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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
傲慢と欲深な者達
90/131

90話 青の等級者(後編)

本日もよろしくお願いします。

マティアスの3話目です。

 インゴ達三人の冒険者が敗走してマティアス達の元へ駆け込んできた。


 「『白銀の大樹』じゃないか!あとは頼んだ!」


 インゴ達はそう言ってマティアス達の傍を通り越し、そしてそのまま姿を消した。

 彼らに対して何かを言おうとしたクラウスだがゲルトがそれを止めた。


 「今はあいつに集中だ!」


 サペンタマビウスはインゴ達を追いかけていたがマティアス達を視界に捉えると顔がにやけだした。


 「あたし達に切り替えたわね!」


 バスターソードを構えたエルケが舌なめずり。


 「奴の鱗は堅い!それと尻尾で器用に攻撃するからそれにも注意!正面は俺が受け持つ!」


 マティアスの号令と共に全員で少しずつ距離を詰めた。


 「GWOOOOOOOOO!」


 サペンタマビウスの咆哮が森を震わせた。

 威嚇行為かも知れないがマティアス達は怯まなかった。

 互いに距離が詰まった時、最初に仕掛けたのはクラウスとゲルトだ。


 「こっちだ怪物!」


 「しっかり追ってくれよ!」


 クラウスは大きな刃の槍で距離を取りつつ上から叩きつけた。

 しかし、それをサペンタマビウスは腕で受け止めた。


 「やっぱり堅いな!」


 ゲルトはその隙に反対側から斬りかかるが手斧を振られて途中で回避を選んだ。


 「動きも俊敏だよな!」


 二人が攻撃を仕掛けて胴体が空いたのを機にマティアスが盾を構えて突撃した。

 姿勢を低くして進むがサペンタマビウスは頭を下げて頭突きを放った。

 お互いにぶつかり合う、そう思ったがマティアスは直前で自身ごと左後方へ引いてしまった。

 空振りに終わった頭突きを戻そうとサペンタマビウスは頭を持ち上げようとしたがマティアスのあとにはエルケがバスターソードを上に掲げていた。


 「カチ割ってあげるよ!」


 一気に振り下ろされたバスターソードがサペンタマビウスの頭と背中に直撃!

 ドスンッ!と重い音が響いた。

 それでもサペンタマビウスは持ちこたえた。

 見た目も大きな傷が見当たらない。

 そこから無理やりバスターソードを持ち上げながらエルケに突撃した。


 「なっ!?」


 「エルケ!」


 マティアスは急いでエルケを横から押して射線上から退かした。

 その代わりにマティアスが盾を構えた状態でサペンタマビウスの頭突きを受け止めることになった。


 「うおっ!」


 上手く踏ん張りが効かず後ろへ飛んでしまう。


 「クエイクピラー!」


 マルテの土魔法が頭を上げようとしたサペンタマビウスの顎にクリーンヒット!

 思いっきり持ち上げられて上体を大きく仰け反らせた。

 片足立ちになった相手にクラウスが横薙ぎでお腹を狙った。


 「お前の腹には鱗がないからな!」


 思いっきり振ったがサペンタマビウスは器用に片足で体全体を振り回した。

 クラウスの槍が届く前にサペンタマビウスの撓る尻尾が脇腹に直撃!


 「うがっ!?」


 逆に吹き飛ばされたクラウスを他所にゲルトも仕掛けた。


 「っておい!」


 しかし、回転はまだ収まらずそのまま尻尾はゲルトにも襲い掛かって来た。

 ゲルトは尻尾の下へ潜り込んで攻撃を回避。

 そのゲルトに回転をやめたサペンタマビウスは手斧を振り下ろした。


 「待てっ!」


 勿論ゲルトの言う事なんて聞かない。

 手斧がゲルトに迫った時、エルケのバスターソードが両者の間に割り込んだ。

 金属同士がぶつかり合い、音を響かせ合った。

 ゲルトはバスタードソードの下から出て斬りかかろうとしたがサペンタマビウスの左拳が迫って来た。

 だが、腕が動く間に人影が割り込み去って行った。

 すると左腕の関節から灰色の血が噴き出て腕の力が無くなったのか腕を振るスピードが落ちていた。


 「ナイスだドリス!」


 瞬時に腕を斬ったのはドリスらしい。

 お腹以外を鱗で覆われているサペンタマビウスだが関節部分は他よりも柔らかく刃が通りやすいようだ。

 傷を負った状態で振るわれた拳をゲルトは難なく避けて自前の剣で斬り上げた。


 「GWOOOOWOW!?」


 まともに受けた一撃。

 斬られた場所から灰色の血が噴き出たがゲルトは直ぐに退避したため返り血を浴びることはなかった。

 腹を斬られたサペンタマビウスだがまだ戦意はあるようでバスターソードに防がれた手斧を引っ込め、再び体を振り回した。

 斬りかかろうとしたエルケだがそのままだと先に尻尾の直撃を受けてしまいそうだ。

 それでもエルケはバスターソードの構えを解くことはなかった。

 その彼女に尻尾が迫りかかろうとした時、間に割って入ったのはマティアス。


 「すまない、遅れた。」


 「信じていたよ。」


 盾で尻尾の攻撃を防がれたサペンタマビウスは二人に向き直って手斧を振り下ろそうとしたがいつの間にか復帰したクラウスの槍による突きで弾かれてしまった。

 連続で攻撃を防がれたことでバスターソードの射程距離から離れようと後退を試みたサペンタマビウスだが次はし元に異変があった。


 「クエイクヒンドレンス!」


 サペンタマビウスの両足と尻尾は変形した地面に絡みつかれて固定されていた。


 「!?!?!?」


 意表を突かれたことで動きが止まったサペンタマビウスにエルケは口角を思いっきり上げた。


 「あたしの攻撃はこうでなきゃね!」


 思いっきりぶん回された強大な一撃は身動きが取れなくなった標的のお腹を滞ることなく綺麗に両断した。

 斬られた衝撃で上半身が後方へ吹き飛んだ。


 「GOWOWOOOOOOOOOOOOO!?」


 最後の雄叫びを上げてサペンタマビウスは地面を転がり、その瞳から力が失われた。

 倒したモンスターを経過したマティアス達だが動かないことを確認して警戒を解いた。


 「前に戦った時よりも強かったな。」


 クラウスの感想に全員が頷いた。


 「血の色も灰色ですし、もしかしてまた魔王や邪神が現れるのですか?」


 ドリスが不安そうにしたがゲルトが頭を撫でて落ち着かせた。


 「その情報はない以上、奴らの残党と見るべきだろう。もし邪神とかが現れたら国が知らせるか動くだろうし。」


 「そうだな、一先ず周辺を警戒しつつモンスターの解体を」


 「おっとそいつの手柄は俺達が頂くぜ!」


 マティアスの声を遮って現れたのはサペンタマビウスから逃げたインゴ達三人だ。

 そしてインゴはマティアス達から少し離れていたマルテを人質にしていた。


 「お前ら!?」


 「へへっ、仲間が大事なら俺達にその功績をくれないか?そうしたら無傷で帰してやるよ!」


 「あんたら下衆じゃないのさ!」


 「俺達は仲間を一人失っているんだ、せめて功績の一つは欲しいってもんだ。それとお前は魔法を使うなよ?喋ったら直ぐに喉を掻っ切るからな!」


 エルケの怒りにインゴ達は構うことなく要求した。

 インゴは右手で布越しにマルテの首にナイフを当てており、また両手を使わせないように左腕で抱きかかえていた。

 剣の冒険者と盾の冒険者はインゴよりも前に出て牽制していた。


 「お前らそれでも冒険者かよ!」


 「何とでも言え!」


 クラウスが言っても聞く耳持たず。

 マティアスはマルテが誰かに触られた事に嫌な気持ちを覚え、自身の怒りを抑えるために歯を食いしばっていた。


 「マティアスともあろう御方がそんな怖い顔をするとは。そんなに大事な仲間なら早く決断してくれ!」


 誰もが動けずにいる中、マティアスが口を開けようとした時。


 「なっ!?」


 インゴ達に変化があった。

 なんと彼らの足元の地面が瞬時に伸びて両足、両腕、首に絡みついた。


 「なんだこれ!?」


 「誰の魔法だ!?」


 更にナイフを持ったインゴの右手とマルテを抱えた左腕は地面の拘束具が無理やり動かして彼女を解放した。

 両手を広げた状態のインゴからゆっくりと離れたマルテは唖然としたマティアスの元へ辿り着いた。


 「あれはマルテが?」


 マティアスが確認するとマルテは小さく頷いた。


 「タネを明かしたくないので彼らを見張った状態で作業を続けましょう?」


 「わ、わかった。」


 それからマティアス達は交代で作業を行ったあと、インゴ達を解放した。


 「クソがっ!」


 インゴ達は捨て台詞を吐いて逃げ帰った。

 見送ったマティアス達の顔は皆苦虫を噛んだ表情だ。

 気を取り直した彼らが本日の方針を話し合った結果、明かる時間帯だが通っていない場所を探索しつつ村へ戻ることにしたようだ。


 「素直に返して良かったのかよ?」


 クラウスがマティアスに問いかけた。


 「また仕掛けてくる可能性はあり得るから本当なら拘束したままの方が良かった。だが俺達は冒険者ギルドに認められた青の等級だ、感情任せに彼らを処罰するわけにはいかない。」


 「正直動きにくくなるが下手に殺しでもしたら俺達は罪人になるからな。ただ、あいつらの件は帰ったら報告すべきだけどな。」


 ゲルトが引き継いで言うがクラウスやエルケは不満げな顔だった。


 「マルテ、本当に悪かった。俺達がもっと君の傍にいればこんな事には。」


 「マティアス、私達は全員無事ですから気にしないで。次から考えれば良いのですから。」


 「ありがとう。」


 「そう言えばマルテは詠唱なしで魔法を使っていましたけどあれはどうやって使ったのですか?」


 ドリスが聞くとマルテは素直に教えてくれた。


 「あれは靴底に魔法陣を描いて発動させました。多少削れても陣は崩れないので何度も使えます。まぁ、厚底にしないと靴は長持ちしませんが。」


 彼女の靴は他の冒険者よりも少し厚底になっていた。

 今いる森や山道では歩きづらそうだが本人は気にしていないようだ。


 「凄いですねマルテは!」


 「いえ、これはポーラに教えて貰いました。護身用にも使えると言われて。」


 これを聞いて周囲は驚いていた。


 「まさかこんなことを考えるなんてな。」


 マティアスも改めて感心していた。


 「早くこの周辺の脅威を取り除いて彼女に会いたいな。」


 しかし、マルテの想いは叶わず彼らは更に何日もモンスターの討伐を続けざるを得なかった。

 強さに関わらずモンスターが人里近くに次々現れる原因が掴めず、疲弊はしていたがそれでもマティアス達が積極的に活動することで他の冒険者達も士気を下げずに討伐に協力していた。

 この状況は帝国の辺境、西側で起こっており帝都を含む西側の冒険者の多くが駆り出されていた。

 絶えずモンスターが徘徊する中、かなりの日数を要したものの青の等級者達を中心に奮闘したことで事態は収束したのであった……。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。

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