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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
奪われる弱者
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17話 わたし

本日もよろしくお願いします。

 初めての野外訓練は驚きや懐かしさ、楽しさがあった。

 基本的な生活は勉強と敷地内訓練だけど、一定の頻度で野外訓練をしている。

 敷地内訓練は色々な武器の扱いや基礎トレーニング、中には毒を摂取して耐性を付けることもあり、這いずり回るばかりだ。

 アルファン邸に来てから俺とボビィとサムの仲は悪くないと思う。

 最初の方は自由時間に遊ぶとき、駆けっこや木登り、雨の日は遊戯盤で遊ぶことが多かった。

 中には騎士ごっこもあり、俺は囚われのお姫様役だったが正直蚊帳の外だと感じた。

 騎士と悪役で揉める二人だがなんだかんだチャンバラをするのが楽しいのだろう。

 年を経るごとに彼らと一緒に遊ぶ時間は少なくなり、気づけば二人とはちょっとした時間に話すくらいになっていたかもしれない。

 その理由の一端として俺は一人立ちするときに色々な技能を身に付けたいと思い、裁縫や解錠術などをケイティやオリバーから教わった。

 二人と違う時間を過ごすことが多くなったけど勉強や訓練で邪険にされることはなく、今でも彼らと楽しく過ごしている。




 気づけば、この屋敷へ来てから三年が経った。

 ある朝、俺は感じたことの無い腹痛に(さいな)み、ベッドに(うずくま)っていた。


 「痛い痛い痛い痛い痛い!」


 ひたすら声に出して耐える中、ドアがノックされた。


 「ポーラ、もう朝ですよ?起きてますか?」


 ケイティが来てくれた!


 「ケイティ!お腹が痛い!」


 必死に叫んだ俺の声にケイティは急いでドアを開けて俺の掛け布団をゆっくり上げた。


 「・・・なるほど。」


 ケイティは事態を把握したのか「暫く待ちなさい。」と言って部屋を出た。

 何が何だか分からない俺は剥がされた布団の中を覗いてみた。


 「えっ!?」


 下半身が血で汚れていた。

 それを見て頭は真っ白になり目の前が真っ暗になった。

 



 「・・・。」


 恐らく昼頃だろうか?

 目を覚ませばお腹は相変わらず痛かった。

 ただ、下半身の濡れた感触はなく着替えや布団も変えられたようだ。

 その下半身にも違和感はあるものの、上体を起こして周囲を見回した。

 荒い呼吸をしながら傍にある円テーブルを観れば置き手紙、水、粉薬、小さな籠に布などがあった。

 手紙には俺の身に起こった理由と対処法、「目が覚めたら薬を飲んで安静にしなさい。」と書かれていた。

 痛さの余り、深く考えずに苦い薬を水で流し込んだが流石に毒耐性の実験では・・・ないはずだ。

 直ぐにベッドに籠もって踞る一日を送るのだった。




 痛みを伴う一週間が過ぎたあと、ケイティから講義を受けることになった。


 「この一週間、頑張って痛みに耐えました。偉いですよ。」


 部屋でベッドに腰掛ける俺の頭を撫でられ、相変わらず安心してしまった。

 過去にあんな痛みを味わったのは初めてだ。

 昔の俺は女の子の知識を何かで習った気がしたがそれが何だったのかを覚えていない。


 「あなたの身に起きたのは女性特有の生理です。」


 宣告を受けるとショックの一言でしかない。

 男として産まれて生きてきたのに異世界に召喚されて捨てられて、見知らぬ少女に体を奪われて不運に見舞われて今日。

 俺、本当に女になったんだなぁ・・・。

 それから幾つか説明を受けた。

 これは女性になって体験しないと分からないことばかりで世の女性の強さを垣間見た気がした。


 「ここに居る間は素直に報告しなさい。薬で痛みは誤魔化せますが無理はさせたくありません。良いですね?」


 「はい。」


 普段から無理無茶をさせられているんだがどういう風の吹き回し・・・ごめんなさい何でもありません怖い目で見ないで下さい。

 内心を見透かしているのか分からないがほっと息を着いたケイティが俺を抱きしめた。


 「色々大変ですが何かあれば相談なさい。それに教えることもまだ沢山ありますからね。」


 これが大人の女性の優しさかぁ。

 奴隷になって引き取られてから数年は経ち、日に日に勉学は難しく鍛錬は厳しくなるがそれでもアルファン様達は俺達を虐げたりはしていない。

 この日から本当にいろんな事を知って実践することになり、月一は気分が沈むことを良く知ることになった。




 あれから数か月経ち、暑さが増してきた夏の日。

 午前中はボビィとサムと一緒に算術、魔法の勉強。

 小屋の窓を全開にしてそよ風を入れているから、まだ暑くはない。


 「お前らよく計算とかできるなぁ。未だにわからんぜ。」


 ボビィは大きな黒板と手元の黒板の間を睨めっこしていた。


 「ボビィもまじめに取り組めば直ぐに分かるって。」


 「少し考えればわかるでしょ。」


 サムの意見に()()()は同意した。


 「三人とも出来ましたか?見させてもらいますよ。」


 オリバーがわたし達の回答を確認して頷いた。


 「サムとポーラは正解です。ボビィはせめて数字を書いて欲しいですね。」


 「だってよぉ。」


 三人の中で算術を苦手にしているのはボビィだ。

 それ以前に未だ座学全般が苦手なようだ。

 逆にサムは座学が得意で歴史や魔法の知識をすらすらと言えるまでである。

 わたし達が習っている算術は以前の世界で習っていた範囲で言えば小学生の中学年程度だろうか?

 ポーラになってからそう言った知識すらも大半を失ってしまったが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()くらいのことは覚えている。

 ボビィだけが四苦八苦する算術の後は魔法の勉強。

 同じ部屋で黒板に書かれた魔方陣について勉強する内容だがざっくり言えば必要な術式を書き込み、魔力を流せば発動すると言う内容だった。

 地面や壁に描く手間はかかるが大掛かりな魔法を使うときは大変便利なものらしい。

 それと魔方陣に必要な材料で魔法の質が変わるとか。

 魔方陣に触れただけでは魔法は発動しないので安心できる。

 そう言えば、大分前に大掛かりな魔方陣を見たような・・・いや気のせいかな?

 ただ、こう言ったものには少なからずワクワクした。


 「これを勉強するのは扱うことよりも危険性を知ってほしいからです。」


 オリバーの授業では基礎知識だけに留めるようだ。

 先程の危険性と言うのは安易に魔力を流して発動させたら大惨事になることがあるからだと言われた。

 一先ず簡単な魔方陣を用意してもらって三人で魔力を流して魔法を眺めたが空中に浮かぶ氷の魔法は光の反射によって綺麗な光景だった。




 昼食を摂り、午後になって体を動かす特訓が始まった。

 それぞれ体を解してから敷地内を走り込む。

 数か月前までは三人で一緒のペースで走っていたがわたしのペースが以前よりも遅く、或いは二人のペースが速くなったのかもしれない。

 前が見えなくなるほど大きな差はないが以前から感じる胸の膨らみにが気になった。

 今まで運動をするときには何もつけていなかったけど、相談したら胸を隠せる薄手の布を巻くことでひとまず落ち着いた。

 序に言えばボビィとサムの二人が良く胸を凝視しているのも気になる。

 それ故に気になって腕で隠すような走り方とかになってしまうがケイティとオリバーから指摘を受けて矯正される。

 ノルマを走り終えたわたしは既に終えていた二人が次の訓練に移っていたのでやろうとしたがケイティから「少しだけ息を整えてください、それと水も飲みなさい。」と言われて小休止。

 二人の様子を観ていて思ったのは、最近の二人は以前よりも身長が伸びて筋力も付き始めていた。

 一時期、わたしの方が二人よりも背が高かったのに、数年もしない内に抜かされそうだ。

 小休止を終えたわたしは二人と同じ様々な武器で素振りの訓練をして、個別の訓練に移った。

 以前は三人一緒に夕暮れまで受けていたが最近では男女に分かれて訓練をするようになった。

 ボビィとサムにはオリバーが、わたしのところにはケイティが就く。


 「以前もお話しましたが男女の体格差は今頃から変わってきます。男性の場合は筋肉質で力が強くなり、女性の場合はしなやかに柔らかくなります。つまり、それぞれの長所を活かした動かし方を意識して覚えることです。」


 武器の扱い方は変わらないが力で押さず小さな力で大きな効果を出す方向になった。

 特に体術を多く教わることになったが朧気ながら別の世界の色々な体術と同じだなぁと内心思った。


 「女性でロングソードやバトルアックスを使うのはどう思う?」


 「大半の女性ではうまく扱えません。単純に筋力が足りないからです。一部、血筋によっては男性並みに筋骨隆々な人もいますがポーラの場合はどれだけ鍛えても難しいでしょう。」


 「そっかぁ。」


 わたしの疑問にケイティは現実的な答えをくれた。

 自分自身でも重い物を運ぶのが無理だとわかっている。

 だからこそ、今後の戦闘スタイルの方針を決めたいけど。


 「今までは模造品とは言え色々な武器を触ってもらったけど本格的に扱うのはもう少し後ですね。」


 体を捻ったりするトレーニングなど柔軟性を鍛えた後にナイフやレイピアを触ることになった。

 



 一方、ボビィとサムは槍の素振りを行っていた。


 「なぁ、サム。」


 「どうしたボビィ?」


 「なんかポーラを観てるとドキドキするんだよ。」


 「奇遇だね、僕も同じだよ。」


 「胸とか尻とか。」


 「魅力的だよね、触りたくなっちゃう。」


 「ケイティもそんな感じがする。」


 「確かにそうだね。」


 二人は素振りをしているが顔はポーラ達の方を向いており鼻の下を伸ばしているまでである。

 バシッ

 二人の背中が叩かれたようだ。


 「「いてっ!!」」


 「二人とも集中しなさい!」


 オリバーの木剣の腹で叩かれた二人は必死に素振りに励むのであった。


 「何をやっているんだか。」


 俺は彼らの様子を観て呆れた。

 と言っても多分これくらいの年頃の男子の気持ちは分からなくもない。

 残っている記憶にかつての平本慎吾も女子が気になっていたことがあるからこの時はそれ以上気にしなかった。

 そして、少し後の話。

 私の知らないところでボビィとサムはアルファン邸で働く女性使用人達のお尻を触ったり、スカートを(まく)るいたずらをしていた。

 当初の頻度は少なかったため使用人の間で鬱憤(うっぷん)を晴らす会話で終わっていたけど、私がやられたときはケイティ達に話したらケイティとオリバーが二人に命令して出来ないようにした。

 これにて悪行を働く子供達は成敗されたのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

今後も不定期更新ですが暇つぶしに読んでいただけると幸いです。




今回は主人公の意識に関わる話として書かせていただきました。

露骨な割にあまり深くは書きませんでしたが、少年と少女の違いを書き出すのは大変だと思いました。

改めて読者の方々、いつもありがとうございます。

至らぬ点は多々ありますが、これからもよろしくお願いします。

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