【漫才】受賞記者会見
ツ→ツッコミ(田中大輔)
ボ→ボケ(佐藤高志)
ツ「いや、この間のアカデミー賞すごかったね」
ボ「アカデミー賞?」
ツ「ほら、アメリカのアカデミー賞。ウィル・スミスがクリス・ロックの顔をビンタしちゃって」
ボ「ああ、お前の顔、ムカつくー(叩くふり)でしょ?」
ツ「違う! そんな理由じゃない。奥さんの髪形をからかわれたと思ったから」
ボ「あーそれは腹が立つかもしれませんね」
ツ「まあ、それは置いておいて。映画の授賞式って憧れない?」
「トロフィーもらって、ありがとうございます、ありがとうございますって」
ボ「カメラのフラッシュ、たくさん浴びてね」
ツ「そうそう、まさにスターって感じで」
ボ「よし、じゃあ、俺、最優秀主演男優賞を受賞するから、なんでも質問して」
ツ「え、俺がやろうと思ってたのに」
ボ「そうなの?」
ツ「そうなのじゃねーよ。なんとなく雰囲気でわかるだろ?」
ボ「そう?」
ツ「まあ、いいか。それじゃあ、リポーターやるわ」
「佐藤さん、おめでとうございます! 最優秀主演男優賞を見事に受賞されましたね」
ボ「ありがとうございます、ありがとうございます(トロフィーを持ってるふり)」
ツ「受賞されるかどうか、ずっとドキドキされてたんじゃないですか?」
ボ「そうでもないんです」
ツ「そうなんですか? 余裕ですね」
ボ「絶対取れると思ってたんです。実力派は僕だけですから」
ツ「ちょっ、そんなこと言っちゃダメしょ」
ボ「え?」
ツ「こういうときは、僕なんかが取れるとは思ってませんでした、とか言うの!」
ボ「でもばあちゃんも、高志が余裕で取れるねって、言ってたし」
ツ「おばあちゃん、そんなこと言ってたんですか」
ボ「そうなんです」
ツ「こういうときは普通けんそんするものなの」
「僕なんかが取れるとは思ってませんでした、とか」
ボ「ばーちゃんが、嘘はついちゃいけないって」
ツ「わかりましたよ。えーそれでは、今の喜び、誰に伝えたいですか?」
ボ「それは……ばあちゃんにです!」
ツ「そうですか。佐藤さんはおばあちゃん子なんですね」
ボ「そうなんです。小さい頃からばあちゃんの母乳で育ったので」
ツ「ばあちゃんの母乳!?」
ボ「栄養たっぷりです」
ツ「普通、お母さんだろ!」
ボ「うちのばあちゃん、出がよくて」
ツ「出がいいとか良くないとかの問題じゃないよ」
ボ「今も週一で、飲んでます」
ツ「やめろ! えーっと、それじゃあ、おばあさんに連絡したら、なんて言ってくれると思いますか?」
ボ「大輔が頑張ったからだよって、さっき言ってもらいました」
ツ「さっきって、もう連絡したんですか?」
ボ「はい。ビデオ電話で」
ツ「ずっと会場にいたのに、そんなことできないですよね?」
ボ「意外とできるんです。ちょっと隠れて、ばあちゃーんって(スマフォに手を振る仕草)」
ツ「周りに人もいるのに、もっと真面目にやってくださいよ」
ボ「簡単でしたよー」
ツ「わかりました。わかりました」
「えーおばあさんのほかに、喜びを伝えたい人はいますか?」
ボ「いません」
ツ「こういうときは、監督とか共演者に感謝するんですよ(小声)!」
ボ「あー監督にはお世話になりました(感情なし)」
ツ「もっと、気持ち込めろよ!」
ボ「精一杯込めました」
ツ「大根役者か!」
ボ「失礼な! 最優秀主演男優賞!(トロフィーを見せるふり)
ツ「そうでした。そうだ、映画の一番の見どころを教えてくださいよ」
ボ「見どころ?」
ツ「恋愛映画ですから、主人公の告白シーンとか」
「ずっと好きだった! 私もよ、とかね」
ボ「うーん。やっぱりふたりが出会うシーンですかね」
ツ「あ、運命でつながっている、主人公とヒロインが出会うシーンですね」
ボ「いや、主人公とばあちゃん」
ツ「また、ばあちゃん? いや、そんなシーン、あるかもしれないけど」
ボ「感動的なんですよ」
ツ「そうなのかよ」
ボ「いや~初孫ができたーってね(赤ちゃんを抱くふり)」
ツ「生まれたてか! 本当の最初だな」
ボ「僕たち一緒に住んでるんです」
ツ「そうだと思ってましたよ」
ボ「トロフィーもばあちゃんにあげます」
ツ「ああ、そうしてください」
ボ「ばーちゃん、やったよー!(トロフィーを掲げる)」
ツ「以上、受賞記者会見でした」
(終わり)