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45話 女剣士の受難(後編) ―シンゴ・ヒラモト―

先日2話、本日1話を投稿しています。

久しぶりに見る方達にはご迷惑おかけしますがご了承ください。


※タイトルの微変更をしました。

 後半→後編



あらすじ

ムンドラ王国のミールドでシンゴ達は依頼を受けに鉱山へ向かった。

一方、彼らと同じ街で活動する冒険者キャロルは単独で離れた村の依頼を受けに向かったが・・・。

 数日後。

 昼過ぎにキャロルが商人と共に訪れたのはとある農村。

 商人と別れた彼女は依頼主である村長の元へやって来た。


 「初めまして、ここの村長です。」


 「ご丁寧にどうも。早速ですが村の状況を教えてください。」


 高齢男性である村長はキャロルがソロでやって来たことに驚きつつ依頼を出す前に村人達が二、三匹のゴブリンを見つけて追い払ったことや近くの洞窟へ逃げ込んだことを説明した。

 それを聞いた彼女は村人達に案内されて村の中や近くの洞窟へ足を運んだ。


 「これなら直ぐに片付きそうね。」


 その日は武器と防具を点検して村で一晩泊まった。

 明朝。

 キャロルは身支度をしてゴブリンのいる洞窟へ突撃。

 奇襲を掛けられたゴブリン達は洞窟の中で抵抗したがレイピアと火の魔法を駆使したキャロルの前に為す術もなく倒された。


 「ホブゴブリンにはひやりとさせられたけど、倒せて良かったぁ。」


 奥で待ち受けていたホブゴブリンも倒し討伐の証明をするための部位を切り取って警戒しながらも外を目指した。

 他に生き残りのゴブリンもいないようで無事に洞窟を出たところでキャロルの顔が安堵で緩みそうになったとき。


 「はぁ~い。」


 しかし。

 キャロルの目の前には街で別れたはずのナンシー達がいた。

 目の前の四人を見て彼女の顔は一気に曇る。


 「何の用?」


 キャロルが聞くとナンシーはクスクスと笑う。


 「つれないわねぇ。私とあなたの中じゃないのぉ。」


 「ふざけないでよ。私達はもう終わっている。」


 「そうねぇ、終わっているわねぇ。本来ならぁあなたは死んでいるはずだったのにぃ。」


 「死んでいなくて悪かったわね。私だって死を覚悟したけどこうして生きている。もう関わらないでよ!」


 「私だってぇ関わりたくなかったのよぉ。でもねぇ、あなたが生きているお陰でぇ私達の評価が・・・落ちたじゃないのぉ!」


 怒りを露わにするナンシーにアンジェラは笑っておりビビは同情の目をしてミラは泣きそうな顔をしていた。


 「そんなの知らないわ。自業自得じゃない。」


 「なのにぃあなたが平然と仕事しているのが一番気に喰わないのよぉ!」


 ナンシーが杖を構えると先端から水球が飛び出した。


 「ウォーターボール!」


 一直線に向かう水球をキャロルは左へ避ける。

 レイピアを構えたキャロルに剣を構えたアンジェラが斬りかかってきた。


 「ナンシーを仲間だと想うのならこんな事やめさせてよ!」


 「へへっ、わたしとしてはどっちでもいいかなぁって。」


 「はぁ!?」


 「人と戦う機会ってそんなにないし。それにポジションが被っているキャロルを倒すとわたしの方が上って事になるじゃないの!」


 「何言ってるの!?」


 笑顔で答えるアンジェラに動揺を隠せないキャロル。

 アンジェラが後ろへ下がったと思えばキャロルの左側からビビが大剣を振り回した。


 「悪いわね。」


 「っ!」


 キャロルは咄嗟に右へ回避。

 体勢を直そうとしたところへナンシーの水球が飛んでくる。

 避けきれずに両手を正面に組んで防ぐも後ろの壁に激突。


 「いっ!?」


 腕と背中から感じる衝撃で膝から崩れるキャロルにアンジェラが近づく。


 「あんたがいる限り、わたし達にとって都合が悪いの!だから死んでね!」


 「ふ、ふざけないでよ!」


 アンジェラが剣を振り下ろそうとしたその時。

 彼女の横を何かが通り過ぎた。


 「っ!?」


 キャロルも含むその場の五人は何が飛んできたのか一瞬分からなかった。

 キャロルが見上げると壁に矢が刺さっていた。

 土の壁に刺さった矢を全員が見れば後ろから集団の気配。


 「一人に対して寄って集って、弱いものいじめか?」


 声を掛けて来たのは一人の男。

 青みがかった黒髪の冒険者、シンゴ。

 他にもジェーン、グレアム、弓を構えたエディックもいた。


 「あなたはぁ、シンゴぉ?」


 「俺を知っているのか?」


 「ミールドで知らない冒険者の方が少ないわぁ。」


 「それなら今の状況を説明してくれるよな?」


 「これはぁ私達の問題なのぉ。部外者は黙るのが筋でしょう~?」


 怒気を孕んで答えるナンシーにシンゴは溜息を吐いた。


 「普通ならそうだな。だけどあんた達は冒険者同士で殺し合っていただろ?流石に止めに入るぞ?」


 「今ぁ停まっているからいいでしょう?あなた達はここから去りなさぁい。」


 「ここを離れるならそこの女も連れて行く。」


 「何を言っているのかしらぁ?彼女は私達のぉ~。」


 「もう仲間じゃないんだろう?俺達だってあんた達の話は聞いているんだ。彼女は俺達で保護する。」


 「嫌だと言ったらぁ~?」


 「剣を振り下ろそうとしている女の首が飛ぶかもしれないなぁ?」


 「脅しのつもりぃ?」


 「脅しなんかじゃない。警告だ。」


 「ふ~ん。」


 シンゴがキャロルの元へ歩み寄って手を差し出した。


 「立てるか?」


 「えぇ。」


 シンゴの手を握って起こされたキャロルは立ち上がった。

 直後、一度脇に動いたアンジェラがシンゴに向かって剣を振り下ろそうとした。


 「三度目はないぞ。」


 再びアンジェラの目の前を矢が通り過ぎていた。

 二射目に対してナンシー達が息を呑み、目を大きく開いたアンジェラ顔中冷や汗が流れ始めた。


 「行くぞ。」


 シンゴはキャロルの手を引っ張りながら仲間と共にその場を立ち去る。

 彼らの行動をそのまま見送るナンシー達。


 「何なのぉ、あの男ぉ?」


 「クソがぁ!」


 ナンシーはその場で立ち尽くし、アンジェラは地団太を踏む。

 ビビとミラはナンシーの元に集まったが二人とも怯えた表情をしている。


 「あのエルフ、弓の腕が凄い。」


 「アンジェラが射抜かれなくて良かったぁ・・・。」


 「あんたら!わたし達コケにされたんだぞ!?」


 アンジェラの荒げた声が近くの森に木霊する。


 「あの状況だとナンシーが人質に取られていた。無難な対応だと思うわ。」


 ビビは伏せた目で答える。


 「と、とにかく!ミールドへ戻らない?ここで受けられる依頼なんてないし。」


 「くっ!」


 森の中を静かにそよ風が拭く。

 ナンシー達は夕方になるまで洞窟の前で立ち止まり続けた。




 ナンシー達と別れて村を旅立ったシンゴ達。

 商人の馬車に揺られながらシンゴ達はお互いに自己紹介をして事のあらましを話し合った。

 初対面のキャロルはシンゴ達に対して緊張していたが話し終える頃にはそれも解れていた。

 キャロルから聞いた話。

 以前はキャロルもナンシー達のパーティーで活躍していた。

 ある冒険の最中、モンスターの群れに囲まれると言う窮地に陥った。

 その窮地を脱するためにナンシー達はキャロルを囮に使った。

 キャロルにあれこれ言って離れることを妨害したナンシー達は彼女を置いて逃走。

 その結果、ナンシー達は脱出して冒険者ギルドに報告。

 キャロルが死んだと報告して報酬を四人で分けた。

 しかし、数日後にキャロルは生きて戻って来た。

 キャロルの生存と彼女の報告を聞いた冒険者ギルドはナンシー達を虚偽報告などの罪で一月の謹慎処分を言い渡された。

 そして今回の凶行へと至った。


 「大変だったね。」


 ジェーンがキャロルの肩を抱いて頷く。


 「うん・・・。」


 それからミールドまで彼らは一緒に行動。

 特に波風立たずに冒険を終えた。

 シンゴ達は元々受けた依頼の達成を報告。

 次いでキャロルに振りかかった災難も冒険者ギルドに報告した。


 「わかりました。こちらで対処させていただきます。何かありましたら連絡ください。」


 受付嬢に伝えて五人は大通りに並ぶ飲食店へ足を運んだ。

 五人が囲むテーブルには肉料理や魚料理などが並んでおり、各々好きな物を食べている。


 「これからどうするんだ?」


 グレアムがキャロルにこれからのことを訊いた。

 数秒の沈黙が漂ったが彼女はゆっくりと口を開いた。


 「冒険者は続けるかな。他に当てもないし。」


 「一人で続けるの?」


 「私を受け入れるところなんてそうなさそうだし。」


 「そんなことはないと思いますよ?」


 「どういう事?」


 キャロルがシンゴ達を見回して訝しむ。

 心当たりがないのか彼女の口から答えが出ない。


 「キャロル、もし良かったら俺達とパーティーを組まないか?」


 「えっ?」


 驚くキャロルにシンゴ達は言葉を続ける。


 「俺達は君の事情を知っているし君の実力を買っている。」


 「キャロルを放っておく理由はないな。」


 「魔法と剣を使える冒険者はそう多くはいませんからね。」


 「キャロルが一緒に居てくれると私は嬉しいな!」


 「みんな・・・。」


 涙を浮かべるキャロルは嗚咽しながら言葉を紡いだ。


 「ありがとう・・・。本当は心細かったんだ。私で良ければ一緒にいさせて!」


 「これからよろしくね!」


 隣で抱き着くジェーンに涙腺が崩壊したキャロル。

 そんな彼女達を温かく見守るシンゴ達。

 彼らのパーティーにまた一人仲間が加わった。




 シンゴ達があとから聞いたナンシー達の話。

 ナンシー達がキャロルを陥れようとした理由。

 当初は五人とも仲が良く、特に問題も起こしていなかったらしい。

 その中で女性だけのパーティーという事もあり有名になっていくが一際脚光を浴びたのがキャロルだった。

 それが気に喰わなかったナンシー達はストレスが溜まる一方。

 表面上では取り繕っていた彼女達だったが例の冒険の状況でストレスが爆発。

 仲間を置き去りにして虚偽報告をしただけでなく、周囲の冒険者達へキャロルに関する悪い噂も流していた。

 現在でこそ噂を信じる人間は減っているが一度広まった噂は完全には消えてくれず、キャロルが別のパーティーと交渉しても受け入れてもらえなかった。

 様々な行いでナンシー達は処分を下され冒険者ギルドの仕事を受けられずに近日まで過ごしていた。

 これを機にナンシー達が反省してお互いに関わらなければ良かったが、キャロルだけが仕事を受けられる事に腹を立てたナンシーが仲間と一緒に復讐に出た。

 今の状況を作ったキャロルを許さないと言う想い。

 そしてキャロルを亡き者にすればストレスから解放される、そんな理由だった。

 シンゴ達からすれば逆恨みも良いところで行動原理も自分勝手としか言いようがない。

 始末に負えないナンシー達は一定の期間、冒険者の資格を剝奪されてアダントラ鉱山で囚人として働くことになったらしい。

 働きによっては刑期が縮まるらしいが果たして。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。

話の構成上、もう少しだけシンゴ編を投稿するかもしれません、ご了承ください。


補足・蛇足

パーティー

この世界において主に複数人の冒険者達が共同で活動するときに用いられる俗称。

一集団あたりの人数は決まっておらず、二人以上で認知される。

冒険者ギルドに於いてパーティーに対して特定の依頼を指名することがあるものの、冒険者ギルドに登録されるのは上から一番目か二番目の等級を持つ個人が代表である場合が殆どである。

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