41話 束縛 ―異界の勇者達―
大変お待たせしました。
今年もよろしくお願いします。
すごく省いた内容になっていますのでご了承ください……。
これは邪神カタストゥを討伐した後の話。
私達は勇者として邪神を倒すことに成功した。
だけど、犠牲も少なくはなかった。
サンデル王国だけでも兵士が何千人と亡くなっている。
他の国でも邪神の放ったモンスターの影響が出ていて、犠牲は今なお出ていると聞いた。
それ以前に、邪神との戦いで私達クラスメイトの中からも亡くなった人達が居る。
私はその人達とは特別親しかったわけじゃないけど、知っている人が居なくなると胸が苦しくなる。
再び訪れたクラスメイトの死に、特に仲の良かった人達は泣き続けていた。
この世界に来て私達は自分達の命が直ぐに消えてしまうほど脆くて弱いことを知ってしまった。
強力な能力を持っていても死ぬときは死んでしまう。
ここに居る誰もが死ぬことなく無事に元の世界へ戻れると思っていたはず。
現実はそんなに甘い話じゃなかった。
「俺が、俺が調子に乗っていなけりゃ・・・。」
飯田君が堪えているけど涙は正直だ。
彼と山田君はこの世界に来てから仲良くなっていたと思う。
その山田君が犠牲者の一人だ。
彼がどんな人か、薄情にも私は彼の事を知らない。
多分他の人も知らないかもしれない。
それでも飯田君や山田君と仲良くしていた友達は彼の事を思い出せると思う。
大重さん、徳田君、三戸君。
彼らもこの世界のため、元の世界へ帰るために命を懸けた勇者。
何人も亡くなって悲しみはあるのに・・・死ぬことが恐いと思わない。
モンスターを前にしても緊張や興奮はあれど恐怖だけは感じない。
もしかしたらこの世界に呼ばれた時点で私達の心は壊れちゃったのかな。
或いはサンデル王国の召喚魔法に何か仕掛けられていたのか。
命の重みを再認識しても私達を取り巻く環境は変わらない。
世界を破滅に導く邪神カタストゥを倒したのにサンデル王国は未だに元の世界へ帰してくれない。
私としては行方が分からない平本君を諦めたつもりはない。
そんな状況で帰されなくて内心ホッとしている自分がいる。
クラスの皆には悪いけど私にとっては元の世界へ帰されない方が良い。
勝手な願いかも知れないけど私は・・・。
王城に辿り着いて数日。
亡くなった人達の埋葬が行われた。
山田君達四人は勿論のこと他の兵士や騎士達も一緒。
と言っても兵士に関しては郊外の墓地に埋葬され、山田君達は鈴木君と同じ場所に埋葬される。
葬儀が終わると騎士の一人で最初期から私達の戦闘訓練を担当しているガンホーさんに飯田君、幸田君、小倉さん、土屋さん、本村さんが言い寄った。
「これで、これで王国の脅威はないんですよね!?」
幸田君が声を上げたけどガンホーさんは微動だにしなかった。
「私達は役目を終えました!元の世界へ帰してください!」
小倉さんが口にすると土屋さんと本村さんも同じように叫んだ。
亡くなった大重さんと仲の良いグループは小倉さんを中心にした土屋さんと本村さんの四人だった。
友達の死を目の当たりにして限界が来たのかもしれない。
「ガンホーさん!そもそも死んだ人間を生き返らせる魔法とかあるんじゃないのか!?だってここは剣と魔法の世界なんだろ?山田達と生き返らせる方法はあるよな!?」
鈴木君の埋葬を見ていたにも関わらず飯田君は目に涙を貯めながらガンホーさんに訴えた。
ゲームならキャラクターを復活させる呪文はあったのかもしれない。
だけどここは現実。
生前と同じように生き返らせるなら既に実行しているはず。
それは飯田君の中でもわかっているはずなのに。
彼の中では山田君達を取り戻したい一心なのが伝わってくる。
「ショウタ。使者を蘇らせることはできない。そんな魔法は存在しない。」
冷たく言い放つガンホーさんに飯田君達は食い下がろうとするが兵士達が彼らの元に集まる。
「彼らを部屋へ連れていけ。」
命令通りに兵士達は飯田君達を連れて行った。
小倉さん達は兎も角飯田君の力が強いのか一人の兵士では足らず、何人もの兵士達が抑え込んで連れて行った。
「異界の勇者達よ。後日改めて説明するが死んだ人間は蘇らない。もし死体が動くのであればそれはアンデッドだ。」
そう言い放ったガンホーさんはこの場を去る。
そんなガンホーさんの態度に殆どの人が内心苛立っていそう。
飯田君が言ったように死んだ人達を生き返らせて欲しい、小倉さんが言ったように元の世界へ帰して欲しい。
そう思っているし、今回の邪神を倒したことで平和が訪れたはず。
なのに死んだ人は死んだまま、元の世界へ帰れるかはわからない。
そんな不満が漏れ出ている。
だけど、近くに兵士が居るからこの場では不安を吐き出せない。
気づけば私達は宿舎へ戻っていた。
私は樹梨ちゃんと一緒に樹梨ちゃんの部屋に入った。
今回は船戸君はいない。
彼は別の人達に付き合っているのかもしれない。
皆、宿舎の部屋なら色々と話せそうだし。
扉を閉めて二人でベッドに座り込む。
緊張が解けたのか樹梨ちゃんは体をベッドに預けた。
「死んだ人間が生き返らないのは分かっていたけど。」
樹梨ちゃん以外にも同じように思っている人は居ると思う。
「元の世界へ帰れるかも濁された感じだから・・・。」
多分帰らせる気はないのかもしれない。
杞憂で終わればそれが一番良いと思うけど。
「私達は死ぬまで使われると思うよ。」
「利香がそう言うなんて珍しいね。」
「そうかな?」
「そうだよ。」
帰れることに関してはある意味諦めが着いちゃってるのかもしれない。
そう言う想いだからそう思われたのかも。
「樹梨ちゃんは帰りたい?」
「私は・・・帰れるなら帰りたい、ただ。」
「ただ?」
「帰る時は利香と一緒。利香がここに残るなら私も残るよ。」
「樹梨ちゃん・・・。」
樹梨ちゃんの強い意志が彼女の瞳を通して伝わってくる。
「私も樹梨ちゃんが一緒なら怖くないよ。」
「ありがとう。私が利香を守るから・・・。」
「私も樹梨ちゃんを助けるから。」
大事な友達が近くに居て良かった。
それは私だけじゃなく他の皆も同じように思っている。
友達や好きな人が居れば強くなれる。
でも、失うのは嫌だ。
小倉さんや飯田君達の気持ちは分かるよ。
だから私は樹梨ちゃんを失わないようにしたい。
それに私達に協力してくれる船戸君も守りたい。
その上で、平本君を見つけ出したい。
彼が一番心細いはずだから。
何処に居ても必ず見つけ出す。
だから、私も強くならなきゃ。
「序に船戸はお世話になっているから困っていたら助けようとは思うけどね・・・。」
小さく呟いた樹梨ちゃんの声は私の耳にもはっきりと聞こえた。
正直じゃないんだから。
これは後で聞いた話。
英君達が大臣に抗議へ行ったらしい。
彼らは元の世界へ帰してもらうための直談判をしたけど却下された。
「お取込み中すみません!お時間よろしいでしょうか!?」
英君を始め北山君達五人が続いて大臣のいる場所へ足を運んだ。
従来ならアポイントメントを取らないといけないけど、今回は許された。
「どうしたんだね、勇者諸君?」
「今回の邪神討伐により世界が平和になったと思います。なので僕達を元の世界へ帰して頂けないでしょうか!?」
英君に大臣は溜息を吐いて間を置いた。
「平和になった?何を言っているんだね?この国は、世界は平和になってはいないよ。」
静かに答える大臣に英君達は愕然とした。
「はぁっ!?何言ってるの!あんたらの言う通りに邪神とかいう奴も倒したじゃないの!これで平和になったでしょ!?」
菊池さんが怒声を響かせるも大臣は冷静だ。
「そうよ!こっちはクラスメイトから犠牲者も出てるんだし!いい加減帰してよ!」
「まさか約束を反故にするとか?」
若山さんと海賀君も加わる中、大臣は呆れた様子だったらしい。
「勇者達。この国も世界も平和になっていなければ約束を保護にしたつもりもない。まだ勇者諸君の力は必要だ。」
その言葉に英君も動揺を隠せない。
「どういうことですか!?邪神以上にまだ何かいるんですか!?俺達はそんな話は聞いてませんよ!」
「問題は常に起こります。少なくともサンデル王国を脅かす他国が居る限り、永遠に。」
それを聞いた北山君が動いた。
「ふざけんな!そんな話、後から幾らでも出てくるだろ!そこまで付き合えるか!」
北山君が前に出ると大臣は北山君に言い放った。
「我らサンデル王国の為に働け。これだけは拒否するな!」
「ふざけんな!誰がっ!?」
大臣の言葉に反論しようとした北山君が首を抑えて膝が崩れた。
「どうした洋成!?」
異変を感じた英君が駆け寄ると北山君が苦しそうにしている。
「おい!洋成に何をした!?」
剣幕を露わに英君は大臣に詰め寄ろうとした。
「何をしたわけではない。」
「だったら!?」
掴みかかろうとした英君の右手に冷たく無機質な左手が現れた。
それは鈍く光る鉄の甲冑を纏ったホロアムズだ。
音もなく一瞬でその場に現れたホロアムズは英君を地面に伏せて取り押さえた。
かなり強いのか英君が藻掻いてもビクともしなかったらしい。
「勇者諸君に拒否権はない。」
もう一度言う大臣に何をしたのかも分からず菊池さん達は静かになったらしい。
それでも苦しそうにしていた北山君へ堂本さんは駆け寄り魔法を施した。
「ヒール!」
だけど苦しさは緩和されず、焦っていた。
「ミノリ、あなたの魔法ではそれはどうにもならない。暫くしたら落ち着く。」
「どうして北山君がこんな目に!?」
「逆らおうとしたからだ。勇者達は絶対に逆らってはいけない。従順に従ってくれればいつかは元の世界へ帰すことも出来よう・・・。」
大臣は次の仕事に入るから出て行けと言い、ホロアムズによって室外に出されたそうだ。
それ以上抗議しなかったのは多分良かったのかもしれない。
北山君も数分で落ち着いたみたいで彼らはそれに関しては安心したみたい。
「なにこれ!?意味わかんない!?」
菊池さんはかなり荒れていたらしい。
他の人達も似たような思いを抱いていたはず。
だけど、反発するともっと危険な目に遭うかもしれない。
そう思って彼らはその場を立ち去った。
「すまない。ちゃんと言葉にすれば分かって貰えたかもしれないのに・・・。」
「そんなことはないだろう。それ以前の問題だ。北山の症状は召喚された時に組み込まれた魔法の一種かも知れない・・・。」
「それって私達は奴隷にされたって事?」
「それに近いな。と言っても分かっているのは逆らうと北山の二の舞になるって事くらいだな。」
海賀君の推論に全員が納得したけど根本的な解決にはならない。
「一先ず、俺達は大人しくしないといけないな。苦しくなる以外にも何かあると大変だ。」
「先にぶっ飛ばせばいいでしょ、あんな奴ら。」
菊池さんの発言に全員が青くなる。
「それは流石にやっちゃダメだよ!」
「未梨亜の能力ならできそうだけどさっき雄人が言ったんだから!」
堂本さんと若山さんが何とか落ち着かせて収まったらしいけど状況は変わらない。
寧ろ私達を縛る何かが明らかになってより行動が制限されてしまったのかもしれない。
ただ、その拘束も何かしらの抜け道があると良いんだけど。
この話は彼らを中心に全員が知ることになり、以前よりも兵士達の見る目が鋭くなっていると誰かが言っていた。
ただ、それはもしかしたら自分達が一方的に見えているだけかもしれない。
それでも死ぬことになったら目も当てられないから前よりも慎重な行動を心がける人が居そうだ。
英君達の話を聞いた後で私の能力を使って樹梨ちゃんの首元を視ると確かに首周りに白い魔力が纏っていた。
それを掴もうとしても掴めず、解くことは出来ない。
私も樹梨ちゃんも普段の状態では認識できないから海賀君の推論は正しいのかもしれない。
それを裏付けるかのように私の能力で今回認識できるようになったのは最初の頃よりも能力が向上して、より扱えるようになったのかもしれない。
もし、この能力をちゃんと使えるようになったら或いは・・・。
現状でただ一つ言えるのは、『首輪』を掛けられた私達はサンデル王国に従うしかなかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
不定期更新ですが時間のある時に読んでいただければ幸いです。
次回はシンゴ・ヒラモトの話を何話か投稿する予定です。
補足・蛇足
邪神
大陸の人々に仇名す存在。
魔王同様にモンスターを生み出して各地で暴れさせるが、魔王よりも強く恐ろしい。
外観は昆虫をベースに継ぎ接ぎしたような姿である。
過去に何度か降臨した記録があるらしいが、明確に残っている資料は存在しない。
また、邪神が降臨する目的も不明である。




