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神の罪  作者: 霊魂のミタマ
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08.心を澄む

 階段を降り、リビングに向かうと机の上には夕飯が並べられていた。

今日の夕飯は魚を塩焼きにしたものだった。


 紅炎は食べ物の好き嫌いがないというより嫌いなものが無いので基本的には何でも出されたものは食べる。

だが、魚においては骨を取るという作業が面倒なので中々好んで食べることはないのだが、味などにおいては正直かなり好きである。


 考え事をしていたせいか、気づいた頃には食器は空だった。


 「ご馳走様。」

 「あら、今日は食べ終わるの早いわね。お腹すいてた?」

 「まぁ、今日も色々あったからそれのせいかも。」


 会話をしながら席を立ちキッチンに食器を片付けに行った。

 

 「...ねぇ紅炎?」

 「......」


 嫌な予感がした。

そのせいで言葉が出なかった。


 「...明日も学校行くの?」


 水澄の言葉と話し方その両方がとても優しかった。

そしてとても苦しかった。

視界も歪んでいた。


 「行かないといけないんだ...」

 

 そう声に出した後逃げるように自分の部屋へと戻った。


 風呂に入り、歯を磨き残すところ眠るだけとなった紅炎だったが夕方の睡眠が原因で中々眠気がやってこない。

それに、眠れない原因がそれだけではないことも分かっていた。

することがないのでスマホの画面を眺めていると、色々なニュースが流れてきた。

普段は流し見する程度だったが、今日は流れてくる記事のほとんどを読んだ。


 読んだ記事の中に紅炎の知っているものはあまりなかった。

少し安堵した気持ちでいると少し眠気がやってきた。

一通りやりたいことは終わっていたのでそのまま電気を消して眠りについた。



 何も変わらない朝が来た。

家族との会話を避け、家を出た。

学校側から確実に連絡は飛んでいるだろうから。


 教室にいたメンバーは昨日とほとんど変わらなかった。

が、人数はさらに少なかった。


 朝のホームルームが終わりしばらく暇な時間が生まれた。

一人の生徒が紅炎のそばに近寄ってきた。


 「...お前本当に何も知らないのか?」

 「...」

 「何かあるなら説明してほしいんだ。」


 正直今のこの状況をなんと説明すべきなのか分からない紅炎は黙ってしまった。

今更初めにあった出来事を非現実的だからという理由で説明しないというのは無理があるしこいつにも納得してもらえないだろう。

 

 「お前は勘が鋭いな。隠してたというか言ってなかったことはある。けど」

 「なるべくみんなの前で言いたいんだな。」


 こくりと頷いた紅炎を見た後その生徒は紅炎の元から離れた。



 学校ではしばらくは午前の授業まででその後下校という形をとっていた。

この日は何事もなく下校まで迎えることができ安堵していた。


 そして、家にはどんな風に変えればいいだろうと悩んでいた。

 

(多分2回の事件を解決したのは俺ということが家族には知らされてる。...まぁいつかばれることだったけど。)


 気づいたら家に着いてしまっていた。

重度の考え癖だなと思いつつ何度か大きく呼吸した後ドアを開けた。


 「た、ただいま。」


 普段は玄関に出迎えないはずの水澄の姿があった。


 「紅炎...」


 少し震えた声で紅炎の名前を呼んだ。

胸がぎゅっと締め付けられる感覚に押しつぶされそうだった。

その感覚に抗おうとすればするほど涙が出てくる。


 「ごめん、俺には何もわからないんだ。」


 紅炎は逃げるように階段を昇って行ってしまった。


 「どうして言ってくれないの...」



 「あぁ!!クソだ!!」


 部屋に戻った後枕に向かって怒りを発散していた。


 「もうめちゃくちゃじゃないか!俺はこんな力望んでない。いらない。いらないんだこんなもの」


 それからはどんな事をしただろうか。よく分からない。

気づけば夕飯の時間だった。

いつもは呼びに来る水澄も今日は来ない。


(俺が言わなきゃいけないんだ。でも言ったら母さんたちに心配させることになる。

 いや、そんなことどうだっていい。)


 大きくため息を出す


 「本当に疲れた。俺のことなんてどうだっていいじゃないか。誰も痛い目に合わない。ただ俺が辛いだけ。

 それだけで済むのにどうして考えるんだ。」


 今はただ何もかもが面倒だった。思考することも。


 リビングはいつもより少し静かだった。

紅炎の妹である紅葉(くれは)はいつもどうり元気であったからであろう。

今日は仕事が休みだった父の光輝もリビングにいた。

階段から足音が響いていたことに気づいた両親はすぐにそちらのほうに視線を向けた。


 「紅炎...前は聞かないでおいたけど何か隠しているんじゃないか?

 父さん達には昨日のことも学校側から連絡があった。」

 「うん。隠してたよ。そのことを話しに来たんだ。」


 食器を片付けていた水澄の体が震えていた。

光輝はじっと紅炎の目を見つめていた。


 「本当に俺にとって良いことではないんだけど。」

 

 時間の針を進める音がいつもの十倍以上大きく聞こえた。

元気だった紅葉も空気に流され口を閉じていた。



 「神になったんだよ俺。」

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