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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
傲慢と欲深な者達
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76話 心機一転と再会

本日もよろしくお願いします。

 マティアスと手合わせをしてから翌日。

 今日もマルテの部屋を訪れた。

 従来わたしの立場では上階へ上がれないけど、マティアスの計らいで特別に許可証を発行して貰えたから六階の受付で見せればすぐに通してくれた。


 「昨日の今日で来てくれて助かる。」


 「いえ、こちらもお願いしている立場なので。」


 「魔法士団と騎士団への訪問許可はこれからだ、少し時間は掛かるが構わないか?」


 「はい、急ぎじゃないので。」


 「それで頼みなんだが、マルテの横に並んでもらっても良いか?」


 「はい?」


 彼女の隣に立つとマティアス達はわたし達をしげしげと見比べた。


 「背格好は同じだな。」


 クラウスを始め全員が頷く。

 どうやらわたしとマルテは同じくらいの体型らしい。

 と言っても今のわたしはローブを被ったままだけど。


 「ドリスは?」


 「私はマルテよりも小さいのでダメです……。」


 エルケや他の男性陣も体格が大きいからダメだと言う。


 「えーと、これは?」


 「その、彼女の服を作ろうと思うんだ。ただ、今は外に出ると他の人達を驚かせてしまうからな。」


 マティアス達は今の彼女に合わせた服を買おうとしていると言う。


 「それで体格が近いわたしがお店の採寸を受けて作ってもらおうと。」


 「まだ私は他の人と会うのが怖くて…ごめんなさい。」


 「いえ、気にしないでください。協力できることはします、安心してください。」


 「ありがとうございます。」


 マルテは俯きながらもお礼を言った。

 一方、マティアスから訊かれることが一つ。


 「その、今更なんだがポーラは女の子なんだよな?」


 「え?あー、まぁ。」


 出来れば隠したかったけど協力する以上はここにいる人達に晒すほかないかな。

 ローブを取って全身を見せた。


 「おぉ!」


 男性陣から驚きの声が。


 「やっぱり女性でしたね。」


 「マルテは気づいていたのかい?」


 エルケが聞くとマルテは頷いた。


 「彼女の胸を借りた時に分かりました。それと今の状態になってからそう言う匂いを感じて……。」


 あれだけ密接になれば分かるし、動物のような嗅覚が備わったから判断したと言う。


 「ポーラ、そこ大丈夫ですか?」


 ドリスに気遣われた場所は樹液を採取した時に遭遇したウルサクによる攻撃を受けた箇所、右脇腹。


 「ええ、ここは大丈夫ですので。」


 「そこってマティアスがこの前の手合わせで攻撃した場所じゃないのかい?」


 エルケが指摘するとマティアスが青い顔をした。


 「俺はそんな攻撃はしていないぞ!」


 慌てる彼にマルテとドリスがジト目で見ていた。

 いらぬ方向へ行きそうだったので彼女達の誤解を解いて話を戻した。

 誤解は解けたと言っても知らなかったとは言え傷口を広げる行為に軽い非難を浴びせられたのは言うまでもなかった。


 「わたしがお店へ行くのは良いのですが先に採寸した方が良いと思います。」


 「ここで採寸?」


 ゲルトが採寸は専門職がやるものじゃないかと疑問を呈した。


 「一般家庭ならその場で当て布して大まかに作りますからやることはそんなに変わらないです。ただ、作ってもらうならマルテにとって着心地の良い物にしたいかなと。人によってサイズは違いますので作ってもらうなら出来るだけ本人の体に合わせた服を作ってもらうのが一番ですよ。」


 「なるほどなぁ。」


 一般には採寸の概念はあまりなく、体が大きくなれば他の布に変えたり付け足したりして着ることが多いがそれはベーグル村くらいかもしれない。

 貴族のようなお金を持つ家であれば服飾職人を読んで採寸して特注の服を作ってもらう。

 今回のマルテは出来るだけ他の人には知られたくないと言うことで服飾職人を呼ばず、第三者が注文を出しに行くことで決めたらしい。

 提案したのはマティアス達五人だそうで。


 「それではクラウスさんとゲルトさんは冒険者ギルドに数枚の羊皮紙、人間十人分以上の長さの糸、墨を持ってきて貰えませんか?」


 「それを使うって事だな、分かった!行ってくるぜ!」


 彼らは快くお使いに言ってくれた。


 「メモしてから行こうという事か。」


 マティアスも納得してくれた。


 「出来るだけ可愛い服を作ってもらいたいので。」


 「どんなを作って貰えるですかね、マルテ?」


 ドリスも想像して楽しんでいる。


 「気が早いわよ、ドリス。」


 エルケも何だかんだで楽しみらしい。

 程なくしてクラウス達が道具を集めてくれた。

 では早速始めましょうか。


 「あんた達、暫くは立ち入り禁止よ!」


 男三人はエルケに追い出され、この場には女四人だけになった。

 そしてわたし達はマルテの体を測定しました……。




 二週間ほどが経った頃。

 昼前の時間帯、マルテの服が出来るであろう日に依頼を出した服飾店へ足を運んだ。

 その店は以前、わたしの服を作ってくれたお店でもある。


 「お待たせ!結構作り応えがあって楽しかったわよ!」


 「それは良かったです。彼女も喜ぶと思いますよ。」


 「また作って貰うと思いますのでその時はお願いします。」


 「嬉しい事言ってくれるわね!また来るのよ!」


 店主の奥さんからマルテの服を受け取り、冒険者ギルドの九階へ上がった。

 注文した日にわたしもあの店で糸を買って自分の服を補修した。

 これで隙間風を気にしなくても済んだ。

 出来上がった服は貴婦人の衣装の様に大きかったため空にした背嚢に詰め込んだけど、そのまま運んだら目に付くのは必須だったかも。

 階段を登り終えてマルテの部屋に辿り着いた。

 ノックをして声を掛けると中からエルケが出て来た。


 「待ってたよ!」


 嬉しそうに彼女はわたしを招いてくれた。

 中にはマルテだけ。


 「ドリス達は?」


 「彼女は一階の飲食店で注文中、もうちょっとで上がってくると思うわ。マティアス達は近場で依頼を受けているところよ。」


 「なるほど。」


 マルテの意向でドリスが来るのを待っていると彼女も戻って来た。

 頭、手の先から肩まで料理の皿が並んでいる。

 両手にバケットもあるから相当負担が掛かっていると思った。


 「これくらいなら大丈夫です!」


 元気の良い彼女にとっては朝飯前だと言う、彼女もまた青の等級の持ち主だと改めて分かった。

 そして、食事の前にマルテの着替えを始めることになった。

 ここに居る全員が彼女の服を楽しみにしていたから。

 彼女は気恥ずかしさを感じていながらもさっそく袖を通してくれた。


 「似合ってる!可愛いです!」


 「羨ましいわね!」


 「確かに可愛い!」


 「えへへ、嬉しいな。」


 三人の言葉にマルテは嬉しそうだ。

 全体的に緑と白をベースにして腰から下は大きくふんわりした造りになっている。

 緑のスカートは尻尾が生えているからそれを見せないための構造になった。

 所々にフリルも付けているからそれがアクセントにもなっている。

 ベイグラッドの屋敷で見た貴婦人達の服装を思い出しながら服飾店に提案したけどイメージが通じて良かった。

 冒険者とは程遠いイメージになったけど彼女は後方から魔法で支援すると言うから大丈夫だと思いたい。

 靴や帽子は冒険者ギルドのギルドマスターが働きかけているから暫くしたら彼女の手元に届くと言う。

 わたしは笑顔になったマルテ達と一緒に食事をしながら団欒を楽しんだ。




 後日、マティアスから魔法士団と騎士団への訪問許可が下りたことを教えてくれた。

 マティアスから渡された手紙には許可証があり、それと冒険者証があればそれぞれの区画に入れると言う。

 終始苦い顔をしていたマティアスだけどそこには触れず感謝を伝えた。

 もしかしたら貴族の出身者だけど訳あって家を出たのかもしれない。

 それでもこうして働きかけが出来るのは完全な勘当を言い渡されたわけではなさそう。


 「俺の方こそ、本当に助かった。薬と言い服と言い。今後も時間があれば彼女と会ってくれないか?」


 「ええ、わたしで良ければ。」


 「ありがとう。」


 安心するマティアスの顔を見て、彼は彼女の事を好きなんだと感じた。

 姿が変わった相手でも彼の中では揺らがないのかもしれない。

 マティアスの部屋を後にして早速魔法士団の区画へ向かった。

 これで彼らの安否を確かめられる。

 以前と同じ道を通り、魔法士団の門番を務める従士達に声を掛ける。


 「すみません、魔法士団に所属しているサムに会いたいのですが?」


 わたしは魔法士団の許可証と冒険者証を取り出して見せると彼らは確認してくれた。


 「確かに正式な許可証だ。ただ、魔法士団は幾つかのグループに分かれて騎士団と合同訓練をしているから会いたい人間がいるかは分からないな。」


 「魔法士団本部で聞いてみてくれ。」


 魔法士団本部とは魔法士団関係の事務関係を担っている場所らしい。

 道を教えて貰ってから区画に入る。

 一般区画ほど家屋が立ち並んではいないけどどの家屋もお金が掛かっている。

 ある家では馬車に乗り込む貴族の姿もあった。

 魔法士団の構成員は貴族が多いと言うのは本当かも知れない。

 それに昼頃だけど人があまり出入りしていないせいか広々とした道に感じた。

 何度か道を曲がって進んだら一際大きな館が見えた。

 ここが魔法士団本部。

 敷地を区切った壁に挟まれた大きな木製の扉をノックした。

 暫く待つと中から使用人の女性が現れた。


 「こんにちわ、あなたは……ここの所属ではないようですね?」


 「実は―――」


 許可証を見せて事情を話すと理解を得られた。


 「少々お待ちください。」


 現在所属している人達の名簿や誰が何時頃合同訓練に行くのかをスケジュールとして管理していると言う。

 かなり統制が取れている気がした。

 そもそも帝国は周辺国に比べて力を持っているからこういう事も出来て当然なのかも。

 扉が再び開き、使用人の女性が戻って来た。


 「サムと言う方は現在、騎士団の区画で合同訓練をしているようです。」


 「そうですか、教えていただきありがとうございます。」


 「いえ、お役に立てたのなら。」


 「それでは失礼します。」


 使用人の女性は扉を閉じ、わたしは回れ右して魔法士団の区画から騎士団の区画へ向かった。

 ここからまた時間が掛かった。

 魔法士のイメージが動き回らずに屋敷で静かに研究していると思ったから、サムは確実にいると思ったけど逆だった。

 寧ろ帝国の魔法士団はよく動くのかもしれない。

 前回と同じように次は騎士団の区画へ向かった。




 騎士団の区画を守る従士達に許可証と冒険者証を見せるとあっさり通してくれた。

 区画内で大体の事を把握しているのは騎士団本部らしい。

 従士達に教えて貰った順路に進めば石造りの建物が見えた。

 魔法士団本部や一般家屋よりも質素に見えるけど火事で燃えにくいことを優先したのかもしれない。

 騎士団本部の従士に話を聞くとここでも騎士団の構成員を名簿に纏めているようでボビィも合同訓練に参加していると言われた。

 結局わたしはこの場所で待つことになった。

 夕暮れになると外の方が賑やかになった。


 「合同訓練に参加した騎士様や従士が帰ってきたと思います。」


 言われた直後、騎士団本部には騎士と思わしき貫禄と武装の持ち主達が入って来た。

 入口の近くに受付担当の従士がいて、わたしも傍にいた。

 そこから奥へ行くと幾つものテーブルと椅子がある。

 あとは二階へ続く階段。

 受付の従士が騎士一人一人に羊皮紙と墨と筆を渡した。

 騎士達はそれらを受け取りながら傍にいるわたしを訝しんでいた。

 そして、一人の騎士が来たら従士が声を掛けた。


 「騎士ボビィ様、こちらに来客の方がお見えです。」


 ボビィと呼ばれた男を見ると確かに数年前の少年の面影があった。

 背丈はわたしよりも大きく、鎧を着ていることもあって体が大きく見えた。

 少年の面影は残っているとは言え、大分大人びた印象の青年になっていた。


 「誰だ?」


 ぶっきらぼうに訊いてくるボビィにわたしは正直に答えた。


 「わたしはポーラ、昔サムと三人で過ごしたことがあるけど覚えている?」


 「……あぁ!お前!?」


 驚くボビィにわたしは訊き返す。


 「サムにも会いたいんだけど?」


 「サム?あぁ、あいつなら魔法士団の区画へ帰る途中だろ?」


 「今だったらどこら辺を歩いている?」


 「多分ここと出入り口の間だろう?」


 「ちょっと待ってて!」


 「おい!?」


 出来ればまとめて会って話を聞きたい。

 焦りながらも出入り口へ向かうとローブを着た集団が見えた。


 「サム!そこにいる!?」


 声を上げると何人もの人達がわたしに振り向いた。

 わたしは頭に掛かったローブを取って素顔を見せた。

 殆どの人は近くにいる人同士で話して、立ち去るけど一人だけ違った。


 「ポーラ?」


 男の声が集団の中から聞こえた。

 その男は集団を掻き分けてわたしの前に現れた。

 目の前の人間はローブを頭から取ると顔を見せた。

 彼もまた数年前のもう一人の少年の面影が残っていた。

 背丈も伸びている、ローブ姿で体型は分からないけど。


 「やっぱりポーラだ!久しぶり!どうしてここに?」


 「それは」


 「おい!俺を置いて行くとはいい度胸だな!」


 後ろからボビィが来た。

 わざわざ追いかけて来たらしい。


 「出来れば二人一緒に会いたくて。」


 「そう……なんだ。」


 サムは少ししょんぼりしたけどボビィは気にすることなく話を続けた。


 「今回だけは許してやろう!俺は寛大だからな!」


 自分で寛大と言うのかぁ、王様でもあるまいし。


 「それにしても二人とも元気そうで良かった。」


 「それはこっちのセリフだよ!僕達、ポーラが死んだとばかり思っていたから!」


 「お前が生きていたとはな!」


 二人の認識ではわたしは死んでいたらしい。


 「二人の話を聞きたいから時間を貰えないかな?」


 「ぼ、僕は良いよ!」


 「仕様がないな!俺も付き合ってやろう!」


 夕食の時間帯になり、騎士や従士達の中には一般区画で酒を飲もうと言って外に出て行く姿もあった。

 それに(なら)ってなのかわたし達はボビィの行きつけの店へ行く事になった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。

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