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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
奪われる弱者
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19話 心配事

本日もよろしくお願いします。

いつも以上に変則的な行進ですがご了承ください。



 ポーラ達と個々に話した夜、雨はまだ降り止んでいない。

 アルファンの屋敷の書斎、書斎机で作業をするアルファンとローテーブル付近でケイティが佇んでいる。

 部屋の隅と中央、書斎机の傍に灯のついたランプが彼らを照らしている。


 「オリバーとも話したがケイティ、彼らについてお前の話も聞きたい。」


 ケイティは数秒ほど、間を置いて話し始めた。


 「ボビィは、快活で負けん気のある、少年らしい少年ですね。ただ、自己中心的で不満を感じて癇癪を起こすきらいがあります。当初は大人しかったのですが生活に慣れると本来の自分を出すようになったのでしょう。良くも悪くも自分に素直だと思います。」


 「ボビィは国に仕える騎士になりたいと言っていたが。実力はあると思うか?」


 「騎士・・・ですか。戦うことに関しては三人の中では一番ですね。オリバーの方が詳しく話したと思うのですが。ある程度の協調性があれば順調に上り詰めて行けると思います。」


 「ふむ。残りの期間で身に付けられるかどうか、だな。」


 「そうですね。オリバーと共に鍛えて見ます。次にサムですが。勉学に熱心で真面目な性格ですね。最初の頃は引っ込み思案で主張しないこともありましたが今では緩和されています。勉学に関しては文字と計算の基礎は前から教わっていたらしいので三人の中では呑み込みも早いのだと思われます。」


 「なるほどな。それを聞くと文官に適性がありそうだが、サムは宮廷魔導士になりたいそうだ。」


 「そうでしたか・・・。魔法も三人の中では一番上手に扱っていますね。探求心が強いのかもしれません。」


 「そういうことか。ボビィもそうだが騎士にしても宮廷魔導士にしても直ぐになれるわけではない、先ずは私の抱える兵団へ入団してから数年内に城へ送ることにするだろう。」


 「わかりました。そちらはオリバーから伝えた方が良さそうですね。」


 「そうしてくれ。」


 アルファンは書類へ目を通して作業が一段落したのかペンを置いて顔を上げた。


 「あの娘、ポーラはどうだ?」


 「彼女は・・・。最初でこそ男勝りなところが多く見られましたが年相応な少女の部分も多く見られました。こちらに来る前は女の子として扱われていなかったのかもしれません。今のところ特別才能はないと思いますが、それでも人一倍頑張っています。ボビィやサムも奴隷商で引き取った時は恨むような目をしていましたが二人ともそれがなくなっていますが、彼女だけは未だに恨み、憎悪の色が見え隠れしていますね。それが心配でなりません。」


 「やはりそうか・・・。私も同じように感じた。何が彼女をそこまで駆り立てるのか?」


 「そればかりはわかりません。奴隷商へ引き取られる前の生活や売られたときのことに関してはどうしようもないと割り切ったことを言っていました。」


 「お前にも言えない何かがあるのかもしれないな。」


 「恐らくは。それでも私はポーラが冒険者であれ他の職業であれ応援したいと思います。」


 「ポーラはお前にも言ったようだな。ポーラには冒険者として生き残る、或いは名を馳せるだけのものがあると思うか?」


 「・・・。正直、英雄に成れるほどの力はないと思います。」


 「ほぉ。」


 「それでも、私たちはどんな困難でも生き残れる知恵と技術を出来る限り教えました。少なくとも死ぬことはないと、信じています。」


 「ならば、言うことはないな。それぞれの希望通りに道を敷くだけだ。」


 「私達も全力を以て手伝わせて頂きます。」


 「心強いな。これで話は終わりだ。下がってよい。」


 「わかりました。それでは、失礼します。」


 ケイティはドアの前で一礼して書斎を後にした。

 見届けたアルファンは書斎で書類を纏めて机の引き出しに仕舞った。


 「諦めないことは大事なことだ。しかし、それが正しい道なのかは別に思う。」


 「いや、何が正しいのかも分からないのだ。若人は自分を信じて進む以外はないのだろうな。」


 降りしきる雨を見ながらアルファンは独り言ちた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

翌日、翌々日も準備が出来次第投稿するかも知れませんので了承ください。

そして、暇つぶしにでも読んでいただければ幸いです。



雑談

当初は前回の話と一緒に乗せようと思ったのですが、話の視点が違うために今回の話を19話にしました。

この話では契約主と雇用人が主人公達をどのように見ているのかを書かせていただきました。

キャラクター達の人物像は少しずつ明かせると良いと思っていましたが・・・。

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