85話 不自然なこと
本日もよろしくお願いします。
前話でも誤字脱字多々あり申し訳ありませんでした。
翌日。
騎士団に呼ばれて騎士団区画へ向かった。
団長と副団長が前回と同じように書類仕事をしていた。
上に立つとやることが多いんだ、と思った。
彼らの作業に一段落着くと二人とテーブルを挟んで向かい合って座った。
「悪いな、待たせてしまって。」
「いえ。」
団長はそう言いながら笑っていた。
「それではあまりに誠意がないですよ。」
溜息を吐きながら副団長は言うも団長は気にしていない様子。
今日は予定がないから良いのだけれど。
「先日の通り魔の逮捕の件、協力してくれて助かりました。本当に感謝します。」
「いえ、お役に立てたのなら何よりです。」
「でも悪いな、手柄を全て騎士団が取ってしまって。本当ならお前さんのことも言うべきだったが。」
「体裁って必要なのでしょう?あなた達の事情はよく知りませんけど多大な犠牲を出して捕まえた人間が冒険者だと騎士団としては立つ瀬が無くなりそうですし。」
「団長やボクとしては事実を伝えるべきと思ったのですが何分国からの命令でしたので……。」
帝都の騎士団は国が直接管理しているから猶更気になるのかもしれない。
冒険者ギルドも国が関わっているけど騎士団の方に比重を置いていそう。
「わたし個人としましても名前が上がらなくて助かりました。他にも協力してくれた冒険者がいたそうですが彼らに関しては?」
「マイルズ達もそれに関しては言わなかったな。まぁ、お前さんの治療費とか報奨金を出すべきだと言っていたがな。」
「治療費の件は大変助かりました、ありがとうございます。」
「いえいえ、ボクらこそ体を張って協力してくれた人に何もしないわけにはいかないのですからそれくらいは当然です。」
「それと聞きたいことがあるんだがいいか?」
神妙な顔になった団長にわたしは佇まいを直した。
「先日の件で報告を聞いたがどうにもおかしなことがあってな。」
「おかしなこと?」
「オレ達が実行した作戦、騎士ユリアナとお前さんの二人を取り囲むように他の従士達に動いて貰っていたはずなんだ。実際にはいつもの巡回の数を多くして何かあれば全員で犯人を一斉に取り囲めるように、しかも魔法士団と協力してだ。」
「魔法を使って貰って逃げ場を無くすことが出来れば捕縛しやすかったでしょうね。」
「しかし、現場で亡くなった従士や魔法士は多くいたが全員で取り囲んでいたようには見えなかった。それに関して知っていることはあるか?」
報告だけでそう言うところに疑問を持てるのは凄いけど、そもそもあれは団長が指示したわけではない?
「わたし達が交戦している間に従士の方達が駆けつけてくれましたが確かに来るタイミングはバラバラでしたね。わたしもユリアナから聞いていた話と違うと思いましたが、彼らは特に疑問を持った節もなさそうな動きでした。」
「つまり亡くなった従士達はそれを作戦だと思って一組ずつ駆け込んだ?」
副団長の疑問にわたしも同じように思った。
「俺もお前も騎士ユリアナも一斉に取り囲む指示だと思っていたし、俺もそう言う風に言ったはずだ。」
「それは間違いありませんね、作戦を説明した時にちゃんと言っていましたね。」
「そうなると誰かが違う指示を出したという事か?」
その言葉に脳裏に浮かぶ存在がいた。
勿論証拠はない。
ただ、ベルグンゲの言葉で勝手に結んでしまったとも言えた。
「部外者であるお前さんが一番怪しいが」
「彼女は違うでしょう。ここに来てから説明をしたのは騎士ユリアナですし二人はずっと一緒でしたから。」
「それもそうか。しかも複数の従士達に指示を出して信じて貰えるかも分からない、か。」
「やはり疑うべきは騎士団内部でしょう。」
「そうだな、あとで調査しないとな。」
本来であれば身内を疑いたくないと思うけど彼らは即決即断した。
単純に部下を信用していないのか、信用しているからこそなのか。
「それに奴ら、俺達の作戦を知っているかのような動きもしていたらしいからな。」
「そうなのですか?」
「巡回中の従士達を個別に襲ったと言う報告も上がっています。実際に交戦して生き残った従士が何人かいまして。」
「現場に駆け付けた従士達は皆殺しにされていたのにそいつらが無事だったのも謎だがな。」
「恐らく巡回経路に穴を開けるためでしょう。最終的には逃走経路として通るつもりだったのかもしれません。」
副団長がいう事は間違いなさそう。
ソルフェルツとオプティムの匂わせた発言もあったから。
「そう言えば通り魔の二人を捕まえたと聞いていますが彼らの尋問は進んでいるのでは?」
彼らに直接問い質せば多くの真実が浮かび上がりそうなもの。
ただ、彼らは苦虫を噛んだような表情をした。
「それがな、奴らは重傷を負っているからか全然話さないんだよな。火傷の痕があるから魔法士が思いっきり焼いたのかもしれないが真面に口を利きやがらない。」
「それでいて痛みに耐えていますからね。動機や手口が判明するまで時間が掛かりそうです。」
「そうですか……。」
火傷は多分わたしの爆炎石だと思うけど言う必要はない。
多分彼らが口を割れば分かりそうだけどそれ自体は重要じゃないはず。
いや、もしかしたらベイグラッド侯爵に繋がるヒントになりえるかも。
その時は適当な言い訳をして逃げるしかない。
「ポーラ、他に聞きたいことはありますか?」
「いえ、これ以上は。」
「最後はこれだな!」
団長は一度自分のテーブルに戻ってから引き出しから小さな袋を取り出した。
それをわたしの前に置いて中身を確認するように促してきた。
袋を開けると金貨が十枚ほど入っていた。
「それは報奨金だ、今回協力してくれた礼だな!」
「治療費は別途で払ったのでそれで満足してくれると嬉しいのですが……。」
そう言えば先程そんなことも言っていたっけ。
わたしとしては十分な金額だ。
それにこれ以上釣り上げて騎士団と険悪な関係にはなりたくない。
成し遂げるまでに邪魔建てされたくないから。
「これだけ頂けるなら十分です。ありがとうございます。」
「それは良かったです。」
副団長はホッとして胸をなでおろした。
「次も何かあれば協力してもらうかもしれないな!」
「次はないのが一番ですけどね。」
話も終わり退室してどうしようかと悩んだ。
本部を出るとこちらに向かってくる女性騎士が一人、ユリアナだった。
「良かった、ポーラがこちらへ来ていると聞いてな。」
「その節はありがとうございました、ユリアナの体はその……大丈夫ですか?」
「刺された傷跡もなくなって訓練も程度によるが問題ない。ポーラはどうだ?」
「わたしも……大丈夫ですよ。」
「そうか、ポーラはかなり血を流したと聞いていたから心配していたが良かったぁ……。」
「わたしは冒険者で怪我は付き物です。」
「それなら私も騎士だから同じだな。」
わたし達は笑い合った。
女性にとって体の傷は気になる物。
入れ替わる前なら自分の体に傷が出来ても気にしなかったけど今では女性が気にしてしまう理由を感覚的に理解した。
ユリアナもお腹を刺されていたけど魔法士団の治癒魔法で治してもらったと言う。
彼女の傷がなくて良かった。
わたしもマイルズの仲間の一人に治癒魔法を掛けてもらったけど応急処置程度にしかならなかったらしい。
それでも死を免れたからマイルズや治癒魔法を使ってくれた人に感謝はした。
自分の傷に関してはユリアナに伝えずそのまま暫くの間、二人で会話をした。
と言っても最初は事件の事を確認していたけど途中から料理の事や街と貴族での服飾の以外など様々な事。
気づけば夕暮れになっていた。
彼女は今日は非番らしいからこうして話していても特に言われることはなかったと言う。
「また時間のある時に会おう!」
「その時はお願いします。」
彼女は宿舎へ戻りわたしも帰ろうとしたけどタイミングが良かったのか今日は騎士団と魔法士団の合同訓練の日だったらしく見知った顔が二人いた。
彼らもわたしに気づいて近づいてきた。
「ポーラ、来てたんだ!」
サムが嬉しそうに話しかけて来た。
「俺達に会いに来たのか?」
いや、そういう訳じゃなかったけど。
「そんなところだね。」
「それじゃあ今日はご飯に行かない?」
サムのお誘いにボビィはわたし達の肩を組んで騎士団区画の出入り口に向かった。
「さっさと向かおうぜ!」
機嫌の良いボビィにサムは呆れているけど、そのままわたし達はボビィが好きな店に向かった。
何度目かの来店だけど相変わらず騎士や従士の割合が多い。
わたし達を見る彼らの目は面倒な奴、胡散臭い奴、生意気な奴と言った感じがした。
そんな風に見られていると思っているのはわたしだけらしくボビィやサムは気にした風がない。
空いている席に座りそれぞれ料理を注文した。
「そう言えばポーラは何で騎士団に居たの?」
サムから切り出された質問、単純に察しが悪いのか敢えて質問しているのか。
「ユリアナに会っていたんだけどね。彼女が怪我をしたと聞いて。」
「そう言えば……彼女は通り魔と交戦したんだよね。」
「そうだね。」
「あの女騎士は強くはないからな、ああなって当然だ。」
ボビィがぶっきら棒に言うけどその言い方はあんまりだ。
「一生懸命職務を全うした人にそれはないんじゃないの?」
「やられるってことは実力が足りてないって事だろ?」
「それならボビィは誰が適任だったと思うの?」
「それはだぁ……俺だろ?」
「はぁ。」
言い淀んだ挙句に自分を推すとは、そもそも囮になる候補は最終的に女性だったからボビィが適任という事はないと思う。
サムも呆れた顔をしているけどボビィは気にしていない。
ここでエールが出てきて注文したボビィが一気に仰いだ。
成人がよく飲む一杯にボビィもさっそく気持ち良くなった。
「でもよぉ、最初の計画通りに俺達が出ていれば良かったのによぉ。」
「手柄が欲しかったの?」
「そりゃあ…まぁそうだろうよ。」
珍しく歯切れが悪い。
「僕らは一応侯爵家の養子だからさ、そう言うので配慮されたんだと思うよ。」
「そうは言うがよ、俺達がもっとうまく事を運んでいればこんなことにはならなかっただろうよ。」
ボビィの発言が耳に入ってしまった人達が殺気立っている。
それに気づかないのかボビィの顔色は変わらない。
「俺とサムなら通り魔だろうと何だろうと生かして捕まえることが出来たかもしれないぜ。」
「それはまた随分自信があるようで。だけど彼らは強かったよ、ボビィ達でも手加減できるどころか本気で勝てるかも分からない。」
「ボビィは突撃するけど僕がフォローすれば何とかなるよ。」
ボビィは昔と変わらないみたいだけどサムもいつの間にか自信家になっている。
「無差別殺人鬼を殺すことなく捕まえるなんて素晴らしいですね、貴族の二人は。」
殺人鬼だから殺さないといけない、となれば貴族の命を奪ったわたしは極刑だ。
確かに罪を犯したなら法の下で裁くのが人間社会のルールだと思うけどそれでも裁けない相手はどうしたらいいの?
「確かに僕らが貴族の養子だからって言うのもあるけど流石に彼らの命まで奪う必要はないかなって。」
サムは殊勝な事を言っているけどそれが死罪になっても同じことを言ったり訴えたりするのかな?
「俺達が担当なら更生させて解放するけどな。」
ボビィの言葉に周囲で耳を立てていたのか眉を顰める人が何人かいた。
他の件ならまだしも今回の事は流石に更生させると言う話じゃない。
一般人は勿論従士や魔法士達も多く亡くなっている。
それを関係なく言っているなら人として愚かとしか言いようがない。
「あーボビィもう酔い始めたね。それよりも最近はあの冒険者を見ないね、確か名前は」
「コウタ?」
「そうそうコウタ。正直あいつが来なくて良かったと思っているけど何か聞いてない?」
「別に何も?」
「そっか。それとポーラはあいつに気があるの?」
サムの直球の質問。
エールを飲んでいないのに顔を赤くしている。
「ないけど?」
「そっかぁ、良かったぁ~。」
サムが安堵したところで料理が運ばれてきた。
ボビィは肉料理三品とバゲット、サムは肉料理とサラダと白パン。
対してわたしはサラダにスープと黒パンだ。
「ポーラはそんなので大丈夫かぁ?もっと食った方が良いぞ!」
「夜はそこまでいらないかな。」
「逆にボビィはそんなに食べて大丈夫なの?」
「俺はこれくらい食べないと満足できないな!」
ガツガツと食べるボビィは本当にお腹が空いているらしい。
訓練でたくさん体を動かしたからだと想像するのは容易だ。
「そう言えば彼らがボビィとサムの名前を言っていたけど心当たりは?」
質問しながら二人の顔を見た。
すると彼らの顔色が変わった。
何かを恐れているような何も聞きたくないと思っているような顔。
「気のせいじゃない?」
「そうだぜ、俺達があいつらと知り合いなんてよぉ!」
「そっか、そうだよね。二人は有名人かも知れないから名前が出ただけかもね。」
「そうだそうだ、きっとそうだぜ!」
「僕もついに魔法士として名前が売れたのかぁ!」
嘘を吐いたけど通り魔達と二人に何かあるのは間違いない、しかも彼らに関して手心を加えるような発言を二人ともしていた。
ただ、決定的な証拠は掴めない。
周囲には人が多いからどこから洩れるか分からないし何かあるなら警戒して当然かな。
これ以上は何も得ることなく時が過ぎるのであった。
そしてわたしの中で二人への疑念は膨らむ一方だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。




