違和感
「紅炎!」
強く体を揺らされる感覚がした。
「……ん〜」
目を擦って意識が覚醒すると目の前にいたのは母親の水橙だった。
水澄の顔を確認したあと横目に時計を見てみると、針は7時30分を指していた。
「なんだよ母さん。」
「いやーこんなに静かなのは珍しいから何してるのかなと覗いてみたら寝てたから〜。……ご飯できてるけど、食べる?」
「……食べる。」
「なら早く降りてきなさいよ〜。」
そう言って水橙は部屋を出て行った。
紅炎はスマホに来ていた連絡を確認した後部屋を出た。
階段を降りすぐのところにあるリビングには姉と妹と水澄がいた。
「ほら早く食べるわよ〜」
紅炎も椅子に座り手を合わせて「いただきます」
という声と同時に目の前にある料理を頬張った。
――
「んぐっ」
夕食後紅炎はまたもや自分のベッドに倒れかかっていた。
「食い過ぎた。いくら腹が減ってるとはいえご飯5杯は死ぬ」
本来少食の紅炎がそんな量を食べるなどあり得ないのである。だがしかし今晩においては(いけるのでは?)という謎の自信を持ってしまったのが原因でこんな量食べたのだ。自業自得でしかないことは紅炎も深く理解している。
だが、急にこんな風に物を食べたくなるというのは変だと紅炎は思っていた。
そう考えると真っ先に思い浮かぶのは昼の謎の力だ。
それを思い出した瞬間考えるのを諦めた。
「わからんものはわからん。そんなことより苦しぃ。」
紅炎はしばらくベッドの上で倒れたままだった。
数分待ってからだいぶマシになったので風呂に入ろうと下に降りてきたらいつのまにか帰ってきていた父の光輝と水澄が話をしていた。いつも通り風呂場に行こうとしたが、話の内容に気づいた紅炎は立ち止まり盗み聞きしてしまった。
「今日紅炎の学校で不思議なことが起きたらしいのよ。」
「紅炎は関係しているのか?」
「それが、よくわからない大きな生物が学校にきたらしいのよ。みんなパニックだったらしくて学校中避難しないとって大慌てだったらしいわ。」
紅炎はあの出来事が完全に夢では無いことを確信した。
だが、そんなことより今母親達に知られているということはかなり噂は広がっている。
そして、怪物を倒したのが紅炎だと発覚した時間違いなく面倒なことになる。
色々な未来を想像していると額から汗が流れていた。
さっさと行こうと両親に気づかれないように風呂場へと向かった。