③ “台湾有事“のための日本の準備
質問者:アメリカでは先日下院議長が台湾に訪問されたのですが、今度行われる中間選挙の結果次第では大きく施策が転換すると言うことは無いのですか? 今のところは共和党有利だという話がありますが……。
筆者:基本的には上下両院が共和党になっても大きく対中の姿勢は変わらないと思います。
そもそも共和党で力があるトランプ氏は大統領に在任している時代から中国への圧力を強めていましたからね。
質問者:いわゆる“台湾有事”と言うのは本当に起きてしまうのでしょうか?
筆者:これは国家主席の心の中次第という感じなのですが、
当初僕が思ったこととしてはオリンピック終了直後にウクライナ問題と多方面に問題を出すことによってアメリカが戦力分散させることが狙いか? と想定したのですが、ウクライナ問題は日々長期化することが予想されますし、現時点では2024年1月の台湾総統選挙がカギなのかなと思います。(ウクライナ問題もそれぐらいまで中国の支援もあるので長引いていく可能性はあると思っています)
というのも、今の蔡総統の支持率が22年9月の世論調査ですと43.8%と結構低下しているんですね。中国がプロパガンダ作戦を仕掛けて自分たちにとって都合のいい政権が誕生する可能性があります。
都合のいい政権が誕生すれば“併合”という形に向かうでしょうし、誕生しなかったとした場合は強硬手段に出る可能性もあります。
質問者:なるほど、2024年1月以降が台湾有事のカギになるのですね……。
仮に“台湾有事“になった際にアメリカはしっかり台湾を守ってくれるのでしょうか? ウクライナ情勢を見ると”支援“で留まってしまうのではないかと心配になってくるのですが……。
筆者:そこは僕も大きな懸念です。特に中国も核保有国ですからね。
アメリカの最近の動きとしては、22年9月14日には「台湾政策法案」を可決しました。
この法案の内容は、台湾の防衛力強化を目的とした4年間でおよそ6400億円の支援に加え、中国を念頭に台湾への敵対行為への制裁措置、台湾の国際機関への加盟を支援することなどが含まれています。
ですが、兼ねてから台湾がアメリカに求めているFTA(自由貿易協定)の締結に関しては応じる気配はありませんし、“武器とお金だけの支援“にとどまる可能性も十分あり得ます。
更に7月下旬に行われたシカゴ外交問題評議会によるアメリカ人に対する調査結果によると、
中国が台湾に侵攻した場合には、(以下全てYESの数字)
・外交的な関与や経済制裁にとどまるべきだ 76%
・追加支援として台湾へ武器を提供することを支持 65%
・中国による台湾封鎖を阻止するために米海軍艦隊を派遣するべきだ 62%
・台湾防衛のために米軍を派兵することを支持 40%
というデータになっています。アメリカは特に世論の支持がない派兵というのはしない傾向にあるので、現状の時点ではありますが、ウクライナと同様の“支援“良くて海上封鎖というところまででとどまりそうです。
質問者:台湾は沖縄の特に尖閣諸島のすぐ目と鼻の先にあります。尖閣諸島を“併合”してからという流れもあるかもしれませんね。
筆者:そうなんですよね。特に尖閣諸島の領海の外側にある接続水域に、常に中国海警局の船が存在しているという事実を忘れてはいけません。
外国人受け入れという流れを日本は進めていっていると思うのですが、中国人が入ってくると言うことはやはり懸念されるべきことでしょう。
これも前の経済系エッセイでも語っていることですが、中国共産党に所属している人間は中国の要請により人民解放軍としての役割を海外でも担うといった法案が存在します。
このことから、安易に受け入れるべきでは無いし、スパイ防止法なども無いので先端技術も盗まれているという可能性は大いにあります。
また、ロシアについて中国へ二次的制裁を行うことや台湾有事での制裁についても今から考慮に入れておく必要があると思います。
質問者:アメリカは今も中国への圧力を強めているんですか?
筆者:テレ朝ニュース 8月26日の記事で『「極めて無責任」中国系航空会社のアメリカ便停止 中国側が反発』によりますと、アメリカは中国の民間航空会社26便停止したりと、既に民間レベルでも規制を強めています。
また、NHKの8月27日の記事で『米で上場の中国企業 会計監査の検査実施 米中金融当局が合意』によりますと、
アリババなどアメリカに既に上場している200社以上の上場廃止回避をするために、
アメリカの監査を受け容れるという話があります。
これは、中国企業がアメリカの技術を盗んでいるのでは? と言った懸念から監査を要請していたのをようやく中国側が認めたという話です。
質問者:懸念点はありますが、アメリカが中国に対して強い姿勢を続けてくれそうなのは良いですね。
筆者:問題は日本がこれらの流れについて考慮がされているとは思えないところが大きな懸念があります。
天安門事件の時は日本が貿易上中国を支えたことにより、今も中国の人権弾圧が続く一因を担っています。
産経新聞2020年12月23日の記事でも
『日本政府、天安門当日に共同制裁「反対」 宇野首相「中国孤立は不適当」』
『外務省は23日、1987年から90年までの外交文書26冊(約1万600ページ)を一般公開した。中国当局が民主化を求める学生らを武力鎮圧した89年6月4日の天安門事件に関する文書によると、日本政府は事件当日に「長期的、大局的観点から得策でない」として、欧米諸国と共同の中国への制裁に反対する方針を明記した文書を作成していた。
中国が孤立化して排外主義を強めることやソ連への接近を懸念したためだが、日本の対応は中国の国際包囲網突破に力を貸し、結果として今も香港などでの人権弾圧や拡張主義はやまないままとなっている。』
この様に書いてありますからね。
今のままだとロシアについては制裁をしていても、世界が二次制裁中国に対して行っている時に日本が弱腰という状況が起こり得ます。
そうなると、結局のところ間接的にロシアも支援すると言うことにもなっていくのです。
質問者:歴史的にそのような前例があると尚更不安になっていきますね……。
筆者;正直なところ“中途半端な姿勢”と言うのが一番批判されます。
インドが敢えて言うならそうだと思うのですが、ある意味“一貫している”とも言えると思うので、“国際的な納得“もあると思うんです。
一つ前の項目で紹介しましたが、これまで中国と経済的つながりが強かったバルト三国やイタリアも中国との関係の見直しを行っていますからね。
そんな中で今ロシアに制裁を科している日本が中国への二次的制裁の際に弱腰だと大変なことになると思うんですよね。
日本は地政学的な問題ですぐには脱中国は出来ないと思います。
だからこそ、今から徐々に脱中国を行っていく必要があると思うんです。
質問者:一番重要なこととして、台湾有事が起きた際には日本は巻き込まれるんですか?
筆者:まず巻き込まれます。日本の尖閣諸島から台湾までは僅か190キロしかありません。
海上戦や、空中戦になった時、中国が台湾を包囲殲滅を行うためには日本の領海・領空侵犯は必然的に起きてきます。
また、米軍は沖縄に3万人しかおらず、韓国の米軍に関しては北朝鮮を睨んでいるために動くことができません。
そのために、米軍本隊が駆けつける時まで時間稼ぎをしなくてはならないので、日本にも“圧力”がかかる可能性があります。
ただ、日本の平和安全法案の「存立危機事態」や「重要影響事態」の定義が不明の状況が続いています。この法案の解釈次第というところではあると思います。
しかし、これだけ距離が近いのにもかかわらず何もしないというのはどうなのか? と言われることは間違いないです。
ウクライナへの武器供与が出来ていないのを見ても分かる通り日本の武器供与が事実上禁止されていることなども議論の視野に入れていく必要があると思います。
質問者:今、T教会の話などでもちきりですが、本当はそう言うことを議論・法整備しなくてはいけないのですね……。
ところで、最短でどれぐらいの時から攻めてくることが考えられますか。
筆者:最短では先ほどの2024年とお伝えしましたが、季節柄上陸作戦を取るために台風のシーズンである今や、波が高くなる冬頃には攻めてこないかなと思います。
ロシアがウクライナに攻め込む直前に周辺に部隊が集結したように、台湾の近くの福建省に部隊が集結することが想定されます。
“その時“と言うのは必ず前兆があると思うのでそこを見逃さないことが大事になるでしょう。ある時突然と言うことは考えにくいです。
ということで、早くて来年の春以降になるでしょうね。
質問者:なるほど……。
筆者:次に中国の現時点の課題について見ていこうと思います。