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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
傲慢と欲深な者達
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75話 実力の一端

本日もよろしくお願いします。

 冒険者ギルドの一階。

 昼過ぎで人は疎らにいる。

 偶々パーティーで依頼を受ける人達が受付で手続きを踏んでいるのを見かけた。

 他には掲示板を眺めたり、他の人と雑談してる人など。

 マルテとドリス以外のわたし達は受付と階段の間にある大きなドアを潜る。

 傍にいた受付嬢はマティアス達を見ると何も言うことなくお辞儀していた。

 従来は手続きを踏むらしいけど、最高等級の青を持つ冒険者達は顔パスらしい。

 初めて潜り抜けた先はランタンに火が灯っていてかなり奥まで道がある。

 途中で大きなドアを見かけた。

 マイルズが


 「そこは武器庫だな。貸出用とか、緊急時に冒険者に使ってもらうために一定期間手入れをしながら増やしている。」


 とのこと。

 次の扉は食糧庫で長期保存できる食品を置いているらしい。

 併設されている飲食店にも別途に食糧庫があると言う。

 その二つの扉を通り過ぎると鉄製の大きな扉が正面にそびえていた。


 「ここが訓練場だ。」


 扉が開かれるとかなり大きいな空間だった。

 見た目は木造建築だけど床は地面になっている。

 中央には大きな鉄の支柱があり、ちょっとやそっとで折れることはなさそう。

 天井全体に火が灯っているみたいで部屋全体を照らしているからさっきの通路より大分明るい。

 単に蝋燭に火をつけている訳じゃないのは分かるけどどういう仕組みで灯されているのか、これも見当が付かない。

 冒険者が何人かいて木剣を振り回している、歳はわたしに近そうだから新人か若手の冒険者同士で特訓をしているのかも。

 マティアス達が入ってきたのに気づいた彼らは手を止めて話し始めた。


 「あの人って確か青の等級の人だよな?」


 「他の人も仲間だったはず。」


 「あれはマイルズって人だよな?上位の冒険者の指導者役だったとか。」


 「じゃあ、ローブを被っている人は誰?」


 「さぁ?新しい仲間とか?」


 「仲間は作らないって聞いたぞ。」


 なんて口々にされていた。

 そんな彼らの言葉に誰も気にせず、奥の空いている場所に進んだ。

 ただ、今のわたしは彼らの言葉が雑音になって余計にイライラが溜まってしまう。

 それでも外に出さないように必死に抑えた。


 「ここで模擬戦をしようか。」


 「ルールは?」


 「実体剣で寸止め、或いは負けを認めた時点で終わる。あとは命を奪わない程度に。」


 「あまり想像したくないですね。」


 「お互いにどんな状態になるかは、君次第だ。」


 「分かりました、その条件で受けましょう。」


 もしかしたら死ぬかもしれないけど、降参の意志が通るのであればまだ良い方。

 あとはやるだけのことやるしかない。

 それにしても痛い。

 結果がどうであれ言い訳出来ないのが悲しいかな……。

 わたしとマティアスは抜剣する。

 マティアスの件はロングソード、綺麗な装飾を施されている。

 対してわたしのショートソードは黒いだけで対照的に見えてしまう。


 「ローブは外さないのか?」


 「いつもこの格好で戦っていますので。」


 「そうか、それなら構わない。マイルズさん、試合の合図をお願いします。」


 「任せておけ!」


 マイルズはわたしとマティアスが距離を取るとその間に立った。


 「双方ともいいな?」


 お互いに頷く。

 右手を大きく上げたマイルズを見る。


 「始め!」


 右手が勢いよく降ろされた。

 だけどわたしもマティアスも相手の出方と間合いを図るために直ぐに動かなかった。

 暫く観察しているとマティアスは中段で構えている。


 「掛かって来ないのか?」


 「勢いだけで倒せるなら苦労はしません。」


 「確かにな。」


 欲を言えばさっさと終わらせてベッドに籠りたい。

 だけど手を抜いて負ければ恐らく騎士団や魔法士団区画への通行は出来ない。

 出来るだけ呼吸を整えながらマティアスを見た。

 そこから少しずつ距離を詰める。

 膂力は言うまでもなくわたしはない。

 剛剣で攻めようとしても力負けするし、後出しで切り返される可能性もある。

 ただ、待っているだけでは意味がないのも確か。

 ならば、ショートソードを左手で持ってから太腿に固定したナイフを右手で取り出す。

 その動作を見たマティアスは瞬時に動いた。

 ローブから隠れた状態で右手の手首を振ってナイフを飛ばした。


 「!?」


 予想と違う動きだと思われたのかマティアスの目が見開く。

 それでも彼は剣で弾き飛ばした。


 「そんな小手先、通用しないぞ!」


 それは分かっていた。

 相手はロングソードで間合いが長い。

 それでも一瞬だけでも隙が出来たはず!

 右太腿の二本目のナイフを右手で持ち、両手に一本ずつ構えた。

 マティアスが両手でロングソードを正面右から左へ振り下ろした。

 このままなら首を刎ねられる。

 だけど!

 ナイフとショートソードを交差させて相手の斬撃を受け止める。

 金属同士のぶつかる音が響き渡る。

 音が鳴って直ぐにわたしは左へ受け流した。

 ショートソードで左へ誘導しながら右手のナイフで顔を狙う。

 そのまま右腕が伸びきれば顔に刺さるかもしれない。

 だけど相手は最上位の冒険者、簡単にはいかない。

 体ごと正面左へ仰け反らせてナイフの軌道からずれた。

 それでいて重心が右足に集中しているにも関わらずロングソードに更なる力を込めて来た。

 このまま押されると左腕が右側へ押されて首に届くかも!?

 左足で地面を蹴って相手の力を利用しながら吹き飛ばされた。

 死ぬかも知れなかった事への冷や汗がブワッと全身から出た。

 ロングソード二本分くらいの距離を飛び、右足で着地してからナイフを他所へ放り投げてショートソードを両手で持ち直す。

 剣を振り抜いたマティアスはその勢いを利用したのか右足で蹴って直ぐにわたしに向かってきた。

 ロングソードは彼の左後ろに隠された状態。

 このまま振り抜かれる?

 再び距離を詰められて相手の間合いギリギリのところでロングソードが振り抜かれた。

 真横に軌道を描いているからそのままだと胴体が真っ二つになる。

 だからわたしは敢えて飛び込んだ。

 観戦しているマティアスの仲間の一人、ゲルトから驚嘆の声が聞こえた気がした。


 「敢えて飛び込むのかよ!?」


 同じくマティアスの仲間の一人、クラウスは口にした。


 「間合いが長いって事は戻りが遅いってことだからな。」


 「それは振り終えたあとの話だろ?攻撃中に突っ込むなんて……。」


 わたしはただ突っ込んだわけじゃない。

 足は前に出しながら状態を出来るだけ低くする。

 ショートソードは切先を右側に。

 マティアスが振るロングソードの腹とわたしのショートソードの切っ先が触れたらショートソードで持ち上げるように。

 彼の振り抜く速度が速いからわたしの体の上をギリギリ通過させるので限界。

 完全に正面左へ振り抜いたマティアスのロングソードを横目で見つつ、右足を蹴り上げた。

 足裏が完全にマティアスの胴体に入る。


 「ぐっ!?」


 呻き声を上げたマティアス、だけど手応えはあまり感じない。

 上体を急いで上げてショートソードで追い打ちを掛けようとした。

 これで決める!

 そう思ったらわたしの右脇腹に衝撃が走った。

 いっ!?

 暫く前のウルサクに受けた箇所と同じ、ローブや服はまだ補修していないから弱っている部分と思われたのかも。

 そう考えた時には地面に転がされていた。

 その勢いを使って体や腕を使って体勢を直した。

 まさか剣だけじゃなくて体術も使うとは思わなかった。


 「マティアスは意外と手段を選ばない男だよ、あたしも手合わせした時は驚いたよ。」


 エルケもマティアスと戦ったことがあるらしい。

 そこは冒険者、ときには手段を選ばないという事なのかな。

 ただでさえ月もので痛いのに追い打ちを掛けられるなんて!

 マティアスはロングソードの切っ先をわたしに向けて呪文を唱えた。

 切っ先に水の球が形成された。


 「ウォーターボール!」


 まさか魔法も使ってくるなんて!

 水の球は勢いよく私に向かってきた。

 だけど弾道は一直線。

 軽い右ステップで軌道から外れる。


 「ウィンドボール!」


 次は風の魔法を唱えた。

 色のない球は見分けが付きにくいけど空間の揺らぎがあるからなんとか見える!

 次は左へ避ける。

 ここから再び距離を詰めないと!


 「アースウォール!」


 土の壁を作って防御壁を作る?

 わたしが迂回する間に中位か上位の魔法を使うとか?

 だけど予想と違い正面には何も形成されなかった。

 いや、形成されていた。

 後ろを振り向くとわたしの後ろに土の壁が出来ていた。

 しかもわたしを中心に三方向囲っている。

 正面以外に逃げ場がない。

 でも、正面はがら空き!

 そのまま走るしかない。

 そう思ったけど、振り向いて確認した分だけ相手にも時間を与えていた。


 「ウォーターウェーブ!」


 「えっ!?」


 真っ直ぐに向かってくる水の波が押し寄せて来た。

 波と言えば水面の波紋しか見たことはなく、実際の波は大陸の東側と南側の海と言う水場で見られるらしい。

 そう言う話を以前ケイティ達から教えてくれたけど、記憶の中には異世界の海であろう場所で遊んだことがある……はず。

 その情景は楽しいひと時に思えたけど、今目の前に広がる光景はそれとは離れている。

 普通に進んでも水の波に巻き込まれて後ろの壁に叩きつけられる。

 突破口は開くための手段はただ一つ。

 体の中で魔力を精製、それらを体全体に循環させる。

 そこからショートソードにも流す。

 乱れはなし。

 その状態で正面へ駆け出した。

 ちらりとエルケ達やマイルズを盗み見た。

 多分エルケ達はわたしが無策で突っ込んでいると思っているはず。

 だけどマイルズだけは何かを察しているように感じた。

 目前に迫った水の波にショートソードを振り下ろした。

 本来なら斬れるはずのない水。

 魔力を纏ったショートソードが水に触れた瞬間。

 斬れた感触が伝わる。

 従来は水に剣が触れても変化はない。

 でもわたしの目の前で斬った直後に水の波は左右真っ二つになり霧散した。


 「嘘だろ!?」


 ゲルト達が驚きの声を上げていた。

 わたしは成功したけど、同時に計られた。

 正面にはマティアスがいて、ロングソードを既に振り下ろしていた。

 あぁ、これは。

 ロングソードを受け止めるための予備動作も行えず、あるがままを受け入れた。

 攻撃は真っすぐわたしの頭上を捉えて、ほんの少し空間を開けて止まった。


 「そこまで!」


 マイルズの合図に試合が手合わせが終わった。




 わたしの頭上からロングソードが離れてマティアスの腰の鞘に納められた。

 同じくわたしもショートソードを鞘に納めて張り詰めた緊張を解いた。


 「ありがとうございました。」


 「いや、俺こそありがとう。」


 握手を交わし、これでお終い。


 「剣を交わして思ったが、確かに剣の才能があるかないかで言えばないな。どちらかと言えば思い切りの良さに驚かされてばかりだった。」


 「面と向かって言われると複雑ですね。」


 「別に悪く言っている訳じゃない。他の冒険者と違って常に前に進もうとしている姿勢を感じたんだ。」


 マティアスがそんな風に評するとは思わなかった。

 ただ、前進しているというのは違う気がする。


 「一方でそれが死に急いでいるようにも感じた。気のせいならすまない。」


 「いえ……謝る必要はありません。まぁ、冒険者の稼業っていつ死ぬか分からないと思いますから。」


 別に進んで死のうと思っていないけどそれくらいのことをしないとわたしは誰にも復讐できない。

 もう止まることはしないし出来ない。

 誰にも明かさない胸の内を違う角度で見られることに驚いた。

 冒険者だけど荒くれ者ではない、それが青の等級を持つ人達なのかな。


 「それと最後に波を斬ったのには驚いたがあれはどうやって?」


 周囲を見ると訓練していた人達も興味を持っているのかこちらを見続けていた。

 これを上位の冒険者が知らないとなると世間では認知されていない?

 それよりもこちらのお願いがどうなるのか気になる。

 尤も言えばお腹は痛いから早く立ち去りたいけど……。


 「わたしのお願いを聞いてくださるなら直ぐにでも教えますけど?」


 「あぁ、それはちゃんと聞くから心配しないでくれ。今の手合わせは勝ち負け関係ないからな。」


 やっぱり関係なかったの!?

 引き合いに出すべきじゃなかった。

 頭を抱えたくなるけど仕方がない。

 他の人達でも再現できるかどうかは知りたい気がする。

 マイルズやマティアスの仲間達も気になるのかかなり距離を詰めて来た。


 「今はここだけの話にしてください。実は―――」


 きっかけと訓練方法を教えると一応は納得してくれた。


 「あたしは魔法とか無縁だからできそうにないわね。」


 「俺も同じだ。」


 「出来たら凄いだろうな……。」


 エルケ、クラウス、ゲルトの三人は肩を落とした。


 「俺も魔法は使えないからな。」


 実はやってみたかったのかマイルズも目に見えて落ち込んでいた。

 この場でマティアスは魔法が使えるからか可能性は十分にあった。

 それを自覚しているのか当人は早速試していた。

 わたしのイメージを伝えると彼の体から白いオーラが現れて纏っている状態になった。


 「これが……。」


 それを見てクラウスが思い出したみたい。


 「なんか戦場とかでマティアスがそんな状態になったのを見たことがあるな。」


 「マティアス、どんな感じだ?」


 ゲルトは気になったのか体感を訊いた。


 「何と言うか力が漲っているな。確かに何度か経験がある。」


 今の変化を魔法が使えない人達も視認出来ている。

 離れた場所にいる冒険者達も騒いでいる。


 「俺も出来たりしないかな!?」


 「何がどうなっているか分からないけど凄い人だから出来るんだろ!?」


 彼らが言う事は間違っていないけど正しくはない。

 もし凄い人しか出来ないならわたしは出来ない側の人間になる。

 だけど実際に出来ている。

 そして魔法は誰かに教えて貰わないと扱えないけどこの世界の人間であれば誰でも使うことはできると言われている。

 何かしらの要因で使えない可能性もなくはないけどこの世界の人間は生まれながらにして魔力があって勉強をすれば大抵は使える。

 魔法が苦手なボビィもちょっとは使えたから。

 マティアスの言葉を聞いた四人はそれぞれ思い当たる節があるのか何かを思い出すように腕を組んだり上を向いていた。


 「魔法は勉強すれば使うことが出来ます。魔力を持たない人は別ですけど、この世界の人間なら大抵使えるそうです。」


 「そうなのかい?あたしなんて前に魔法を使いたいって言ったら出来るわけないって言われたわよ。」


 「どういう人が言ったのかは分かりませんけど世間で魔法を使える人が少ないのは単に広めていないだけです。相応に学べば使えるようになります。ただ、文字の読み書きは出来た方が(はかど)りますけど。」


 「文字は苦手なのよぉ。」


 エルケも使おうと思えば使えるけどまず勉強が苦手らしい。


 「つまり俺達でも魔法は使えるんだな?」


 クラウスが食い気味に訊いてきた。


 「ええ、それに関しては魔法を使える人に教えて貰うのが早いですね。」


 「つまりマティアスやマルテだな!」


 マルテも魔法を使うらしい。

 二人いればパーティー内で教えるのは効率が良いかも。


 「仮に魔法を使わなくても魔力の精製さえ出来れば意図的に身体能力の強化が出来ますし、魔法で作られた物を斬ることも出来ると思います。」


 一方で魔法の効果が掛かっている武器や防具は例外かも知れない。


 「つまりマティアスみたいな状態が出来るなら俺達も魔法が斬れるってことだよな!?」


 「そうだと思います。」


 ゲルトの質問に答えると今度は魔法が使えない人達が喜んだ。


 「それにしてもポーラ、俺達に教えて良かったのか?」


 心配そうにするマイルズだけど、この人達なら良いかと思った。


 「マイルズ達が知らないなら確かに貴重な情報だと思う。ただ、これを知っている敵に出会った時に対応できるかどうかは変わるかも。自由に使えるなら生き延びるための大事な武器になるはず。それにマイルズ達なら悪用せず、正しく伝えることが出来ると思ったから。」


 「そっか。それなら言う事はないな。ただ、俺も自由に使えないからなぁ。」


 「皆の場合、意識の切り替えで使っているかもしれないからその感覚を掴めば出来ると思います。」


 「誰かに見て貰うと分かりやすいかもな。」


 「それで死地に行かないと出来ないなら安全な場所で良いかもな。」


 なんてクラウスとゲルトが冗談めかしに笑い合っていた。

 一方、マティアスはロングソードに魔力を通せたらしい。

 見ていても良く分かる。


 「これは大変だな。」


 「直ぐに出来るなんて……最高等級の青を持つ人は違いますね。」



 「バカを言え。これは君が教えてくれたから出来たこと、知らないままなら一生出来なかったぞ?そうだ、(ついで)に試し切りもしたいから魔法を出してくれないか?」


 「わたしが魔法を使えると?」


 「今までの会話や実践を見れば出来ると思うのが自然だが?」


 これも見透かされた。

 心の中で溜息を吐きつつ、わたし達は少し離れた。


 「行きますよ?」


 「良いぞ。」


 右手を出して水の球を作る。


 「ウォータボール!」


 水の球は真っすぐマティアスに飛んでいく。

 マティアスが剣を構えてから水の球が間合いに入った瞬間。

 ロングソードが振り下ろされ、水の球が二つに斬れた。

 左右に飛びながら霧散した。

 手応えを感じたマティアスは驚きつつも顔を綻ばせていた。


 「これが魔法を斬るという事か。」


 満足したのかロングソードを鞘に戻して皆の元へ戻った。


 「凄いじゃないの、マティアス!もう習得したのか!?」


 「ポーラが言うなら出来たと思いたい。」


 「上出来だと思います。」


 「ただ、魔力を体中に巡らせると体力を持っていかれるな。今くらいなら何ともないが長い時間はまだ使えない。」


 マティアスでもそう感じたらしい。

 ただ、持続時間はわたしよりも長い。

 そこは実力者だと改めて思った。


 「それに関しては日々の鍛錬で頑張るしかないですね。皆さんはマティアスに教えて貰うのが早いと思いますので。」


 「そうだな!マティアス、よろしくな!」


 クラウスが肩を叩いてお願いした。


 「それが教えて貰う人間の態度か?」


 「これくらい良いだろう。」


 「そうだ、ここには他の冒険者もいるんだ。彼らに口止めしないとな。」


 ゲルトは周辺にいた何人かの冒険者を集めて話し始めた。

 この場で見たことは秘密にしてほしい、その代わりマティアスパーティーでも使えるようになったら最優先で君達に教えるとしたようだ。

 彼らは無色の等級だったことからも他に教える人もいないらしいから広めないことを了承してくれた。

 こうしてマティアスから出された二つの条件を満たしてわたしのお願いを聞いてもらう番になった……。

 因みに最後にマティアスが水の波に乗じて駆けていたのはわたしが何かを仕出かすかも知れないと言う直感からだったと言う。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。

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