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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
収束の始まり、夢も希望もない先へ
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120話 噂や評判

本日もよろしくお願いします。

28日に118話を、29日に119話を投稿したのでまだ読んでいない方はそちらも読んでいただければ嬉しい限りです。

今回はポーラの話です。

 フレイメス帝国から追手が迫っている可能性を考慮して北上しながら山林で身を隠して過ごしていた。

 出来る限り痕跡を消した甲斐もあって追手と遭遇することはなかったけどモンスターとの接触が多く、逃げるのも一苦労した。

 それに食べ物が中々見つからず、空腹との戦いでもあった。

 その甲斐あってフレイメス帝国とムンドラ王国の国境にある検閲所を通らずに進むことが出来た。

 普通なら検閲所を通るけどお尋ね者になっている以上は危険な場所を通って行くしかない。

 そうして森を抜けると小さな村が見えた。

 わたしが村の門番の男に話しかけると驚かれた。


 「こんな村に旅人が来るなんて珍しいな。」


 「ここら辺の土地勘がない物で……。」


 「今日は村に泊まっていくか?」


 「そうですね、お願いしても?」


 「もてなせないがゆっくりしてくれ。」


 門番に教えて貰い、村の中央にある村長の家に尋ねると年老いた男性と同じくらいの年齢の奥さんがいた。


 「何もない村だがゆっくりしてください。」


 「ありがとうございます。」


 確かに珍しい物は見当たらず静かな立地。

 村人の人数も多いわけではない。

 普通の村だけど今は落ち着いて休める場所で良かった。

 村長の家で休ませてもらった翌日、

 お礼を兼ねて村の手伝いをした。

 その中でムンドラ王国について訊いてみたけど、近くの町へ農作物を売り出す以外に情報が入ってこないらしく

 平和な国という感想ばかりだった。

 ただ、その平和も何度か脅かされたらしいけど国の兵団や冒険者達の活躍で守られていると言っていた。

 その中でも気になったのはある冒険者集団の話。

 町へ行くおじさんの一人が


 「大きな兎のモンスターを青黒い髪の青年が一刀両断したって話しだ。国の騎士様でも敵わなかったそいつを倒すなんて最近の冒険者達はすげーなって話題になっていたな。」


 噂によると何年も前に近くの町で青黒い髪の冒険者が活躍していたとかいないとか。

 名前までは分からないけど吟遊詩人達が国内でよく詠っているとか。

 その青年はもしかして……。

 翌日、わたしは村を出て近くの町へ向かった。

 そこで話を聞いて見ると村人達が言っていた噂は本当らしく、冒険者ギルドの一部のベテランが豪語していた。


 「あいつは俺が育てたようなもんだな!」


 「いや、俺だろ?」


 「なにおう!?」


 と言った感じ。

 この人達が何処まで関わっているか分からないけどあまり参考にはならなかった。

 ただこの場所では少女と二人で活動していたらしい。

 そもそも何年も前だから明確に覚えている人はいなかった。

 それでも彼らが現在拠点にしている場所は判明した。

 わたしは次の目的地を目指して出発した。

 西回りに町村を転々と回ってみると何処も好意的に迎えて話を聞かせてくれた。


 「ムンドラ王国は森を切り開いて開拓しているからな、木こりはそれなりにいるぞ。」


 「農作物は何処の村でも沢山作れるって話しらしいぜ、だからなのか納税とかも他の国より安いとか。」


 「ムンドラ王国の南西側の山岳地帯は怖いモンスター達がわんさかいるらしいから近づくんじゃねーぞ。」


 「一番手前なら狩猟できるからまだ安全だよな。」


 「東のゴルダ連合国、西のステア王国、南のフレイメス帝国とは仲が良いって聞くな。田舎じゃそんな実感わかないけどな。」


 「魚って奴は塩っ辛いらしいが美味いらしいぞ、俺も食ってみてーな。」


 「北?北は大山脈があって行けないらしいぞ。」


 「あそこは国が事業で開拓中だったか?」


 「200年前の伝説の英雄様が昔向こう側へ行ったって話を信じてるらしいぜ?」


 「本当か嘘か分からないが金銀財宝があったら俺達もあやかりたいぜ。」


 「最近の英雄様もその事業に参加するんじゃなかったか?」


 「もう終わって他の冒険者と交代してるんじゃないか?」


 「田舎じゃ最新の情報も古くなってるからな」


 「俺達は毎日汗水流して平和に暮らせればそれでいいな!」


 あまり外との交流がない村では直近の情報はないらしく、常識か一年以上前の情報とかばかりだった。

 ただ、その中でここ数年で名を馳せた冒険者だけは話のネタになるのか盛り上がることもあった。


 「シンゴって英雄はすげー武器を持っているらしいぜ?」


 「俺もそんな武器があったら一流になれそうだな!」


 「あんたじゃ宝の持ち腐れよ!せいぜい三流よ三流!」


 「ひでーな!」


 「そうにちげーね!」


 「青い光を放つ剣って昔の英雄の武器だったりしてな!」


 「だったら選ばれたってこったな!」


 邪神の徒を倒した冒険者の活躍を聞きながら思うことがあってもグッと堪えた。

 辺境の村や町にいる間は住人達の手伝いをして日銭を稼いだり食事の恩恵に預かったりして食い繋いだ。

 ただフレイメス帝国の関係者がいても不思議じゃないから目立たない行動を心がけることは忘れなかったし、自分の出自は曖昧に濁したから大丈夫なはず。


 シンゴ・ヒラモト。


 冒険者の男で青黒い髪が特徴。

 剣で戦うが巨大なモンスターを両断できる。

 仲間は六人で男が三人、女が三人でシンゴを含めると計七人。

 彼等の拠点はムンドラ王国の南にあるミールドと言う街。

 最近まで北の大山脈に居たらしいけど、王都を経由してミールドへ戻るんじゃないかと言われていた。

 次の目的は決まった。

 ムンドラ王国の南、ミールド。

 国内でも盛んな場所でフレイメス帝国との行き来で通るとされている場所。

 正直、帝国の追ってに見つかる可能性はありそうだけど選択肢は他にない。

 実際に噂の人物を見たわけじゃないけど、あの日のことが甦る。

 あの顔。

 あの姿。

 わたしであってわたしではない存在。

 苛立つ。

 絶対に……。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

基本的に不定期更新ですが時間のある時に読んでいただけると幸いです。


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