表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『和田くんと田中さん♡』  作者: しろかえで
2/5

エチケット袋もチャラいおせっかい??

 “和田くん”視点です。





 ゴトリ! 着替えの他にちょっとしたレクリエーショングッズを詰めこんだキャリーケースを廊下に置いた時、トタトタとした足音でねーちゃんが下りて来た。


芳政(よしまさ)~もう出るの?」


「まだ早いんだけど……クラス委員だからさ、一番乗りしないと!」


「ご苦労だね~ オリエンテーション旅行での雑事一般お引き受けが1年のクラス委員の初仕事みたいなもんだからね~ まあ頑張りな! キミの仕事いかんでこの1年間のクラスの雰囲気が決定づけられるのだ! というのは『過言』だけどね」


 そう言ってカラカラ笑うねーちゃんは同世代の野郎の目には結構『キレイ』だったり『カワイイ』かったりするらしい。


 でもさあ~今のねーちゃんの恰好! バッサバサの髪で……パジャマ代わりのスウェットを、な~んも()()()()()素肌の上にズボッと被ってやんの! だって笑うたびに“中身”の動きが見えんだもん! オレは1mmも動かんけど、こんなの見せられたら、きっと奴らは“オオカミ男”になっちまうよ!


「わざわざのお見送りありがとう」と冷た~い目でお礼を言うと、ねーちゃんは頭をボリボリ搔きながら手の持った可愛らしい紙袋を差し出した。

 ねーちゃんはこういうものをマメに取っておく()()()()()()()()なのだ。


「ん?餞別くれんの?」


「お前じゃない!お前の相方の…田中さんに渡しな!」


 受け取ると重さは軽めだが中身は詰まってそうだ。


「なにこれ?」と思わず覗き込もうとすると


「ああ!! ご無体な!!止めてくださいまし!」と変な声でねーちゃんは身悶えする。

 んで、それに連れて()()も右往左往する。 まっ!オレは1mmも動かんけど!


「ハイハイ見ませんよ! そのまんま田中さんに渡すから」


「よ~し!よく言った!それでこそ私の弟じゃ!」

 と、ねーちゃんは背伸びしてオレを抱きかかえて頭をワシャワシャする。


「やめてくれよ!!! ()()()()関係みたいじゃん!」



「アハハハ、私は『ペットにエサやり』の気分だよ。ホラ!ワンコロみたいに胸、舐めるか?」


 この確信犯的セクハラ姉は!!!


 だからオレは女性不信気味なんだ!!



 --------------------------------------------------------------------


 でも学校では違うよ。


 行きがかり上であっても……引き受けた学級委員だ!


 今もバスからみんなを誘導して人数を数えていて…ひとり足りない??


「田中さん! ひとりいない! バスの中確認してくる」


 そう断ってバスに戻ると後ろの方の座席で揣摩(しま)さん……あの“壁ドン三人娘”のうちの一人だけど……が顔色悪く俯いていたので急いで駆け寄る。


「クルマ酔い? この席は揺れるし()()()もキツメだからなあ」


 揣摩さんに“いつもの勢い”はまるで無く、辛さそうにオレを見上げる。


「……和田くん……大丈夫だから……ごめんね……人数チェックでしょ。ちゃんと1名居るから……」そう言って軽くオレの手に触れた彼女の指は冷や汗からか何なのか? 妙にひんやりしていてオレはウェストポーチからエチケット袋を取り出して彼女に握らせた。


「すぐ固まるヤツだから……必要だったら使って。手を貸すから…表の空気吸ったほうがいいよ」


「ごめん……あの、私……ホント大丈夫だから……皆のところへ行って」


「……分かった。取りあえず報告とかしてくるけど……」


 せめて席の移動はさせてあげたいけど……男の手じゃ嫌な事もあるかもしれないし……と、オレが逡巡していると揣摩さんは制服のスカートのポケットからスマホを取り出した。


「LIN●交換してくれれば何かあったら連絡する」


 それなら少しは安心だ。オレはQRコードを表示して彼女に読み取らせた。



 --------------------------------------------------------------------


 結局、揣摩さんの事は田中さんにお願いしてオレはしばらく待機していたのだけど、田中さんはなかなか戻って来ないので……やむなく、ホールの隅っこでモゾモゾと体操服に着替えていたら……

 いきなりボスン!と背中を蹴られた。


「このセクハラが!!! 揣摩さんに何を言ったの??」


 痛みで海老反ると、見上げた先に田中さんが仁王立ちしている。


「何?それ?!」


「揣摩さんに酷い事言ったでしょ!!」


「え~っ!! 意味わかんねえよ!」


 この頃には……オレ、田中さんが本気で怒っている時の表情を把握していて……まさに今、()()だった。


「よくもあんな事が言えたわね!! チャラいヤツだとは思っていたけど!! 女性、……の事をからかうなんて!! 見損なった!!!」


「エチケット袋がチャラいの?!!」


「えっ?!」

 掴みかからんばかりの田中さんの動きが止まった。


「揣摩さん……バスに酔ってたみたいだから、エチケット袋、渡したんだけど……何か彼女を傷つけた?? だったら謝らなきゃ…」


 田中さんまじまじとオレを覗き込んだ。


「それ、ホント?」


 オレは外して脇に置いてあったウェストポーチから同じエチケット袋を取り出して田中さんに見せた。

「これ。すぐに固まるヤツ」


 それは案内通り、一瞬だけ田中さんを“固まらせた”が……カノジョはすぐに赤くなって()()()()

「それならそれで早く言ってよ!! あ~!!恥ずかしい!!!」と恨みごとを言う



 田中さん!それは無茶苦茶だよ

 と言いたかったが

 田中さんは真っ赤になったまま殊勝な事を言う。

「ごめんね。背中蹴っちゃって! 足跡つけちゃった」


 そう言いながら足跡をパンパンはたいて消そうとするが、オレは慌てて逃げる。


「いいよ!かえって痛いから」


「エーッ! そんなに強く蹴ってないでしょ」


 オレは頭を振った。

「結構な衝撃だった」


「なによ!こんなことぐらいでだらしないわね! 私が本当に怒ったらこんなもんじゃないわ正々堂々と正面から蹴ってやる」


「だらしないって!! んな無茶な……」と言い掛けたら田中さんはこんな事を言う。


「でもまあ、いいわ。和田くんのお姉さんのおかげで助かったから……さすがクラス委員のセンパイ! ね?!『芳政』くん」


「へっ?!」


「名前、『芳政』って言うんだ。ちっとも知らなかったよ」


 おいおい田中さん! オレは田中さんの下の名前が『千景』って知ってんだけど……微妙にへこむわ……


「いい名前じゃん! 名前負けしないよう頑張ってね!」


「うん。田中さんに名前覚えてもらえるよう頑張るよ」


 この軽口に田中さんの顔色がサッとまた赤くなった。


「だからそういうところがチャラいんだよ!!」


 今度は正面から大きく足を振り上げた田中さん……あの、まだ制服なんですけど、しかも勢い付けたものだから……


『「あっ!!」』

 ふたり同時でハモってしまって……


 田中さんはガバッ!ペタッ!と座り込んだ。


「見たでしょ!!」


「……いや……それほどは……無い」


「やっぱり見たんだ!! このドスケベ野郎」


 オレは片方脱げた田中さんの室内履きで散々パコパコ殴られた。



 その夜、体操服シャツを脱いで背中を確かめてみると…室内履きの足跡が魚拓の様にくっきりと残っていた。

「足、こんなに小さいんだ……」


 で次に思い出したのはカノジョの白く眩しい脚……誓っていうけど“奥”までは見えなかった!!


 けれどオレが……

 その夜、なかなか眠れなかったのは


 いつもと枕が違うとか

 隣の篠崎のいびきや向こうで聞こえる動物の鳴き声のような歯ぎしりの音ではなく……


 田中さんの事で悶々としていたせいだ。


 どうやらオレは……女性不信でも女性不振でもなく田中さんに腐心しているようだ…






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ