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42話 異変の前触れ(前編) ―シンゴ・ヒラモト―

本日もよろしくお願いします。

暫く前後半に分けて投稿予定です。

また本編を楽しみにしている皆様、暫くお待ちください。


※タイトルの微変更をしました。

 前半→前編


シンゴ・ヒラモトのあらすじ

ムンドラ王国にあるミールドの街で冒険者として活躍。

ジェーンと共に凶悪なモンスター、サスタニアンを討伐して更なる躍進を果たす。

更に新たな仲間が見つかり一行は次なる冒険へ進み続ける……。

 ここはムンドラ王国のミールド。

 国内では三番目に大きい街と評されておりムンドラ王国の南東に位置する街はフレイメス帝国や東にある獣人達が築いたゴルダ連合国に近く、国交もあるためそれらの国との物流拠点にもなっている。

 街の中は今日も賑わっており、人種を問わず様々な人達が大通りを行き来している。

 そしてシンゴ達がここで活動し始めてから早三年。

 彼らの等級は上から二番目の赤の等級になっていた。

 全部で五つある内の三つ目まではある程度の実力があれば得られるのだが、それ以上になると様々な実績が必要になる。

 とは言え、冒険者で三つ目の緑の等級であれば依頼の幅はそれなりに在り、生活するのに不自由しないとも言われている。

 但し、依頼を達成した場合に限るが。

 かなりの実力者として認められる赤の等級を手にしたシンゴ達は大通りの大衆食堂で昼食を摂っていた。

 ここの食堂は冒険者や商人、町人まで利用できる場所であり気兼ねなく食事ができる場所としても知られている。

 尤も、冒険者にとってはある程度の味と量があれば気にしないと言う者も多い。


 「シンゴは何を食べるの?」


 「俺は・・・ベーコンのスープパスタにするか。」


 「私はホウレンソウとジャガイモのピッツァにするわ。」


 一つのテーブルにシンゴとジェーン、それにグレアムの三人。

 グレアムが女性店員を呼び、注文をする。

 二人の注文は通ったがグレアムの注文だけは申し訳なさそうに話し始める女性店員。


 「大変申し訳ありません。当店では現在ウサギ肉を切らしてしまったので、提供することが出来なくなりました・・・。」


 「な・・・なん・・・だと!?」


 驚愕して目を見開くグレアムだが材料がない以上は注文できないだろう。


 「そんなにショックな事か?」


 シンゴが何気なく聞くとグレアムはシンゴに向き直した。


 「それはそうだろ!俺はウサギの肉が好きなんだ!脂肪分が少ないのが良いし柔らかい!絶対に飽きることがない!」


 「だったら鶏肉で我慢すれば?味も似てるし。」


 「ジェーン!確かに似ているかもしれないがウサギの肉の代わりとして食べるのは何かダメだ!」


 感覚的にウサギの肉が好きだと言うグレアムに二人と女性店員は後ろに仰け反ったが無いものはない。

 それを理解しているグレアムは心の中の熱を覚ますとローストビーフのレタスサンドを頼んだ。


 「全然違う奴じゃん。」


 「しょうがないだろう。まぁ、偶には気分を変えるしかないさ。」


 この中では一番年上のグレアムでも熱くなることはある。

 二人はそれを知っているからそれ以上は言うことなく、配膳された料理に舌鼓打ちながら平らげた。

 食べ終えた三人は仕事をするために冒険者ギルドへ向かう。

 人込みを掻き分けながら進み、冒険者ギルドの門を開く。

 中は他の冒険者達が何組かいる。

 隣の食堂でも食事をしたり話し合ったりする冒険者が多く見られる。


 「そういや西から北の森でモンスターの遭遇率が高いって聞いたんだが。」


 「らしいな。俺は昨日は知らないが数日前とか森に入って直ぐ見つけられたくらいだ。」


 「なんか見たことないカエルが居て気持ち悪かったんだけどー。」


 「カエル?森に沢とかあるから居ても不思議じゃないだろ?」


 「奥の方でフォレドリヤスとかは見かけなかったな。」


 「サンデル王国付近に冒険へ行って帰ってこなかった奴がいるって聞いたがそんなにやばいのか?」


 「死んだわけじゃないらしいぞ。国に捕まって戦わされているとか。」


 「冒険者なのに酷い扱いだな。」


 「傭兵と同じ扱いなんだろ、国にとって。」


 などと様々な会話が飛び交っていた。

 シンゴ達にとってはここ数年で見慣れた光景になっており、また他の冒険者もシンゴ達のパーティーを見て挨拶する程度には顔なじみになっていた。


 「さて、依頼を選びますか。」


 三人で掲示板に貼られた依頼書を見回す。

 討伐系が多い中、採取や護衛の依頼も交じっている。

 予め方向性を決めないとかなり悩んでしまうが昼過ぎの時間帯であれば困る人は居ないのだろう。


 「どうするの?今日は討伐しに行く?」


 「まぁ、無難と言えばそうだが・・・。」


 ジェーンは討伐系を押しグレアムは特にこれと言ったものがないらしい。

 そんな中、シンゴは一つの依頼に目が留まる。


 「これは・・・。」


 手に取って確かめると他の二人もそれを覗く。


 「南西の森の調査?」


 ジェーンが顔を顰める。


 「生態系の調査だ。一応それぞれの場所で仕事をすればどんなモンスターが居たのか報告が上がってくるものだが、数年前のこともあるから念入りに調べて欲しいんだろう。」


 数年前と言えばグレアムが嘗ての仲間を失いシンゴが討伐したサスタニアンの事だろう。

 ミールド周辺では凶悪なモンスターとして恐れられており、個体数が少ないとはいえ生態系を荒らすだけの力を持っている。

 数年たった今だからこそ生物やモンスターの生息が気になっているのだろう。

 依頼主は冒険者ギルド。

 明るい時間と暗い時間の観察が必要になるようで数日かかる仕事でもあるから他の依頼よりは高い報酬になっている。

 とは言え、数日森の中で過ごすには体力と忍耐力も必要なため誰もが受けたい依頼ではない。


 「偶にはこういうのも良いと思うけど二人はどうだ?」


 「俺は構わない。」


 「森の中って言うのは不安だけどシンゴが居るから大丈夫だよね。」


 二人の肯定にシンゴが頷き、カウンターで依頼の受理をした。

 シンゴが去ろうとした時、横から男が声を掛けて来た。


 「ええっと、そこの君!ちょっといいか?」


 怪訝な顔で振り向くシンゴ。

 男は白のブリオーに緑のマントを背負い、矢筒と弓を背負っている。

 一番の特徴は普通の人よりも耳の先が長く尖っている事。

 オールバックにしたライトブラウンの髪によって耳が強調されていた。


 「何の用でしょうか?」


 シンゴが初めて対面する男はお辞儀をしてから話し始めた。


 「僕の名前はエディック。今日初めてこの街に来て一人なんだ。」


 「そうですか。それで?」


 「ソロで動くよりもパーティーで活動した方が良いと思って。受付嬢さんに相談したら君達を紹介されたんだ。その、出来たら君達のパーティーに臨時で加入させて欲しいんだけどいいかな?」


 「・・・。」


 シンゴは顎に手を当て唸った。

 彼の武器は弓矢。

 役割としてはジェーンと被ってしまう事だろうか。

 シンゴの中では弓矢は要らないと思っていたがジェーンは弓矢を扱えるだけで上手な部類ではない。

 それが今回のシンゴの天秤に掛けられているのかもしれない。


 「受付嬢さん。彼の言っていることは本当ですか?」


 「そうですね。エディックさんは別の町で活躍した冒険者です。パーティーは以前組まれていたみたいですけど・・・。」


 受付嬢の話を聞いたシンゴは再びエディックに向き直る。


 「エディック、仲間はどうした?」


 「仲間は・・・前の町で亡くなったよ。インフェリアマイリスにやられてね。」


 「そうか・・・。弓矢以外に出来ることは?」


 「水魔法をある程度は使えることかな。」


 「水魔法も使えるのか・・・。ん~、仕様がないな。」


 「?」


 頭を掻いて溜息を吐いたシンゴはエディックを手招きした。


 「取り敢えず仲間と相談させてくれ。」


 シンゴはエディックを連れて二人の仲目の元へ戻った。


 「この人は?」


 ジェーンに聞かれてシンゴは簡単に紹介をした。

 その上で彼を依頼に同行させるか否か。


 「シンゴが良いと思ったら良いと思うよ。」


 ジェーンは大体シンゴに任せている様だ。

 或いは無償の信頼。


 「等級は緑か。弓使いが一人で頑張るのは厳しいからな。変な真似をしないなら構わない。」


 グレアムは少し警戒しているみたいだがそれでも良しにした。


 「二人も良いと言ったことだし今回はよろしくな。」


 シンゴが手を差し出すとエディックも手を出し握手をした。

 それから四人は買い出しをして南西の森へ向かった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。


補足・蛇足

ムンドラ王国

サンデル王国の北東に位置する国。

北方には険しい山岳地帯があり、あまり探索が進められていない。

農作物を中心に西のステア王国や東の獣人が住むゴルダ連合国へ輸出している。

歴史上、サンデル王国と仲は良くないが最低限の国交は維持している。

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