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ウクライナ情勢と核戦争 ~世界恐慌の危険性~  作者: 中将


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⑯ ”経済至上主義”が農業を衰退させた

質問者:「日本の農業は保護されている」とどうして思い込まされているのでしょうか?

何か理由が無ければ情報操作が行われているとは思えないのですが?



筆者:これについても利権が絡んでいるように思えます。

農業保護政策を後退させ、農業分野への予算支出を削減させることによって日本の農産物市場を大資本の餌食として与え、もっぱら自動車産業が利益を得る構造を定着させようというのです。


 顕著に日本の農業保護政策が失われて行ったのは60年代の減反政策もありますが、1993年12月に採択されたウルグアイ・ラウンド合意受入後からです。


 このウルグアイ・ラウンドというのは、あまり知られていませんが、関税引き下げや農業保護政策の撤廃、輸出補助金を削減することなどを盛り込まれたWTOが中心となって結ばれた世界的な協定です。

 

 ウルグアイ・アイランドの協定履行として、

1997年度の3兆1708億円だった農業の補助金は7割を占めていた米の行政価格による内外価格差相当分が食糧管理法が廃止されたために消滅しました。

 そのために翌年の1998年度には7665億円に大幅に減少しました。


 補助金についてはその都度状況に応じて見直しておく必要はあると思います。

 例えば日本国の農業の生産性向上や国民・消費者負担の減少を反映したものであれば補助をしておく必要はありません。


 しかし、協定履行のための行政価格廃止という単なる政策・制度変更の結果に過ぎないために農家にとっては深刻な打撃を受けました。


 農業の代わりに推奨されたのが自動車などの機械系の輸出産業です。

彼らの税率を下げるために生贄として農業の税率を上げられてしまったのです。


 官僚の方々は出世競争に有利になったり天下り先を確保できたりするので自動車業界などと癒着して手に入れようと蜜月の関係を築いているのです。


 これは、“日本財政破綻論”と全く同じ構図ですね。あれは、財務省ですがこれは農水省の利権や天下り先を餌に、国を切り売りしているのです。



質問者:ここでも利権が出てくるわけですか……。

 しかし思ったのですが、コメ農家が利益を出しているのでしたらそんなに補助をする必要は無いのではありませんか?



筆者:ところが、日本のコメ農家もかなり経済的にカツカツのようなんですよね


 農林水産省のデータによりますと令和4年9月速報 米60キログラムあたりの販売価格が全国平均13961円。

 それに対して、令和3年米60キログラム当たりの生産費の全国平均は

 法人経営 11293円 個別経営14758円 


 となっています。



質問者:全国平均同士を比べているとはいえ、個別経営は赤字じゃないですか……。

 これではとても生計が建てられないですね……。



筆者:この費用は農業機械を購入する際の利息なども含まれているようなのでかなり包括的な費用とはなっているのですが、それにしても厳しい経営です。


 しかも、農業に参入しようとしている企業のうち一部は農業をやると見せかけて海外に土地を売ったり農地転用でメガソーラーに使ったりしているという話もあります。


 更に、農家は外国人の安い労働力に頼っている惨状であり、さらにコロナ対策や円安によって安い人材確保も出来なくなりつつあるという実情があるのです。


 僕としては外国人労働者を受け入れるのではなく、価格を安く抑えるための国の固定買い取り制度を復活させた方がよっぽど農家にとって大きいと思いますけどね。


 労働力を安く買いたたくことによってデフレ経済が続いていたわけですからね。

 現在もコストプッシュインフレですので、景気が上向きであることが理由でのインフレではありませんしね。



質問者:確かに、農家さんを直接支援した方が複合的に良さそうな気がします……。

しかし、コメを1400万トン生産するという前提の下だと、通常の状況だとコメが余ってしまうのではありませんか?



筆者:確かに、現状では難しいモノはあります 。

 なぜなら、輸出することもままならないという状況があるのです。

農業については“競争社会の原理を使って輸出産業にしよう”という話もあるのですが、日本と海外とで国から許可されている農薬に違いがあるんですね。


 しかも、どちらかと言うと海外へ輸出するにも農薬などの基準は日本は欧米より悪い面も多く、海外から輸入することはあっても輸出することも難しくなっているというのが実情としてあります。


 つまり、海外から見て見ると日本の農産品に関しては“同じ土俵に上がることすらできない”というのが実情です。最低でも農薬の基準は欧米基準にするべきでは? とは思いますね。



これに関連することとして成長ホルモン(これだけで4割安くなるそうな)、残留除草剤、収穫後農薬、遺伝子組み換え、ゲノム編集なども国際基準と違うこともあるようなので検討していくべきだと思います。



質問者:他の国の土俵に上がれていないのに輸出も何もあったものじゃありませんからね……。



筆者:そう言うことから輸出については実はなかなか難しいんですよ。


 ただ、作れる作物も国が買い取り平時は生活保護の人にお金の代わりに配るなどのやり方で対応すれば、生活保護費の分を使えば良いので財政上の負担も少ないように僕は思いますね。

 それでも余るようでしたら、アフリカなどの食料に困っている地域に国費を使って無料で提供すると言った手段もあるように思います。

 ただ単にお金(補助金)をあげて“頑張ってね”と言うより効果的のように感じますね。



質問者:やはりそこまでして農業は守らなくてはいけないのでしょうか?



筆者:環境、国土、国民の命を守るのが農業だと思っています。

 有事に備えた場合、食料はどんな社会インフラにも勝ると思います。

 と言うのも、『腹が減っては戦が出来ぬ』状態になってしまうからです。

 今のままでは日本は海上封鎖をされるだけで戦わずして自動的に敗北してしまいます。


 それでありながら、天候不順などで安定して収穫できない。農業用機械などを買うための借入返済などがあります。


 そんな中で、お金の問題で次々と農業を辞めざるを得ないという状況を国が作っているというのは正直なところ異常と言わざるを得ません。


また、日本は国土面積が狭い以上は、国が農家を助けなければ絶対にいけない産業なのです。



質問者:それでは具体的にどのような政策をすればいいのでしょうか?



筆者:米国ではコロナ禍で農家の所得減に対して総額3.3兆円の直接給付を行い、3300億円で農家から食料を買い上げて困窮者に届けたという実績があります


 平時においても、フランスの農家のデータでは、主食である小麦130ヘクタールの経営が赤字になると、そこから補助金が出てコストとの差額部分を補填するので、所得に占める補助金の割合は235%という計算になるそうです。


 緊急支援以前に、米国・カナダ・EUでは設定された最低限の価格(「融資単価」「支持価格」「介入価格」など)で政府が穀物・乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持しています。


 かつての日本にも同じような政策はあったのです。しかし、先ほども書きましたが1993年12月に採択されたウルグアイ・ラウンド合意受入後、これを早くからやめてしまったのです。


 僕はコロナ禍での日本の補助金は飲食店を支援するより農家の方々を守って欲しかったと率直に思いますね。

 日本よりも遥かに領土が広いアメリカですら保護政策を展開しているのですから、日本が農業保護をしなくてどうするのか? と思ってしまいます。



質問者:農業よりも目先の経済を優先した結果このようなことになってしまったのですね……。



筆者:日本が致命的なのはこのように農業を犠牲にして経済発展に極振りをしているにも拘らず、経済成長を30年間していない――むしろ、日本人の可処分所得は増税や保険料引き上げなどにより下がり続けているという恐るべき事実があります。


 詳しくは過去の僕の『なぜ日本経済は30年間ゼロ成長なのか?』https://ncode.syosetu.com/n2825hu/などをご覧ください。

 日本人の給料を上がらなくするための低賃金政策、株主資本主義を推進する政策を随所で展開していることが簡単に言うと挙げられます。

あとは、財務省の言いなりになって緊縮財政を続けていることが原因でしょう。



質問者:やっぱり予算配分が間違っているという話になってしまうんですね……。



筆者:日本は一部の利益者集団のために今の政府が存在していると言って過言ではないですからね。


 この政策を推し進めている人たちの全員が確信的・作為的でないにしろ日本を弱体化させているというのは間違いないです。


 この深刻な状況をまだ多くの国民が気づいていないというのはかなりの問題だと感じます。

 まぁ、マスコミが報道をしないというのが全てでしょうけどね。


 ただ、台湾有事が近づいてきていることから少しずつではありますが、食糧事情について気づいている人も増えてきているのは良いきっかけになるのでは? と思いますね。



質問者:上の人が簡単に変わらない以上は庶民の方から声を上げていく必要がありますね……。



筆者:そうなりますね。


 最近の出来事として、国民が声を上げたことにより変わったこととしては

 22年10月7日、国税庁はサラリーマンの副業収入について「事業所得」と「雑所得」のどちらにあたるかの基準として、「帳簿の有無」を軸として実質的に判断するという通達を出しました。これは、同年8月に出していた「年間収入300万円以下」を「雑所得」と扱う改定案を撤回したものです。



質問者:あの……副業が事業所得のままであることのメリットって何かあるのですか?



筆者:凄く簡単に言ってしまうと、副業で赤字が出た際にも他の所得と相殺することが事業所得ではできるのですが、雑所得ではできません。


 また、「青色申告特別控除」を受けられる(最高65万円)、家族への給与を必要経費に算入できる(青色事業専従者給与)、マイナスが出たら翌年度以降3年間の所得金額から差し引ける(繰り越し控除)などの控除も雑所得では受けることは出来ません。


 副業なんて年間収入300万円以下であることがほとんどですからこの控除などが受けられないというのはとても大きいのです。



質問者:なるほど……それは問題でしたね。撤回されることもあるのですね。



筆者:パブリックコメントで約7000の反対意見があったと言うことですから――何か組織立って動いた可能性はありますね。

 普通、多少の反対意見があったとしてもスルーされてしまうことがほとんどですからね。



質問者:いずれにせよ声を上げることで変わる若しくは撤回される可能性があるのですね。



筆者:そうです。何も行動しないよりかは少なくとも可能性はあります。

 では最後の項目として今回のまとめと食糧危機や経済危機の対策を簡単に紹介して今回のエッセイを終わりにしようと思います。


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