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58話 途上

本日もよろしくお願いします。

 事を成し遂げたあと、わたしは小川を超えた先の森に向かった。

 途中で凍らせたタバサを確認したけど凍ったままで安心。

 人目に付きにくい木陰へ隠れるように蹲る。

 瞼が重い。

 大分疲れていたのか太陽が天辺へ昇るまで眠りに就いていた。

 どれくらい寝たのだろうか?

 木漏れ日に気が付いてゆっくりと目を開けた。

 体に意識を向けるけど大きな不調はない。

 それから夜中の出来事を思い出していく。

 街のかく乱、タバサの排除、屋敷の炎上。

 最初の復讐をやり遂げた実感はある。

 この手に残る感触も覚えている。

 それでも気持ちが晴れない。

 だってまだ恨む相手がいる、八つ裂きにしたい奴らがいるから?

 次は誰を狙うべき?

 早くしたいのにそれが出来ない現実。

 それがとてももどかしい……。

 気持ちを表面に出さないようにしないとすれ違う誰かに怪しまれる。

 思考を切り替え、血の付いた作業着を脱いで昨年着た衣服を身に着ける。


 「これもキツイ……。」


 残りの旅道具を掘り起こして毛皮のローブを被ってから森を出た。

 小川を見るとうつ伏せになって倒れている人影が一つ。

 息が出来ず氷解した結果。

 生きているならここから立ち去っているはず、だからこれは既に脅威にはならない。

 それを見届けてから大きく迂回して街に入った。

 改めてこの街を見ると小川や森の一部は塀で囲まれていた。

 ここへ来るときは大抵夜だったからあまり気にしていなかったけど、ある意味侵入されやすい作りじゃないのかと思えてならない。

 ただ資源の確保という意味では分からなくもないけど。

 程なくして街に戻ると住民達は騒いでいた。

 話を聞くと夜にベイグラッド邸が炎上しているのを私兵団が発見して、鎮火作業を行ったものの直ぐには消えず建物は全損だった。

 今は瓦礫の撤去中で詳細は掴めていないとのこと。

 朝方、屋敷の周辺は野次馬が多かったらしいけど今は兵士達だけになっているとか。

 街の住人達の中では原因不明の火事として見られている。

 ある日突然自分の家が燃えるとか恐ろしい事この上ない。

 ただ住民達の不安は火事の原因よりも領主の不在だと感じる。

 誰が治めるかで自分達の生活が左右される。

 住民達の不安を他所に商人達は商魂逞しいのか表面上は賑やかに活動していた。

 彼らの場合はいざとなったら別の領へ行く算段も立てているかもしれない。

 また、街中でも倒壊した建物の話も上がっており何処かの組織の攻撃か、サンデル王国の刺客か、はたまたモンスターの仕業か?

 そう(うそぶ)かれていた。

 わたしはローブと保存食を買って街を出る商人の馬車に相乗りさせてもらった。

 この街で稼ぐことも考えたけど途中で見つかるリスクもあるから出て行く事にする。

 出て行くときの検問はヒヤッとしたけど冒険者ギルド発行のタグを見せれば問題なく通れた。

 道中、コボルドに遭遇したけど一体だけで難なく退けた。

 それから数日後、町へ着いて暫く滞在。

 ここにも冒険者ギルドが設営されているから薬草採取の依頼を中心に受けた。

 主にお金を稼ぐため気づけば数週間経っていたけど、わたしが捕まることはなかった。

 わたし達よりもあとから来た商人達曰く、兵士達の調査によればベイグラッド邸に住んでいた家族は全員焼死、生き残りはいないらしい。

 また、敷地内にいた使用人達も同じ様で生存者はなし。

 使用人に関しては具体的な人数を把握しておらず、免れた人が居るとは考えられていないらしい。

 それと近くの小川でダルメッサの用心棒の遺体も発見して一時騒然としたらしい。

 人によっては用心棒の犯行と見ているらしいが大半は恨みを持つ外部の犯行と見ているとか。

 それと後任の領主はベイグラッドの二人の子供でダレルの弟達のどちらかが領地をもらい受ける話になっている。

 彼らは実際にデルマイユの街に来て演説してアピールしているけど兄弟なだけに似たり寄ったりと言う印象と言っていた。

 それでも大きな諍いはないから近いうちに決まるだろうと商人が言っていた。

 それとダルメッサと繋がっている組織、オメキャリングの動きはよくわからなかった。

 彼らは報復としてわたしを探すと思っていたけどかなり緩慢に感じる。

 何処かで襲われると思っていたけどそんな事はなかった。

 わたしにとってはダルメッサの傲慢が生んだ幸運だと思いたい。

 一通り話も聞けたことだし、次に向かおうかな。


 「そこの商人さん、行き先は何処でしょうか?」


 「帝都に行くが、どうしてそんなことを聞くんだ?」


 「それでしたらわたしを護衛にしてくれませんか?報酬は相乗りさせてくれるだけで良いです。」


 「そいつは気前が良いな。大抵の奴は報酬も寄越せと言うのに。」


 商人は驚くけどわたしとしては楽な移動手段を得られればそれで良しにしている。


 「必要なら契約書に名前を書きますけど?」


 「そうだな、そこまで言うなら書いてもらおうか。」


 「わかりました。それでは乗せていただけると?」


 「良いぞ、もう少ししたら出るから。契約書も用意して書いてくれたら出発だ。」


 「ありがとうございます。」


 それなりに大きな馬車で幌付きが幾つもあった。

 次の目的地は帝都。

 その場所には騎士団や魔法士団がいるはず。

 わたしは確かめなければならない。

 彼らの真意を……。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。

次は異界の勇者達とシンゴの話を挟む予定です。

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