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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
奪われる弱者
28/131

28話 ありがちな冒険 ―シンゴ・ヒラモト―

今までの各話で誤字脱字の指摘をしていただきありがとうございます。

出さないよう気を付けて行きたいと思います。

(あればお手数ですがご指摘のほどお願いします)

そして、本日もよろしくお願いします。


シンゴ・ヒラモトのあらすじ

森で遭遇した少年と入れ替わった元少女は新しくシンゴ・ヒラモトとして冒険者になって謳歌している。

 ある町の冒険者ギルド。

 夕方の時間は仕事終わりの冒険者達が食堂で飲み食いをし始めて賑やかな時間帯だ。

 そのカウンター席の隅に一組の男女が談笑していた。

 一人はシンゴ、もう一人はジェーン。

 青みがかった黒髪と瞳を持つ彼の身形はシャツとハーフパンツの上に革鎧、膝当て、背嚢、嘗て英雄が使っていた剣ジャクバウン。

 縮れたダークブラウンのショートボブに褐色の肌を持つ彼女は革の胸当てに洋紅色の肌着、左側にスリットの入った紺碧色のミニスカート、腰には汚れた背嚢を巻いて右腰に短剣を吊るしている。


 「おめでとうシンゴ!」


 「ありがとうジェーン!」


 二人は木製のジョッキでエールを乾杯して一気に呷った。

 いい飲みっぷりでジョッキの半分が無くなった。

 シンゴがこの町に来てから約一月が経っていた。

 その間にジェーンと二人で切磋琢磨して生計を立てている。


 「あっという間に等級が上がっちゃったね。」


 「それはジェーンが居たからだよ。俺だけじゃここまで来れなかったし。」


 「私も同じよ。シンゴが居なかったら生きているか分からないし昇級だって出来ていたか。五つの等級の内、緑の等級になれた時は嬉しかったけど、それ以上にシンゴは一月で昇級したんだから驚きよ!」


 彼らは町の酒場で冒険者の昇級祝いをしているらしい。

 冒険者の等級は下から無色、黄、緑、赤、青と定められており、配布される金属製のプレートに色が刻まれるようになっている。


 「今後はどうしたいの?」


 赤らめた顔でジェーンはシンゴを見つめた。

 その姿は食堂の灯りによって妖艶に感じるほど。


 「そうだな、色々な場所を見て回りたい。数日中には別の町に行ってみたいと思うんだけど、どうかな?」


 「良いと思うわ。シンゴが行くなら私も一緒に行きたいわ!」


 「ありがとうジェーン。そう言えばこの国の地図ってあるんだっけ?」


 「地図?お店では扱ってないわね。明日冒険者ギルドで聞いてみましょう。」


 ジェーンからはあの町は良くてこの町はダメだという話が何度も出てはシンゴが頷いた。

 食堂の喧騒のピークに達する時間帯、テーブル席もカウンター席も埋まっており次の客が待っている状態になった。

 ジェーンは余ほど嬉しいのかいつもより多めにエールを呷っていた。

 完全に酔った彼女をシンゴは代金を払ってから担いでお暇した。

 喧騒を後にして外に出れば星空が広がる夜が見える。

 お馴染みに宿屋へ送れば店の旦那から労いの言葉を貰い、ジェーンを部屋に置いて自室に帰る。

 シンゴも同じ宿の隣室だ。

 連立した空き部屋が出来た時に二人が抑えて現在も使っていた。

 冒険者に限らないが家族や仲間であれば近くに部屋を取りたいと言う事だろう。

 シンゴも自室で腰を落ち着かせた。


 「色々あるなぁ・・・。」


 平本慎吾の体になってから一月ほどしか経っていないが毎日をジェーンと命懸けで過ごしてあっという間だった。

 奴隷になる未来しかなかった嘗ての彼女からすれば自由を手に入れられたと両手放しで喜んだ。

 それに共にいて楽しい女性がいるだけで心がときめいている。

 この気持ちを嘗ての少女は知らなかったが平本慎吾の記憶が教えてくれた。

 これが一目惚れで恋をして愛しているのだと。


 「絶対に守り抜いてやる・・・。」


 部屋の窓から夜空を見上げる顔は決意に満ちていた。




 翌日から二人は冒険者ギルドで国内の地図を確認しつつ日帰りできる依頼を受け、その合間に旅に必要な物を用意した。

 その甲斐あって予定の日に町を出ることにしたようだ。


 「一月ほどだったけど寂しいな。」


 「そうね、だけど冒険するのが冒険者だから一か所に留まる必要もないと思うわ。」


 依頼を兼ねて朝一に出る商人の馬車に護衛として旅立つ。

 彼らにとって初めての護衛だが、その顔に不安はない。


 「今日から数日はよろしく頼むよ。」


 「こちらこそ、よろしく。」


 お腹が肥えて髭を蓄えた三十代の男性商人の挨拶もそこそこにシンゴ達の旅が始まった。

 平原、森、大きな川などを超えては野営で夜を過ごした。

 偶に襲ってくる一メートル台のモンスターをシンゴは一刀両断して商人を驚かせ、鹿を発見すればシンゴが小石を投げて倒してからジェーンが解体する。

 今回の旅の道筋は野盗達の縄張りではなかったため、人間の集団に襲われることはなかった。

 大隊予定通りの日数で目的の街に着いてようだ。


 「ここがミールド・・・。」


 石積みの外壁は優に二十メートルは超えているだろう。

 外壁の上は兵士達が防衛するための通路もあるらしく、何人かが待機していた。

 城門は幅と高さが大体五メートル前後あり、脇に検問所も設置してある。

 既に列が出来ており直ぐには入れなさそうだ。


 「ここがムンドラ王国で三番目に大きいと言われる街だ。中も町とは似ているようで違うところもあるから楽しめると思うよ。」


 ムンドラ王国の南東に位置する街はフレイメス帝国や東にある獣人達が中心で築いたゴルダ連合国に近く、国交もあるためそれらの国との物流拠点にもなっている。

 無事に検問を通過してミールドの冒険者ギルドで依頼遂行の手続きを終えた。


 「二人とも、助かった。ありがとう!」


 「こちらこそありがとう!」


 シンゴ達は男性商人と別れ、宿を探した。

 以前の町よりも大きいためか宿屋も多くあり、値段の幅も大きかった。

 シンゴにしても駆け出しの冒険者の部類に入るため報酬の少ない依頼しか受けられないがそれ相応の宿屋食事処もあるため彼らはそう言った場所を見つけて利用することにしたようだ。

 昼下がり、二人は宿屋で腰を落ち着け話し合った。


 「今日はどうする?」


 「街を見て回ろう。武器屋とか道具屋の場所も知りたいし。」


 「いいよ、早速行こう!」


 初めての街にはしゃぐジェーンの手を繋いでシンゴも初めて見る景色に胸を躍らせた。

 町の建物はそれぞれに間隔を空けており高さも平屋と二階建てばかりだった。

 それに対してこの街は建物の間隔は狭く、空いているのは通路になっている場所か一つの建物が大きいか。

 それらの建物も街中は二階建てが中心で中には三階建てが集中している場所もあった。

 現在シンゴ達が歩いている場所は居住区と言われる場所で大半は出稼ぎ労働者達が寝泊まりしている場所である。

 シンゴ達が泊る予定の宿屋は冒険者用に整備された冒険者専用区で冒険者に必要な環境は大体揃っている。

 彼らは目的もなく散歩するようだ。

 無機質で日の光が届きにくい居住区を抜けると商業区と言われる場所に出た。

 先程の男性商人もここで仕事をしたり寝泊まりするだろう。

 基本的には永住権を持つ商人や一時的に訪れた商人達が店を構えている区画だが一般人向けの商品もあればそうでないものも扱われている。

 それに商談をする場合も隠密性の高い建物があったりと商人でしか知りえない彼らのための区画でもあった。

 また、貴族も利用する場所であるため商業区の中でも貴族専用の区画も別に設けられている。


 「見て見て!これとか可愛いんだけど!」


 ジェーンが指すのは一般人向けの露店に並べてあるアクセサリー。

 銀色の縁に赤い宝石が埋め込まれたシンプルなネックレスだ。


 「そうだね。これとかもいいんじゃないか?」


 シンゴが選ぶのはブロンズの花をあしらった緑の宝石が埋め込まれたネックレス。


 「これもありかぁ。あ、これもいいかも!」


 「好きなのがたくさんあるね。」


 基本的には装飾品や衣類を見て興奮するジェーンにシンゴが付き合う。

 ガラス越しに飾ってあればウィンドウショッピングと言われる状態だ。

 あれこれ買えない彼らの今日は冷やかしだけで終わるが商人達は百も承知でシンゴ達を気にする素振りすらなかった。

 帰りに冒険者専用区で冒険に必要な道具等を買い足して安い食堂で夕飯を食べて一緒のベッドで横になった。

 今回一緒のベッドで寝る理由は費用削減だそうだ。

 泊まる宿には一部屋に男女が利用しても構わないと許可も貰っている。

 楽しくて燥いだ彼らはぐっすりと寝入った。

 



 翌日から数日間、シンゴ達はミールドの冒険者ギルドで活動登録をして依頼を受けては達成した。

 基本的にはモンスターの討伐を選んでいたがシンゴにとってはどれも一撃で倒せる相手であり苦労することはなかった。

 倒したモンスターをジェーンと二人で解体して一部を持ち帰って資金に変える。

 そうして彼らは少しずつ懐を潤わせ始めた。

 勿論ジェーン自身も討伐できる相手は一人で倒し、シンゴには出来ないことを率先して行った。


 「やっぱりシンゴは強いね!」


 「いや、ジェーンが手伝ってくれるから。いつもありがとう。」


 「もう、シンゴったら!」


 照れ隠しにジェーンに背中を叩かれるがシンゴはビクともしない。


 「本当だってば。」


 安い食堂の二人用のテーブルで昇格祝いの晩餐を食べる二人の気分は上々。

 いつもの二倍はある大きなローストされた肉に葉物野菜のサラダ、木製ジョッキに並々注がれたエール。


 「それにシンゴはまた昇格したね!凄いよ!」


 「そうかな?」


 「そうだよ!次の依頼はもっと凄いのを受けられるよ。」


 「それなら明日は休養にしよう。明後日から依頼を受けても問題なさそうだし。」


 「分かったわ!」


 前回の昇級からまだ一月も経っていないがシンゴは冒険者ギルドの昇格審査に通って無事にクラスを上げたらしい。

 以前いた町よりもミールドの町は規模が大きいことや討伐対象のモンスターが比較的強いこともありシンゴ達が短期間で幾つも討伐したことで審査の加点になったかもしれない。

 異例の速さで駆けあがっているシンゴだが、冒険者ギルドでは審査の話を公にしないためシンゴの凄さが直ぐに伝わることはない。

 もし、伝わるのであれば職員か本人が周囲へ話し出すときだろう。

 夕食を楽しんだ二人は熱い夜を過ごし、翌日は昼過ぎまで惰眠を貪った。

 更に翌日、朝日が眩しい一日の始まり。

 二人は意気揚々と冒険者ギルドに入った。

 朝の時間は多くの冒険者達が集まって依頼を吟味して仲間を募り依頼を受ける。

 それはシンゴ達が以前いた町もそうだがミールドは冒険者ギルドの建物の大きさは何倍も大きい分、冒険者達も相応に集まっていた。

 その喧噪に二人は慣れたもので人混みを掻い潜って依頼表を眺める。


 「昨日調べた上であの討伐依頼を受けたいけどいい?」


 「シンゴがいいなら。」


 壁に貼ってある多くの依頼表から一枚選んで受付に持っていく。

 シンゴ達が並んだ直後に後ろへ次々と並びだす冒険者達。

 少しでも早く選んで受付を済ませれば依頼に割ける時間は増える。

 だから朝から混雑になる。

 シンゴ達の列も進み、あと一組になった。

 その一組は全員男で見た目の年齢は若いと十八歳、年上でも二十代後半だろう。

 軽装備の男は弓矢とナイフを装備、重装備は金属製の鎧に大きな盾と腰に帯剣している。

 他にはロングソードを帯剣した男、杖を握ったローブ姿の男、一番の軽装備で武器はナイフを腰や太腿に巻き付けた男。

 五人全員が異なる役割を持つパーティーのようだ。

 彼らの手続きが終わったあと、シンゴ達の番になり依頼表を見せた。


 「これを受けるのですか?」


 「そうですが。」


 訝し気に見る男性受付員にシンゴは素直に答えた。

 シンゴ達が選んだのはモンスターの討伐。

 ロフォラティグと言うネコ科に似た姿で体長二メートル、緑の体毛に茶色の顔、首周りに赤い触手が特徴だ。


 「必要等級は緑ですが・・・。」


 「これでどうですか?」


 先日取得したクラスの証を見せると男性受付員は二度三度見直した。


 「失礼しました・・・。それでは確認させていただきます。」


 冒険者ギルドでは情報共有されているはずだが全員が目を通しているわけではないらしい。

 手続きに入り始めたところで後ろの集団からシンゴ達に声が掛かった。


 「おいおい、クラスを上げたばかりでそいつに挑もうなんて凄い奴かバカみたいなやつだな!」


 シンゴ達が背後を見ると三十代に見える上半身裸で臭いが漂う男戦士が腕を組んで笑っていた。

 男性受付員もその様子に見入っているがシンゴが先を促した。

 慌てて手続きを終えた男性受付員から依頼表を受け取ってジェーンと一緒に立ち去る。

 何人もの冒険者達が彼らの様子を観てひそひそと話していた。

 外に出れば様々な冒険者達の往来する景色が広がる。


 「何よあいつ!」


 「あんな人達は気にしない方がいいよ。」


 愚痴を零すジェーンにシンゴは手を引っ張り北の森へ向かった。

 検問所は四方にあるため目的の方向に近い検問所を利用して出入りできる。

 冒険者の場合は冒険者ギルドが発行する証を見せれば簡易手続きで済む。

 二人は足早に検問所を抜けて北の森に入った。

 陽光も地面に届く森だが先が分からない。

 この森に於いて、お互いに距離が離れたら人影程度にしか認識できなくなるだろう。


 「ねぇ、シンゴ。誰かつけてきてるけど・・・。」


 「さっきの人達かも。面倒だよね。」


 「本当にそうよ。最悪な気分。」


 二人は小声で相談するとジェーンは茂みの多い場所に身を潜めてシンゴだけ適当に歩いたら来た道を戻った。

 するとシンゴの前に先ほどの男戦士とその仲間が現れた。


 「おいおい、どうしたさっきの坊や。嬢ちゃんは一緒じゃないのか?」


 「さぁてね。」


 「惚けるんじゃねえぞ!?」


 男戦士は怒鳴り声を上げた。

 普通の少年なら縮こまったかも知れない。

 しかし、シンゴは堂々と相手の怒号を受け流した。


 「惚けるとかじゃないですけど。それで、俺達に何のようですか?」


 「用って程じゃない。俺達はお前達みたいな新人を助けようと思ってきたんだよ。」


 尤もらしいことを言って攻撃の意思がないことを示す男戦士。


 「心配しないでください。俺達なら大丈夫です。何かあってもあなた達のせいじゃありません。」


 「そう言うなよ坊や。俺達が手伝ってやるからよぉ。」


 男戦士以外にこの場に居るのは男三人。

 二人はどちらも革鎧の軽装備に一人は片手直剣に円盾、もう一人は槍を握っている。

 残りの一人はカーキ色の古びたローブを羽織って木製の杖を握っている。

 男戦士は当人の体に匹敵する大きさの斧を担いでいる。


 「手伝いは不要です。」


 「つれないことを言うなよなぁ?」


 男戦士が伸ばす手をシンゴは一歩引いて躱した。


 「それでは失礼します。」


 シンゴは背後に振り返って即座に走り去った。


 「ちっ!生意気なガキだな!」


 シンゴが去った後に男戦士が悪態を吐くのに他の面々も同意した。


 「どうする?」


 円盾を持つ男が訊ねると怒りを滲ませる男戦士は一喝した。


 「決まってるだろ!追うんだよ!」


 シンゴの姿が見えなくなる前に彼らは動き始めた。

 森の中を走るシンゴは後ろから追いかけてくる集団に気が付くと右へ左へと走り始めた。

 追いかける集団もベテランの冒険者、森を走るのにも慣れているようだ。

 しかし、年齢に反比例して体力が少ないのか段々追いつかなくなる。

 一方のシンゴは涼しい顔をして走り続けている。


 「意外としつこいなぁ・・・。」


 呆れて後ろを振り返ると三人が走ってきている。

 男戦士、槍男、男魔法使い。

 円盾男は逸れたのか?


 「何時までも追いかけられたくないな。」


 シンゴは正直言えば適当に撒いて依頼に集中したいと思うが、男戦士達も冒険者、獲物を仕留めるための執念はあるようだ。


 「こんなことで執念深くなるなよ・・・。」


 何故、これ程までに追い詰めようとしているのか判然としないがシンゴはジェーンが隠れている場所から一度離れるように走り続けた。

 遠目から複数の人影を眺めるのは茂みに隠れたジェーン。


 「大丈夫かな・・・。」


 シンゴを心配しつつ彼が戻ってくるのを待っているのだろう。

 別れる時の会話はジェーンが人質になった時が最悪なパターンだと言い、シンゴが囮になることで男戦士達を撒いて合流する手はずになっている。

 周囲には誰もいない。

 一度立ち上がったジェーンは再度周囲を見て、耳を澄ますが近くに人の気配がない。

 安心しつつも彼女は再び茂みに隠れた。


 「私だけだとロフォラティグを倒せないからなぁ。」


 彼らが受けた依頼はシンゴが倒す前提。

 ジェーンはシンゴを援護する役回り。

 彼女自身、戦うことに関しては強くないと自覚しているから納得している。

 ただ、彼女も冒険者である以上そのままで良いとは思わず、日々強くなろうと特訓をしている。

 一朝一夕で強くなれるわけではない、それでもシンゴの隣にいるために彼女も密かに決意を固めた。

 それと状況に応じて足手纏いにならないための行動も意識し始めたのが今回の身を潜めることだ。


 「本当は私も戦えると良いんだけど・・・。」


 ベテラン冒険者に勝てるほど甘くないのも認識して気落ちするもシンゴの帰還を信じて待つようだ。

 この時、彼女はもっと周囲を気にするべきだったのかもしれないが・・・。




 逃げるシンゴはそろそろ加速して逃げようかと思案していた。

 実際、あれから凡そ二キロメートルは走り続けていた。

 シンゴを追う三人の男達も今だに距離を維持していた。

 あまり離れるとジェーンと合流するのにも苦労すると思ったシンゴが右へ曲がって加速しようとした時。

 後ろから悲鳴が上がった。


 「うわぁぁぁぁ!?」


 「おいっ!?」


 「ロフォラティグ!?」


 後ろを振り返ると依頼書のイラストで見た特徴と大体同じように見える。

 シンゴから見ると後ろ姿だから確実とは言えなさそうだが、男魔法使いが叫んだ名前が同じだから間違いないのだろう。

 三人の男達は冒険者、いきなり出現したモンスター相手に対して驚きながらも各々武器を構えて出方を窺いう。


 「おい坊や!お前も加勢しろ!」


 救援を求める男戦士にシンゴは動じる様子はない。

 彼の目の前には討伐対象がいる。

 逡巡してから口を開いた。


 「仲間が心配なので先に合流します。それにベテランの方達と直ぐに連携は取れませんし俺が参加すれば足を引っ張りそうなので先を急ぎます。」


 尤もらしいことを言いつつ平然とその場を後にした。


 「おいクソガキ!」


 男戦士の声を気にせずシンゴは予定通りに右に曲がった。


 「どうせ倒したら色々言って俺達を言いなりにでもするんだろ?そうじゃなくても囲えばどうとでもなるとか思っていそうだ。」


 シンゴは森の中を走るが時々不自然な軌道で進む。

 木々や茂みなど障害物はあれど何もないところで右へ行ったり左へ行ったりと傍から見ると迷走しているようだ。

 それでも彼の顔には迷いがない。

 そのまま走り続けた彼がペースを落として始めた。


 「ここらへんだよな?」


 周辺を見回すが何の気配もなさそうだ。

 近くの茂みを何か所か探すも誰もいない。


 「まさか・・・。」


 彼が探しているのは隠れているはずのジェーン。

 しかし、探し人は何処にもいない。

 似たような景色が存在する森の中なら違う場所だと思い、探しに行くが彼らは別れ際に決めたことがもう一つあった。

 それはジェーンが隠れた周辺の木々の根元に傷をつけること。

 一見すればなんてことはないが、注意してみれば印となる。

 それに近づけばジェーンが姿を現すはず。

 シンゴは既にこの場で印を見つけておりジェーンが居たことを確信していた。

 だが、当人が何処にもいない。


 「捕まった?」


 未来の予測が出来ても過去の光景は見られない。

 改めて足元を見ると地面や雑草に足跡が幾つも見られた。

 恐らく姿を晦ました円盾の男が連れ去ったのかもしれない。

 凡その方角に当たりをつけて走り出す。

 暫く走ると物音が激しくなっていた。


 「きゃああああ!?」


 この声は恐らくジェーンのものだろう。

 シンゴは急いで声のする方へ駆け抜けた。

 木々を避け、根っこや茂みを飛び越えるとその先には男戦士達四人と抱えられたジェーン、彼らに対峙するロフォラティグがいた。


 「galllll!」


 ロフォラティグが彼らに襲い掛かる。

 彼等とシンゴの距離は凡そ二百メートル。

 シンゴは【フォーチュンダイアグラム】で可能性を視た。


 >急いで駆けつける

 >ロフォラティグに円盾の男がジェーンを突き飛ばす

 >ロフォラティグが目の前のジェーンを襲う


 これを見てすぐさま違う行動に移った場合を視た。

 

 >シンゴがロフォラティグに叫ぶ

 >男戦士達は反応する

 >ロフォラティグはそのまま円盾の男とジェーンを襲う

 

 これもジェーンを助けられない結果だ。

 シンゴは腰に吊るしたジャクバウンの特性を思い出し、それを引き抜いた。

 ロフォラティグが飛んだ。

 円盾の男がジェーンを突き放した。


 「ジェーン、伏せろ!」


 シンゴが叫ぶとジェーンは涙目になりながらも指示に従い直ぐにその場に伏した。

 それと同時にジャクバウンに大量の魔力が瞬時に込められながら右下から左上に向かって斬り払い。

 普通の剣なら届かない距離だがジャクバウンは魔力を込めた分だけ青いオーラの刀身を伸ばして斬撃となる。

 二百メートルほどの距離から一気に伸びたジャクバウンの刀身がロフォラティグの体を二つに分けた。


 「!?」


 斬られた上半身は驚愕の表情を浮かべたまま男戦士達四人に向かって飛び込んだ。

 下半身はジェーンの後ろにドスッと落ちて動かなくなった。


 「「「「うわあああああ!?」」」」


 驚く男達を尻目にシンゴは急いだ。


 「ジェーンこっちに来い!」


 「う、うん!」


 体に力を込めたジェーンは体を起こしてシンゴの元に走る。

 まだ死に切れていないロフォラティグの上半身が男戦士達を襲うが男戦士は逃げ出すジェーンを見て円盾の男に命令する。


 「おい、あいつを捕まえろ!」


 「お、おう!」


 慌てながらも円盾の男は再びジェーンを掴まえようと追いかける。

 距離を縮めるシンゴだが円盾の男を見て舌打ちをする。


 「もう一度!」


 「!」


 シンゴが叫ぶとジェーンの表情に緊張が浮かぶも意図を察したのか上体を前に屈めながら走った。

 その意図に気づかない円盾の男はもう数メートル程で追いつくと確信して走り続けたその時。

 彼に向かって青いオーラの刀身が飛んできた。

 ギリギリ見極められる速度で飛んできたから彼は咄嗟に右に避けた。


 「左に行け!」


 シンゴの声にジェーンが従い刀身よりも左側に大きく動いて軌道を変えた。

 慌てた円盾の男はジャクバウンの刀身を潜ろうとしたが直ぐに刀身の位置を変えられた。

 これで容易に近づけなくなった円盾の男はジェーンとの距離が離れていく。

 ジェーンも少し回りながらシンゴの近くに辿り着いた。


 「まだ警戒して!」


 「う、うん!」


 呼吸を整えるがジェーンはかなり汗だくだ。

 その隙に円盾の男も近づいてきた。


 「その子を渡して、くれ。」


 息も絶え絶えな円盾の男の言葉にシンゴが激怒する。


 「ふざけるな!なんで大事な仲間を渡さなきゃいけないんだ!?俺達は何もしてないだろ!?」


 「そう・・・だな。お前達は悪くないな。けど、言う事を・・・・聞いてくれなきゃ俺が酷い目に遭うんだ。助けてくれ。」


 懇願する円盾の男にシンゴもジェーンもウンザリしている。

 ジャクバウンを構えたシンゴに円盾の男の顔は恐怖に染まる。


 「ま、待て!ここで冒険者を殺したらお前達は犯罪者になるぞ!」


 その言葉にジェーンが驚くがシンゴは無表情だ。


 「その前にあんたらはジェーンを攫っただけじゃなくモンスターに突き出したじゃないか?それだって同じだろ?」


 怒りを内包しながら冷たい視線を送るシンゴに円盾の男は狼狽するがその後ろから男戦士達三人が駆けつけた。

 ロフォラティグの上半身は三人の手によって沈められたようだ。


 「おいおい坊や。暴力に訴えるのは良くないぜ。俺達はお前達を手伝ってやるって言っただろう?だから先に嬢ちゃんを見つけて手伝おうとしたじゃないか?」


 「嘘つけ。話を誤魔化すなよ。俺達が拒否したのにも関わらず申し出るのはマナー違反だろ?」


 「そんなのは知らないな。これだって善意だ。さっきお前はロフォラティグを倒しただろ?俺達が囮になったおかげだ、違うか?」


 「違うね。そんなことをしなくても俺達は問題がなかった。それよりもあんたたちの目的を教えろよ。それによっては考えなくもない。」


 明らかにストレスが溜まっているシンゴだが彼を気にせず男戦士が笑い出した。


 「手伝ってやるのは本当だ。それで依頼を達成できるなら良いだろ?」


 「その後は?見返りはなくてもいいのかよ?」


 「俺達としてはその武器に興味があってな?出来たらちょっと触らせて欲しいんだ。なに、戦う人間としてはその珍しい剣には興味が出てきてな。」


 ジャクバウンは鞘に収まっているとは言え柄のデザインはシンプルながら今の時代では見ることのないものだと言う。

 興味本位な話は他の冒険者も同じだろう。


 「この武器は俺にしか扱えない。俺以外が触ろうとすると怪我をするんだ。」


 シンゴの後ろでこくりと頷くジェーン。

 彼女も最初の頃にジャクバウンを触ろうとしたら見えない何かに弾かれたことがあった。


 「ははぁ、大事な武器は触らせたくないって言うのは分かるぜ?だがな、触るくらいなら良いだろう?」


 少しずつ距離を詰める男達に対してシンゴ達も同じだけ距離を取る。


 「それにそこの嬢ちゃんとも夜にちょっと相手して欲しんだよなぁ?」


 先程からシンゴ以外の男達はジェーンの胸を中心に舐めるように見ていた。

 腕で庇うジェーンも警戒して当然だろう。


 「どの提案もお断りだ。俺達は俺達だけで仕事をする。あんた達の手伝いはいらない。」


 「なら俺達の仲間になれよ!そうすればもっと仕事をしやすくなるぞ!」


 「しつこいんだよ!いい加減にしてくれ!」


 遂にシンゴが怒りをぶちまけた。

 男戦士達は一斉に笑い出したが直ぐに止まった。


 「ガキが粋がってんじゃねーよ!俺達の言うことを素直に聞けばいいんだよ!」


 男戦士も怒り出し斧を肩に担ぎあげた。

 男魔法使いは数メートル距離を取って杖を構え、男槍使いはその場で槍を構え、円盾の男は円盾を前に突き出した。


 「最後に一つだけ。」


 シンゴが静かに告げる。


 「後ろに気を付けた方がいいよ?」


 「何言ってるんだ?」


 男戦士は気にしない。


 「女は傷つけるなよ!男は殺せ!」


 その怒声に男達は動くがシンゴはジェーンの手を引っ張りその場を離れる。

 シンゴ達を追いかけようとする男達だが男魔法使いの絶叫が響いた。


 「うわあああああああああ!?」

 男戦士達が振り返るといつの間にかロフォラティグが男魔法使いを頭から噛み付いていた。

 その光景に三人が釘付けになるが男槍使いと円盾の男が急いで武器で叩きつけた。

 叩かれたことで男魔法使いを吐き出したロフォラティグは円盾の男を前脚で突き飛ばし、男槍使いに襲い掛かった。

 近づく相手に男槍使いは槍を手元に引いて突き出すがロフォラティグは寸でのところで右に避けつつ首周りの触手を槍に絡めた。


 「嘘だろ!?」


 初めて見るのか動揺する男槍使いにロフォラティグの顎が大きく開かれた。

 その直前にロフォラティグの斧が頭部に振り下ろされる。

 衝撃と共に真下に沈むロフォラティグだがまだ生きている様だ。

 体を起こして後ろに引こうとするが男戦士の斧による一撃がロフォラティグを襲った。

 ロフォラティグの頭蓋骨が完全に割れて息絶えた。

 その光景に体を起こした円盾の男と男槍使いは安堵するが傍らにいた男魔法使いの姿に絶句する。

 血だらけにはなっているがまだ息はあるようだ。


 「くそ!あのガキども!絶対捕まえてやる!」


 「それよりもこいつを直さないと!」


 円盾の男が背嚢から瓶詰のポーションを取り出して半分飲ませたり傷口に振りかけるが直ぐには回復しない。


 「そうか、町に戻って報告すればいいじゃないか!あいつらのせいで俺達が窮地に堕ちたんだってな!」


 妙案を思いついた男戦士の言葉に誰も頷かないがそのまま帰ろうと言う言葉に全員が従う。

 傷付いた男魔法使いを円盾の男が肩を貸すが普段よりも足取りは遅い。

 その場から数歩動いたところで何かの呼吸がはっきりと聞こえた。

 彼らが振り返ると別のロフォラティグが駆け寄って襲い掛かってきた。


 「何だよこれ!?」


 流石に狼狽する男戦士達だがモンスターが襲ってくる以上は彼らも戦う他ない。


 「gaw!」


 「glllll!」


 別の方向からロフォラティグが二体現れ男戦士達は恐慌状態になる。


 「クソッたれが!」


 一体に対して三人がかりなら倒せても一人一体になると彼らにも分が悪いようだ。


 「付き合ってられるか!」


 男槍使いがその場を逃げ出した。


 「バカ野郎!俺も死んでたまるか!」


 男戦士も直ぐに逃げ出した。


 「ふざけんなよ!」


 円盾の男は男魔法使いを下ろして迎撃するも触手に絡まれて怯んでしまう。

 逃げ去る二人がその光景を見て安堵しかけたが残り二体は二人を追いかけていた。


 「嘘だろ!?」


 驚愕する二人だが既に距離は詰まった。

 彼らがこの窮地を脱することが出来るのかはまだ分からない・・・。




 森の中を走るのはシンゴとジェーン。

 男戦士達から離れて暫くすると彼らの元にもロフォラティグが襲い掛かってきた。


 「このお香の効果は凄いね。」


 「そろそろ匂い消しを使った方がいいね。」


 彼らの周囲にはロフォラティグの死骸が幾つもあった。

 シンゴが一撃で切り裂きながらジェーンを守る。

 そのジェーンは手元のお香袋の口を閉めて背嚢から別の袋を取り出した。

 その袋の口を開けると鼻を摘まみたい匂いが広がった。


 「これ、臭い・・・。」


 「暫くすると匂いが打ち消し合うって言ってたから。我慢するしかないね。」


 シンゴの背後から飛び掛かるロフォラティグを振り向きざまにジャクバウンを振り上げると左右にスッパリと綺麗に別れて地面に落ちた。

 そのあと五体ほどが襲い掛かってきたがそれ以降ぱったりと止み、彼らの周囲に積み上がる死骸の数は全部で二十匹となった。


 「これ、全部捌くんだよね?」


 「・・・そうだね。」


 予想以上の数だったのかジェーンは目の前の光景に引き、シンゴも日が暮れるのを覚悟するのであった。

 ナイフでロフォラティグの皮を剥ぐ。

 それが今回の依頼の達成を示す物品であり証拠として扱われる。

 今回の討伐依頼は最低一匹でも問題ないが、この森で繁殖力の高いモンスターとして有名であり現在推奨される討伐依頼の一つでもある。

 そして等級が緑から引き受けられるも普通の冒険者なら一人で倒せる相手ではない。

 それは単純に獰猛であり膂力が強く、至近距離なら触手で動きを止められると言う厄介さもあるからだ。

 だから集団で倒すのがセオリーだが、倒した後に使える部位が牙と皮くらいで皮でないと討伐は認められずその皮を剥ぐのにも時間が掛かる。

 一方で普段は森の奥に居るから探すのに手間も掛かるがお香を使えば短時間で遭遇できるのはベテラン冒険者の間では知られている。

 今回シンゴ達も何人かのベテラン冒険者に情報を買って事前にお香と匂い消しを準備してきた。

 お香を広げたままだと体に匂いが付いたままになり、その状態だと常にロフォラティグに狙われる。

 それを防ぐために匂いの成分を打ち消す別のお香を利用することもベテラン冒険者なら知っている。

 彼らがそれを利用してロフォラティグの討伐をしないのは割に合わないから、ベテランでも徒党を組んで倒すから分け前が分割されるし手間も掛かる。

 ベテラン冒険者も嫌がる依頼の一つをシンゴ達が受けたのは討伐依頼の中で他の冒険者達と競合しないこと、二人で十匹くらいなら諸々の費用を差し引いても十分な利益を出せると踏んだからだ。

 皮算用をしたシンゴ達だが予想以上に時間が掛かり月が昇り始めた頃まで掛かってしまった。

 それらの剥いだ皮も重なるとかなり重いが何とかロープで括ってシンゴが背負って運び出した。


 「お、重い・・・。」


 「そんなに運べるシンゴも凄いわ。」


 皮を剥がされたロフォラティグの死骸は放置され、そのまま町に戻った二人を検問所の衛兵達は驚いたが冒険者タグを見せると通してくれた。

 冒険者ギルドはまだやっていたが受付前は閑散としていた。


 「あの、外に来てもらってもいいですか?」


 「はい。」


 ジェーンが受付の女性を呼んで外へ連れ出すとシンゴが膝に手をついて休んでいた。

 そのシンゴの背中にある二十層にも重なった毛皮を見て受付の女性は慄くほどに驚いた。


 「そ、それは?」


 「ロフォラティグの毛皮です。」


 「つまり討伐したと?」


 「はい、間違いなく。」


 「裏手に回ってください。」


 受付の女性はシンゴ達を建物の裏に行くよう促した。

 シンゴ達が建物の裏に行けば大きな倉庫の空いたドアから光が漏れていた。

 中を覗けば何人かがモンスターの部位を精査していた。


 「あの、少しよろしいですか?」


 「おう?」


 一人の若い男性がやってくるとシンゴの背中を見て驚いた。


 「えっと、それは?」


 「ロフォラティグの毛皮。討伐の証拠です。」


 「そっか・・・。じゃあ、こちらで預かるよ。文字を書けるならサインをくれ。」


 毛皮を引き渡して引き渡したことを証明する羊皮紙の証書二枚にサインを書いて一枚をシンゴに渡された。


 「表の受付でそれを見せてくれ。」


 もう一度受付の女性の所へ行って説明すれば女性からは手元の記録とシンゴの持つ依頼書と先程貰った証書を確認されて明日来るように言われたようだ。


 「報酬は明日かよ・・・。」


 「せめて半分くらいは欲しいよね。」


 「確かにどうだな。」


 クタクタになった二人は先日と同じ宿に泊まって疲れを癒した。




 翌日。

 二人は支度して時間を空けてから冒険者ギルドへ訪れた。

 受付前に並ぶ冒険者の数は少なく、あまり待たずにシンゴ達の番になった。

 シンゴ達は昨日の依頼の話を振れば昨日と違う受付の女性が対応して暫く待つ。


 「お待たせしました。」


 シンゴ達が待ちくたびれたと言わんばかりに受付で話を聞き始めた。


 「昨日受けて頂いた依頼とその達成を確認できました。二十匹の討伐を認められたので今回の報酬はこのようになります。」


 出された金額は銀貨が七十枚だった。


 「分かりました。」


 今回の報酬は一匹当たり最低銀貨三枚、状態の良い毛皮なら五枚になり状態の良い物が五匹分あったからだろう。

 報酬を受け取ったシンゴはふと気になることを聞いた。


 「そう言えば昨日、森で冒険者の一団とあったのですが彼らが帰って来たのか分かりますかね?」


 「どのような人達ですかね?」


 名前を知らない男達の特徴を伝えれば受付の女性は思い当たったのか手元の記録を見始めた。


 「彼らはまだ依頼を遂行中になっていますね。」


 「そうですか。帰りは見なかったので気になったのですが・・・。」


 「森の中ならそう言うこともありますよ。それよりもあなたのような冒険者歴の浅い人がロフォラティグを二十匹も討伐するなんて凄いですね!」


 受付の女性は男戦士達の心配はあまりしておらず今回のシンゴ達の活躍に対して純粋に驚いていた。


 「色々教えて貰えたので。」


 「それでも凄いです!それで今日は依頼を受けますか?」


 「いえ、今日は休養日にします。また明日来ますね。」


 「分かりました。良い休日を。」


 シンゴ達は冒険者ギルドを出て目的もなく散策し始めた。


 「あの人達は帰ってきてないってことよね?」


 「そうだね。もし生きていれば今頃俺達にも話が飛んできているし。」


 「そっか。ところで今日は休むの?」


 「うん。流石にね。明日も依頼を受けるかは分からないけど今日はゆっくりしよう。それに投資した以上には稼げたし。」


 「そうだね!そうだ、シンゴ。町の中を歩くための服を買おうよ!血だらけの服だと気になっちゃう。」


 「金額次第だね。それでもいいなら。」


 「いいわよ!寧ろシンゴがいてこそこうやって稼げているし。」


 二人は笑顔で冒険者専用区内の服飾専門店で服選びに興じるのであった。 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

不定期更新ですが時間のある時に見ていただけると幸いです。




蛇足と雑談

冒険者ギルドの等級は異界の勇者のランクと被るのですがこれはこれで分かりにくいものにしてしまいましたが反省はしていませんので了承ください。

(某有名作品のような金や銀でも良さそうだと思いますが皆さんはどうでしょうか?)



※シンゴ・ヒラモトが持つ武器『ジャクバウン』に関する一部の表現を変えました。

物語に影響はありません。


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