキャビンに戻ろう。」


俺たちは並んで歩きながら、俺は横目でミカボシをちらりと見た。彼女はリラックスしていて、先ほどの緊張感は消え去っていた。彼女を悩ませていたものが何かは分からないが、それをしばらく忘れたようだった。


「なあ」俺は静かな沈黙を破りながら言った。「そんなに俺に会いたかったのか?」


彼女は鼻で笑い、「自惚れないで。ただ天界から少し離れたかっただけ」と軽く言った。


「そうか」と俺はニヤリとしながら応えた。「でも、いつでもここに来ていいんだぞ。お前の家でもあるんだからな。」


「うん、分かってる」と彼女は少し優しい声で答えた。「ありがとう、お父さん。」


俺は頷き、胸に温かいものを感じた。それは戦いの興奮ではなく、もっと深い、家族の絆のようなものだった。「いつでもだ、ミカ。いつでも。」


キャビンに着いたころ、ちょうど夜明けが近づき、木々の間から黄金色の光が差し込み始めていた。他のみんなはまだ寝ていて、俺たちの戦いを知らないままだった。


「なあ」俺はドアに手をかける前に立ち止まり、「ミカ、お前のことを誇りに思ってるよ。本当に成長したな。」


「もう、やめてよ。気持ち悪い」と彼女は笑いながら言った。


俺は笑った。「絶対にやめないさ。」


彼女は目を転がしたが、口元には笑みが浮かんでいた。「分かったわ。でも、次は本気で勝つからね。」


「それを楽しみにしてるよ」と俺は彼女の肩を軽く押しながら言った。「さあ、休もうぜ。」


俺たちは静かにキャビンに戻り、他の連中の隣でそれぞれの場所に落ち着いた。俺が横になると、何か満たされたような感覚が心に広がっていった。この混沌とした日々、戦い、そして奇妙な日常があるのも、すべて俺が選んだ人生だった。そしてそれを後悔するつもりは全くなかった。


目を閉じかけたその時、ミカボボシが小さな声で、「おやすみ、お父さん」と囁くのが聞こえた。


「おやすみ、ミカ」と俺も囁き返し、笑みを浮かべながら目を閉じた。


俺たちはそのまま眠りについた。穏やかな夜明けの中、森は静かに息をしていた。だが、俺の心は今まで以上に生き生きとしていた。どんな戦いが待っていようと、ミカボシの成長を見届け、彼女と共にいることができる。俺にはそれだけで十分だった。ミカボシがどんなに強くなっても、どんなに俺を倒そうとしても、彼女が俺の娘であり、俺が彼女を誇りに思っていることに変わりはない。


朝日が差し込むころ、俺は微かに目を開けた。キャビンの中はまだ薄暗く、ほかの連中は静かに眠り続けている。ミカボシも、疲れた体を休めるように、穏やかな寝息を立てていた。


そんな彼女を見て、俺はふと考えた。あの頃、ミカボシを最初に作り出した時、彼女がここまで成長するとは思っていなかった。俺に似た部分がありながらも、彼女は自分自身の存在として輝き始めている。それは誇らしいことだったが、同時に、少しだけ不安でもあった。彼女が俺以上の力を手に入れたとき、彼女はどこまで行ってしまうのか。


だが、そんなことを考えても仕方がない。今はただ、彼女の成長を見守り、共に歩んでいくこと。それが俺の役目だろう。


「強くなれ、ミカ」と心の中で呟きながら、俺は再び目を閉じた。そして、朝の静寂の中で、ゆっくりと眠りに落ちていった。


俺たちが何度戦おうと、どれほどの試練が待ち受けていようと、家族であることには変わりない。俺とミカボシが共に過ごす日々、そして戦いの中で築かれる絆。それこそが、俺にとって最も大切なものだった。



---


数日が経った。俺たちは再び森を探索しながらキャンプを楽しんでいた。ミカボシも、俺たちのグループに加わり、一緒に過ごしている。彼女は相変わらずいたずら好きで、夜空の星をいじりながら俺たちをからかったり、星座を勝手に変えたりして楽しんでいた。もちろん、その度に俺は「余計なことをするな」と軽く叱るのだが、彼女の笑顔を見るたびに、それも許してしまうのだ。


ある夜、焚き火の前でみんなが集まっていると、コヤスが酒を飲みながら口を開いた。「なあ、Y/N。ミカボシがここにいるのも悪くないな。いつものキャンプよりずっと賑やかだ。」


俺は笑って頷いた。「そうだな。ミカがいれば、退屈する暇なんてないさ。」


ミカボシは肩をすくめながら、「私はただ、退屈しないようにしてるだけよ」と言った。


「退屈しないって言うのはいいことだ」俺は彼女に目を向け、焚き火の明かりが彼女の顔を照らしているのを見た。「だが、お前がここに来た本当の理由はまだ聞いてないぞ。」


ミカボシは少しだけ目を伏せたが、すぐにまた笑顔を浮かべた。「ただ少し、天界の生活に疲れただけよ。それに、お父さんと一緒に過ごすのも悪くないって思ったの。」


俺はしばらく彼女を見つめた後、そっと微笑んだ。「それなら、ゆっくりしていけ。お前がいつでも帰ってこれる場所はここにあるんだからな。」


ミカボシはその言葉に一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔を取り戻し、「ありがとう、お父さん」と静かに答えた。


俺たちは再び焚き火を囲んで話し始めた。星の女神であるミカボシの力、俺たちの旅路、そしてこれから待ち受けるかもしれない未来。話題は尽きなかった。そして、その夜、俺は心の中でひっそりと誓った。どんなことが起こっても、俺は彼女を守り続ける。そして、彼女がどんなに強くなろうと、俺は彼女と共に歩むのだと。


星空の下、俺たちは家族として一つだった。どれだけの困難が待ち受けていようとも、この瞬間が永遠に続いてほしいと願った。そして、俺はただ、彼女がもっと強く、そしてもっと輝いていくことを信じていた。

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