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第9話 異世界の日常

 スケヴェルフ大帝国領土内にある、南の海岸地域に位置する港町の一つである、『スシィナリ』は主に漁業を生業としており、港町には常に日の光で肌を浅黒くした、健康的な女漁師たちが行き交い、船着場に多数の漁船と、そして市場には常に魚の匂いが充満している。

 しかし、この日、町に漂うのは魚の匂いだけではない。

 か弱い男たちの泣き叫ぶ声と、漂う血、そして汗と生臭い独特の匂いが街に溢れていた。


「ひっぐ、いやだああ! 助けて、ママー! ママー!」

「なんで!? やだよー、おかーさん!」

「やめてください! 僕には妻が居るんです!」


 港では、女漁師たちが一列に並べられ、その逞しい両手を後ろで縛られて、背後から黒い騎士の鎧に身を包んだ、褐色のエルフたちに取り押さえられながら、同じく褐色のエルフたちによって街の男たちが蹂躙されていた。


「やめてくれ! あたいはどうなってもいいんだ! だから、あたいの息子の童貞だけは奪わないでくれ!」

「ふはははははは、そうかそうか、分かったよ。では、……この子供には私の愛人になってもらおう!」

「ッ!? やめろーー! 息子は初めてなんだ! やめろー!」

「ふふふふ、ごちそう前にして食べるなと言われて言う通りにするとでも?」


 鎧をほとんど脱ぎ捨てて、半裸になり、女漁師たちのように引き締まった豊満な肉体を露にして、老若問わずに男たちを押し倒して跨り、快楽を貪る褐色のエルフ。

 それは、ダークエルフと呼ばれる種であった。


「おやめください! 何故です? 我々は、毎月税を滞りなく納めております! 一体、何故このようなことを!」


 一人の老婆が泣き叫ぶ。

 何故、自分たちがこのような目にあうのか。

 つい先ほどまで、いつもと変わらぬ穏やかな朝が始まったはずだというのに、この悲劇はどういうことかという表情だ。

 すると、


「黙れ。我を誰と心得る。この不届き者どもめ」


 そんな老婆に容赦なく、脇腹に蹴りを入れて地面に這い蹲らせる者が居た。


「町長!」

「くっ、あんたら、いくらなんでもそれは!」

「不届き者ってどういことですかい! あたしら、なんも悪いことしてないのに!」


 あまりの冷徹な行為に女漁師たちは声を上げるが、それも全て一人の女の人睨みで誰もが萎縮してしまった。


「ほう……帝国三天姫の一人でもある我に逆らうとは……死罪だ」


 褐色の肌と尖った耳。地に着きそうなほど長く伸びた黒髪。

 紫色の鋼鉄の胸当てだけが胸だけを覆っているが、その胸当てもまた、女の豊満な胸を全て覆い隠すには心もとなく、隙間からうっすらと「何か」がはみ出ている。

 下半身は膝まであるブーツを履き、そして最も重要な箇所は紐状の黒く小さい下着で最低限を隠している程度で、その他は露出させている。

 その肌の上には、黒いマントを両肩から背中に羽織り、その手には宝玉が散りばめられた巨大な杖。


「お、お待ち下さい! エクスタ姫、どうか……どうか御慈悲を! 我らは何十年もエルフの方々に仕え、謀反や隠し事等一切ありませぬ! どうか……どうか御慈悲をぉ!」


 蹴られた老婆が痛む体を引きずりながらも、額を地面に擦りつけながら許しを請おうとする。だが、エクスタと呼ばれたダークエルフは、冷たい瞳で老婆を見下ろしながら、その頭を踏みつけた。


「はぐわっ!?」

「おい……許す許さないではない。言ったはず。これは取り調べであると。貴様らが隠し事をしているかどうかなど、言葉を交わすだけの無駄な問答の時間は取らず、こうやって貴様らの心に聞いている」

「っぐ、で、すから……何も……知りませぬと……」

「ふん」


 その時だった。エクスタが手に持った杖で軽く老婆の両腕を突くと、次の瞬間には老婆の両腕が手首から先が両断された。


「はぎゃぐああああああああああああああああああああああああ!」


 頭を踏みつけられながら、想像も絶する激痛と、飛び散る鮮血に、老婆はこの世のものとは思えぬ声を上げて意識を飛ばした。

 

「……醜い……既に期限の切れた枯れた女の出す魂の声など所詮この程度。我の心にまで響かぬか」


 つまらない。ただ一言そう言って、エクスタは老婆を蹴り飛ばす。

 そして次のその目を、捕らえられている女漁師たちに向ける。


「……ふむ……」

「エクスタ姫、いかがでしょうか?」

「…………女はこれで全てか?」

「はい」


 女漁師たちの顔、胸、腰、足、体つきの全てを順番に品定めしていくかのように一瞥するエクスタ。

 だが、傍らに居た部下の騎士が問いかけに答えると、すぐにエクスタは溜息を吐く。


「いらんな。そそられん」

「では、取調べを続行します。それと、男の方は……その……」


 それは、まるで何かを期待するかのような部下の問いかけ。その心中を察したエクスタは、小さな笑みを口元に浮かべ、



「ふっ、持って帰りたいのがいれば好きにするがよい。我は男に興味ないのでな」


「ははっ! ありがたき幸せ! さあ、お前たち、取調べを続行する! 徹底的になぁ!」


「「「「「ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」



 既に無法地帯と化している港町に、更なる悲鳴がこだましていく。

 わが子や夫をダークエルフの女たちに襲われる光景を見せられながら、女漁師たちは取り調べと称して殴る蹴るの暴行を加えられえていく。


「ふう、やれやれ……暇つぶ……取調べも最近はつまらんな……たまには……んんっ?」


 退屈そうにアクビをしてこの地獄を眺めるエクスタ。だが、彼女は次の瞬間には目を見開いた。

 それは、建物の物陰に隠れた、頭にリボンをつけた、まだあどけない幼女の姿を見つけたからだ。


「ふふふふふ……うまそうな実を見つけたな」

「ッ!?」

浮遊魔法レビテーション

「ひっ?! いや、え、なにっ!? やだーー!」


 杖が光、異形の力が発動して物陰に隠れていた幼女がエクスタの元へと引き寄せられる。


「いや、な、なんで! いやぁ、助けてぇ!」

「ふふふふふふ、これぐらいの役得がなければな……おお、パンティーもかわいいなァ」

「いやァ! いやああ、なん、やああ、パンチュ見ないでよぉ!」

「ははははははは! さすがは港町。魚の模様のパンティーとは恐れ入った。だが、あまり可愛くないな。後で、私がもっと可愛いのを買ってやろう」


 エクスタは急にイキイキと動き出し、幼女の衣服を乱暴に剥ぎ取ろうとしていく。

 

「ふふふふ、やはり姫様は恐ろしい」

「ガチガチの幼女趣味同性愛者」

「ある意味、この大陸で唯一女を犯すお方だ。男が女を犯すっていう度胸のある奴はいないしな」

「ほら、私たちは私たちで、無駄口叩いてないで♪」


 異常な光景に、他のダークエルフたちは少し顔を青ざめさせながら苦笑していた。

 そして、


「っていうか、あたしら、何の取調べをするためにココに来たんだっけ?」

「さあ? 忘れた。まっ、いいじゃん?」


 そして、この悲劇は全てが大した理由もなく行われていることであり、そしてそれは決してこの大陸では珍しくも無い悲劇でしかなかった。



「我ら、至高の種でもあるエルフは常に愚民共を管理せねばならん。故に、常に定期的に、時には抜き打ちで、こうして愚民たちを取り調べ、同時に恐怖を与えねばならぬ。分かるか?」


「ひっ、ぐ、い、いやああ、いや、ひっぐ、やめてよぉ」


「ん? ……やめて? 我は姫なるぞ! 次期女帝なるぞ! その我に対してやめろと命令したか、この小猿は!」



 エクスタの手が止まり、射殺すような瞳が向けられ、幼女が全身を震え上がらせる。


「わ、や、やめろよぉ、ぼくの……ぼくの娘をはなしてくださいよぉ! ぼ、僕はどうなってもいいですから、娘だけは……娘だけはぁ!」

 

 そんな娘を救おうと、ナヨナヨした小柄の若い男が駆けてくるが、その身柄は当然にすぐに取り押さえられる。


「へへへへ、いいじゃないいいじゃない」

「娘のためなら~っていう、男の勇気……そそる♪」


 取り押さえた男に、ニタリといやらしい笑みを浮かべ、涎を男に垂らすダークエルフの女騎士たちは、そのまま有無を言わさず男の衣服を剥ぎ取る。


「ひ、ひいいっ!」

「ほらほら、娘がどうなってもいいのかな? って言っても、姫様に可愛がられるんだから、幸運に思って、あんたも私たちとね?」

「い、いやだぁ! やめろ、やめてくれーっ! ぼくは、死んだ妻以外は! ……やめてくれー!」


 娘を助けるためにと駆け出したものの、すぐに捕まり、剥かれ、そして蹂躙される。

 まさに悍ましい光景が繰り広げられていた。

 すると……



「……………なにをしている…………なにをしているこの恥知らず共ッ!!!!」



 一人の女の、怒りに満ちた怒声が響き渡った。


「……ふう……やれやれ……」


 その声を聞き、エルフたちに動揺が走り、そしてエクスタも面倒くさそうに溜息を吐く。


「まったく……かわいい妹なのに、面倒くさいものだ……」


 誰もが視線を一斉に声のした方へと向けると、そこには黒騎士たちとは相反する、白い肌のエルフの騎士たちが集結していたのだった。


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