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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
傲慢と欲深な者達
71/131

71話 人助けのために

本日もよろしくお願いします。

本日中にもう1話投稿予定です。


※20220701

70話にも変更点を書かせて頂きました。

ナラカルカスの自生地の場所を変更しました。

南西→北

サブタイトル 71話 人助けのために 72話 見過ごすものと見過ごせないもの に関わる村の場所が設定と違ったために変更させて頂きました。

既に読んでくださった皆様、大変申し訳ございませんでした。

 冒険者で最高等級の青を持つマティアスと同じ階の別室に移った。

 その部屋には一人の女性を看病している体が大きい褐色肌で筋肉質の女性がいた。


 「彼女の容態は?」


 「悪いままよ。」


 「そうか……。」


 ベッドに臥せっている女性の髪色はダークブラウンだけど心なしか緑がかっている気がした。

 体中が痛いのか蹲って歯を食いしばっていた。

 マティアス達が何も出来なくて悲痛な思いを抱えているのはなんとなくわかった。


 「えっと、マイルズさんともう一人は?」


 「ポーラです、最近この帝都へ来た冒険者です。」


 「あたしはエルケ、マティアスの仲間よ。」


 「よろしくお願いします。」


 わたしとエルケの挨拶を終えるとマティアスは彼女に他の仲間の所在を聞いた。


 「もう直ぐ来ると思うわよ。」


 彼女が言う通り、ドアを開けて次々に冒険者が入室してきた。

 入って来たのは三人、槍を武器に戦うクラウス、ブロードソードと盾で戦うゲルト、小柄な少女はドリスとそれぞれ紹介された。

 そして、ベッドで苦しんでいるのはマルテと言う女性。

 この部屋もマティアスの部屋と同様の大きさや配置だけど、まだ人が入れるほど広いと言うのを再実感する。


 「皆、マイルズさん達が協力してくれることになった。もし新しい情報があるなら教えて欲しい。」


 しかし、四人の顔は曇るばかり。

 槍を持っているクラウスが声を上げた。


 「悪い、俺の方は全然収穫がなかった。あの薬師に聞き直したら、昔は知られていたらしいが大分昔に人前に姿を現わさなかったから殆どの薬師や医者は絶滅したと思って情報を後世にしっかりと残したり材料を確保することがなくなったってよ。」


 ゲルトとエルケも治すための新しい情報はないらしい。

 ドリスも申し訳なさそうな表情だけど。


 「私も有力な情報はありませんでした。ただ、フォエネルムは地面に生えている野草でナラカルカスは山の中に多く自生している樹木しかわかりませんでした。」


 「そうか……。」


 知名度の低い植物だからなのか冒険者ギルドで保管されている文献にもないらしい。

 そう言えば、名前を聞いてみれば昔アルファン様の所有していた本に書かれていたかな。

 ナラカルカスは……山で見たこともある。


 「あの、フォエネルムは緑の植物で根元の茎は太いんですけど先へ行くと細くて葉っぱも一枚一枚小さくて細々としています。雨季から熱い時期に掛けて小さくて黄色い花を先端に幾つも咲かせます。ナラカルカスは寒くなると葉っぱを落としますが、その前に茶色で小さくて堅い果実を実らせます。樹液は樹木に傷をつけると出してくれますけどその樹木は枯れることがあるのであまり乱取しない方が良いと言われています。」


 一先ずの特徴を伝えると全員が静かになった。


 「なんでポーラがそんなことを知っているんだ!?」


 マイルズがわたしの肩を大きく揺らす。

 他の人達も目を丸くする。


 「そんな情報何処にあったんだ!?」


 「冒険者ギルドにはなかったぞ!?」


 「昔、人に教えて貰ったんです。偶々知っていただけです……。」


 適当にはぐらかしてこの話はお終い。

 一同が落ち着いたところでマティアスはマイルズに向き直った。


 「それでは、申し訳ありませんがよろしくお願いします。」


 「マティアス達も気を付けて帰って来いよ!ちゃんと彼女を迎えてやらないといけないんだからな!」


 マイルズの言葉に彼らの表情は少し明るくなった気がした。

 早速わたし達は一階に戻った。

 時間が経っているからかあれだけ混んでいたのに今は人もまばら。

 数人が眺めている掲示板へ向かうマイルズについて行く。


 「一応、目的地付近の依頼があるなら受けておいた方が良いな。」


 「そこは冒険者の性なんだ。」


 「そうだな、序に問題を解決できるならそれに越したことはない。だが、欲張ると何も達成できないから無理に受けないことだ。」


 「肝に銘じます。」


 「俺はフォエネルムを取りに行く。生憎俺はナラカルカスは見分けが付かないからな、そっちはポーラに頼んだ。それに分かれて動いた方が速いからな。」


 「分かりました。」


 ただ、フォエネルムは寒い時期には自生していないはず。

 それも伝えたけど知り合いの命が掛かっているなら探す以外はない、とマイルズが言い切った。

 確かに探しに行かない限りは可能性はない。

 マイルズは依頼を決めたようで依頼書を受付に持っていった。

 わたしも決めないと。


 「あ、ポーラちゃん!」


 後ろから声を掛けた男。


 「コウタ。」


 軽装備の男はわたしの隣に並んで掲示板を眺めた。


 「ポーラちゃんも依頼を受けるの?」


 「別件のついでに受けようかと?」


 「別件?」


 興味を持ったのか訊き返すコウタに答えようか迷う。

 正直一人で行動した方が楽だけど異界の勇者の力を見られるなら丁度良い機会かもしれない。


 「実は―――」


 事情は話さず頼まれた材料を取りに行くことだけを伝えるとコウタは嬉々とした。


 「それなら俺も一緒に行くよ!女の子一人じゃ危ないし!」


 「では、よろしくお願いします。」


 身の危険を感じる気がしたけど大丈夫だと信じたい。

 結局依頼は選ばず、わたし達は冒険者ギルドを出た。


 「依頼を受けないの?」


 「割に合う依頼がなかったので。」


 「そうかぁ、それは残念だ。」


 「でも、道中でモンスターに遭遇して倒せば素材を引き取ってくれますよ。」


 「なるほど!それなら期待できるな!」


 何に期待するのかよくわからないけどそれは置いておこう。


 「今から道具を揃えます。」


 「分かった!」


 マイルズに紹介してもらったホレスの道具屋に向かい、ポーションと傷薬、樹液採取用の細い筒と木製の容器を買った。

 今回の目的の樹液とは別に他の種類の樹液を採取する依頼が偶にあるからこの店でも置いていると聞いた。

 容器の大きさは腰に巻いている雑嚢に入らないから背嚢に入れた。

 あとは携行食を買って目的地へ向かう馬車に乗せて貰う。


 「ポーラちゃんって冒険慣れしているんだね。」


 「幾つかの町で冒険者の仕事を受けていたので。」


 「そっかぁ、それは凄いや!俺なんて帝都で冒険者を始めたから全然分からなくて。でも依頼は幾つも受けているからその内進級するかも!」


 「進級できると良いですね。」


 「それでさぁ、この前路地裏を歩いていたら不良が肩をぶつけてきてさ。あいつら『お前、何人様にぶつかっているんだ!謝れ!』って言ってきて。お前達がぶつかって来たんだからお前達が謝れって言ったわけさ。あいつら『ここいらでは俺達は強いんだぜ、痛い目見たくなかったらさっさと謝って身ぐるみ置いていけ』って言ってきてさ!俺、つい笑っちゃったよ!だってあいつら明らかに弱そうなのに粋がっちゃってさ、俺は穏便に済ませたかったから『お前達、ここで見逃してやるからさっさと行け』って言ったらあいつら顔を真っ赤にして怒って来たんだよね。それで向こうが殴りかかって来たから軽く捻ってあげたらビービー泣いちゃって!見てて恥ずかしかったよ、大の男達が泣いて跪いているんだから!あれは爽快だったね!」


 他には大柄な冒険者の男の格好がダサい、あそこのご飯は美味しいけど接客はなっていない、あの女性の化粧はどうにかして欲しいと言った話ばかりだった。

 自慢話か酷評するかばかりの話に聞いていて疲れるだけだった。

 自分の話を一方的にするのは以前からそうだった気がする。

 ただ、ここまで捲し立てるような話をする人間だったかと思えてしまうほど。

 もしかしたら今までの鬱憤を晴らしたいのか、単に間を開けないようにしたいだけなのか。

 正直適当に相槌を打つのも疲れてしまった……。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。

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