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55話 最後の晩餐

本日もよろしくお願いします。

昨日、一昨日も投稿していますのでまだの方はそちらも目を通して頂ければと思います。

 まだ暑さが残る時期、村によっては忙しい季節だろうか。

 デルマイユの街も夏の農作物が流通している。

 作物の流通を含めサンデル王国との停戦が公になりその知らせを聞いた多くの国民は安堵して街全体で活気づいていた。

 そんなある夕食時。

 ダルメッサを始めベイグラッドの家族は楽しく団欒を楽しんでいる。

 と言っても少し前に私兵団が帰還したけど想定以上に少ないとダルメッサとダレルが嘆いていた。

 それでも家族や民衆の前では毅然としていたから彼らは貴族としての威厳を現在も保っているのだろう。

 この屋敷の新人使用人達はそんな彼らの態度を見て敬っている節もある。


 「今回の料理も美味いな!これはどのように作ったんだ!?」


 ダルメッサの声に同席していた料理人があれこれと説明。


 「ふわふわして美味しい!」


 ニカッと笑うサリーに母親のルースは同意して微笑み返す。

 ドルーやエヴァンも同じように笑みが零れている。

 名前は分からないけど卵を溶いてふわふわに焼いて仕上げたシンプルな料理。

 既存のスープは鶏ガラを煮込んで出汁を取っているから今までよりも味わいがあるはず。

 主菜の卵料理に関してはわたしの思い出にある調理のイメージが流用されている。

 と言っても記憶の中の似たような物を今日までこの世界で見た材料で代用したり、作り方や手間について教えた。


 「こういう材料を使うのはどうでしょうか?」


 「こんな風にやってみたいのですが。」


 と調理場で手伝って信用を得てから調理法を伝えると快く応じてくれた。

 その甲斐あって本日の料理も満足いただけたようだ。

 伝えた工夫に関しては全て料理長達の手柄にしてもらっている。

 それぞれの立場もあるから出来るだけトラブルを起こさないようにした結果。

 それを繰り返すうちに実際に調理も任されるようになり、以前よりも料理の腕は上がった気がする。

 だから使用人達に出す(まかな)いも作らせてもらえるし、門番達にもおすそ分け出来る。

 主達の食事が終われば、各使用人達も合間を見て食事をする。

 わたしも外で交代した門番達に焼き菓子の差し入れを渡す。


 「これ、良かったら食べてください。」


 「おっ、いつもありがとう!」


 「最近はこれが楽しみなんだよなぁ!」


 と嬉しそうに貰ってその場で食べてくれた。


 「甘くてサクサクしているな!これは気軽に食べられるぞ!」


 「でもこういうのってお偉い方が食べるやつなんじゃ?」


 「これは皆様でも気軽に食べられるものですよ。」


 「そうだったのか!」


 「俺達にも食べさせてくれるなんてこの家は懐が広いな。」


 「それでは失礼します。」


 一礼して屋敷に戻る。

 門番達へのおすそ分けは念のため料理長に相談してゴードン経由で許可を貰えたので特に怪しまれることなく食べて貰えている。

 何月も前から実行しているため誰も気にしない。

 残りの仕事を終えれば殆どの使用人達は床に就く。

 わたしも部屋に戻り、明かりを消して就寝した。


 ……。


 意識を覚醒させる。

 ゆっくりと体を起こして窓から外を覗く。

 昇っていく月はかなり細い弦を描いている。

 満月よりも大分暗い夜。

 明かりをつけずに部屋に置いてある小さな小袋を持ち出して外に出る。

 足音を立てず、誰にも見つからないようにそっと屋敷の裏の外壁付近の植木に登って外へ出る。

 そこから郊外まで移動して、幾つもの小川の一つに辿り着く。

 幾つもある茂みを確認して目印を見つける。

 屋敷内の花壇の手入れなどで使う道具の一つ、スコップを持ってきた小袋の中から取り出して掘り出す。

 ある程度掘り出せば以前埋めた旅の道具一式が顔を見せた。

 ショートソードもあるし、事前に準備した炎爆石の包みも全部ある。

 アルファン様の屋敷から脱出して着続けていた服に体を通す…ことはできず断念。

 やはり体型が変わっているから着れない。

 気持ちを切り替え使用人服のスカートの裾を捲って結んだ。

 スカート丈を短くすれば動きやすいはず。

 エプロンは外して腰に巻く。

 それからローブを着て各武器の点検。

 ショートソードは隠す前と遜色ないようで安心。

 ナイフもまだ使える。

 一通り装備してまた街に戻る。

 体力を消耗しない程度に走り、中へ侵入。

 そして街中を走り回る。

 裏路地や一部の目立つ建物。

 事前に目星をつけた建物に黒い石に見える通称炎爆石に魔力を込めながら撒いていく。

 巻き終えたら回った場所の中心になりそうな場所に移って身を隠す。

 そして、魔方陣を書いた羊皮紙を取り出して魔力を流した。

 一瞬空気が震えた。

 石が高いところから転がる音。

 周辺から人が出てくる前にこの場を動く。

 この行動の目的はダルメッサが関わっている組織オメキャリングの足止め。

 最近まで街に出た時には出来るだけ多くの場所を見回った。

 レイラに言い訳して一緒に行動させるのが一番大変だったけどその甲斐あって何か所か特定できた。

 それらの建物をダルメッサの私兵団で保管していた炎爆石をこっそり貰って使わせてもらった。

 魔力を通すだけで爆発すると聞いた時、手元で流すと巻き添いになると思った。

 それだと兵器への転用が出来なさそうだけど実際はサンデル王国に対して少量が使われていたらしい。

 その事からそのまま魔力を流すのではなく何かしらの工程が必要だと考えて試行錯誤の末、魔方陣を使った起動法に至った。

 もっと効率的な方法はありそうだけど、わたしは一つ一つの炎爆石に魔方陣と繋げるための記号を掘って認識させた。

 この世界の魔法もまだまだ分からないことがあり、具体的な原理は全然わからないけどやれば案外どうにかなるらしい。

 走りながら見ると煙が上がってはいない。

 燃やさずに建物を破壊するだけに留めたから。

 下手に火の手を上げると多くの住民の目に留まりダルメッサの元にまで上がり込んでしまう可能性がある。

 とは言ってもこれも時間の問題。

 次は屋敷に戻る。

 最大の障害を排除しなければ。

 わたしは急いで屋敷に向かった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。




補足・蛇足

ポーラの記憶

平本慎吾の思い出はありますが、言葉を中心にした知識などはほぼない状態です。

シンゴになったポーラも同様です。

現在のポーラはそこから少しずつ楽しい思い出が薄れているため平本慎吾の両親の顔を上手く思い出せません。

一方で、料理に関しては漫画やアニメを通じて実際に調理をした思い出があるためそれらをある程度思い出して伝えたという事です(イメージだけが残っている状態)。

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