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恨みに焦がれる弱き者  作者: 領家銑十郎
異世界と言う現実
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1話 不運の始まり

初めまして。

文才もなく稚拙でテンプレだらけですが読んでもらえると嬉しいです。


 何時の間に寝ていたんだ?

 ベッド…にしてはゴワゴワしている。

 視界に入ったのは翠色の絨毯。

 なんで寝ていたのか分からない。

 確か朝はいつも通りに教室で時間まであいつらと話していた。

 それから……。

 予鈴がなると同時に教室が謎の光に包まれていたよな。

 大半が騒いでいたな。

 俺達は顔を見合わせて異世界召喚だって喜んでいたまでである。

 その後は視界が光に包まれて……。

 体を起こして周囲を見ると教室とは似ても似つかない場所。

 俺が横たわっていた床には金の刺繍を施した翠色の絨毯が敷かれている。

 まるで何かの魔法陣に思えた。

 俺以外にも絨毯に倒れ込んでいる生徒が多くいた。

 その中には仲の良い三人の友達もいた。

 まずはあいつらを起こすべきだよな。

 何人かクラスメイト達が起こしているし。

 って壁際にローブを被った怪しい奴らがいるじゃん。

 これ、動いても大丈夫なのか?

 いや、他の人達も動いているから大丈夫だよな。

 ゆっくりと起き上がってから近くにいた武田を起こした。

 

 「おい、武田起きろ」


 体を揺すれば俺と同じような平凡な顔が寝ぼけながら俺を見上げた。


 「平本?」


 「あぁ、俺だ。今大変なことになっているぞ」


 俺の言葉に武田は体を起こして見回した。


 「なんだこれ?」


 「覚えていないか、多分異世界召喚に遭ったんだよ俺達」


 「マジかよ!?」


 「マジだ」


 寝ぼけた表情から一気に覚醒した武田は周囲を見回して怪しい奴らを見た瞬間に喜ぶ表情を引っ込めていた。


 「あいつらって?」


 「わからん、取り敢えず桑原と鈴木を起こそうぜ」


 「あぁ」


 俺はぽっちゃり系男子で髪を短く切り揃えた鈴木に近づいて体を揺すった。


 「鈴木起きろ、朝だぞ」


 「もう少し待ってぇ…」


 付き合いは長い訳じゃないが約束の返事をするとは。

 それでも早めに起こした方が良いだろう。


 「起きろ、先生に怒られるぞ」


 「そ、それは困る!」


 鈴木は授業中に寝てしまい先生に怒られた経験があるため目を見開いて素早く体を起こした。

 だけど、教室ではない知らない場所だと分かると視線を彷徨わせていた。


 「ここどこ?」


 「分からん、多分異世界かもしれない」


 「そう言えば教室が光っていたような」


 鈴木も直前の状況を覚えているらしい。

 俺達の元に武田と桑原が来た。

 武田もそうだが桑原の太い黒縁眼鏡の奥にある目が大きく見開いている。


 「ここってヨーロッパじゃないよな?」


 「違う…とは言い切れないが教室で起こった謎の光と関連しているなら」


 桑原が部屋中を見て興奮しているが武田も鈴木も同じだ。


 「平本、お前嬉しいだろ?」


 「はぁ?俺よりお前達の方がよっぽどだろ?」


 言われて気づけば自分の口角も上がっていた。

 どんな状況でも俺とこいつらは同じ趣味を持つ同類ってことだよな。

 俺達が話を盛り上げようとしたら女性の声が響き渡った。


 「皆様静粛に!」


 俺達は声の主を探した。

 少なくともクラスの女子ではなかった。

 壁に沿ってローブを目深に被った怪しい集団が俺達を囲っているが一人だけ黒いローブを頭から外して顔を見せていた。

 その女性はランタンの光に照らされた三つ編みが前に流していることで際立って大人の清楚な印象を与え、一際大きい眼鏡の奥の瞳は興奮を隠せないほど大きく見開いている。


 「皆様は今困惑しているかと思いますが、どうか私の話を最後までお聞きください。」


 声の主は顔を見せている女性だった。

 一度は静かになったが一部の人達は相変わらず小声で話していた。


 「私はアニー・ノースランド、サンデル王国で魔法の研究に携わっています。今回あなたたちを召喚した責任者としてここにいます」


 聞いたことのない国や魔法という単語に大半が困惑してざわめいた。

 一方の俺達は異世界にいることに目を輝かせていた。


 「皆様を召喚したのはただ一つ。この国、いえこの世界を救っていただくためです!」


 両手を広げて今にも涙が溢れそうな瞳に男子の大半は息を飲んでいた。

 武田や桑原は頬を染めてにやけている、それほど彼女は庇護欲を注いでいるように見える。


 「あの、魔法とか召喚とか分からないのですが。それと世界を救うとはどういうことですか?」


 声を上げたのはクラスでイケメンで男女分け隔てなく優しい男、英雄人だ。

 物怖じせずに聞くなんて凄いな。


 「恐らくあなた達と私達の世界では異なる部分が多くあると思います、それらについては改めて説明します。それと世界を救っていただくというのはあなた達には戦ってもらうと言う意味です」


 これには大半が騒いだ。


 「何それ、意味分かんないんだけど!?」


 「戦いって武器を取るってこと?」


 特に英と仲の良いクラスでも派手な女子菊池未梨亜と小柄で運動の出来る若山千里が怒りを露わにした。

 一人が声を上げると直ぐに同調して周囲も声を上げる。

 だけど、アニーさんは臆せず菊池達に答えた。


 「人によっては適性が異なるので必ずしも武器を手にして戦う訳ではありません」


 「あの、世界が危険とか言われても僕達にはどうすることもできないと思います。申し訳ありませんが俺達を元の場所に帰して他を当たってくれませんか?」


 英の言う通り普通なら俺達普通の高校生に戦う力はない。

 だけど、ここが本当に異世界で俺達が召喚されたなら俺達には戦う力があるはず。

 あくまでよくある小説の場合だが。


 「いえ、あなた達には戦う力があります。この世界へ召喚されたら力が顕現するようになっています」


 「力?特に不思議な感覚はないのですが?」


 戸惑うのは英だけじゃない。

 他の人達も俺達もさっきからいつもと違う感覚はない。


 「それを詳しく知るためにも私達に協力ください。もし従っていただけないなら安全のためにも牢屋に入っていただく他ありません」


 協力と言いながら脅しが入っている。

 正直浮かれているけどよく考えたらヤバイ気がする。

 けど、俺達に最初から選択肢なんてないよな?

 強気な彼女に英はこれ以上の問答が無意味だと悟ったのか大人しく従うことにしたようだ。

 英が諦めることで他の面々も渋々ながら従うことにしたようだ。

 こういうときに暴力的な奴が騒ぎそうなものだけど。

 クラスの問題児達を盗み見れば彼らは不満げな表情とは言え静かにしていた。


 「次は王様に会うのか?」


 「話の流れ的には俺達のスキルとかを確認するレクチャーが来るだろ」


 武田と桑原は次の展開の良そうに盛り上がっている。

 俺と鈴木も彼らに同調してあれやこれやと想像していた。


 「スマホって何処だ?」


 ふと思い出して制服のポケットを探ったり周囲を見回したがスマホはなかった。

 今更ながら改めて床や巻き込まれたクラスメイト達を見ると通学鞄も見当たらない。


 「俺達の荷物は元の世界に置いてあるってことじゃないか」


 「暇つぶしできないじゃんか」


 「電波とかないからあってもダメじゃないかな?」

 

 桑原の懸念は鈴木に論破された。

 電波がないと言ってもあったほうが何かと便利な気がする。


 「荷物ないとか最悪だよねー」


 「あれの日とかどうしよう?」


 女子の方が大変だなぁ。

 身一つで違う環境に来る心細さって。


 「外に出ますが勝手に行動しないでくださいね」


 実は何処かの撮影所でドッキリでした、という方が俺達にとってはまだ幸せだったのかもしれない。

 いきなりの展開に夢の展開に嬉しさを感じつつも知らない場所に連れてこられたと言う不安がごちゃ混ぜになっていた。











 アニーさんの先導で外へ出ると眩しくて目を細めてしまった。

 雑草で覆われているが遠くには攀じ登れないほど高い石壁があり、他にも石造の建物が幾つもある。

 その中で一際大きいのは城だと思われる。

 そもそも敷地の全てを指して城だっけ?


 「赤い三角屋根の建物が城か?」


 「他の建物と意匠が違うしそうだろう」


 桑原が指した建物は俺達の校舎よりも巨大で俺みたいな庶民には威圧感さえ感じられた。

 ローブを被った人達に囲まれながら俺達は城と思しき場所に入った。

 俺達クラスメイト達がローブを被った人達に従って中を進んだ。


 「外の風景も中の内装もヨーロッパの何処かと思えるほど魔法とかファンタジー要素がなさそうだよな」


 「確かに誰かが箒で空を飛んでいるなら信じやすいよな」


 桑原が言うように現代にも残っている場所なら石レンガとかで積み上げた建築物は残っているから異世界にいる実感が湧かない。

 ただ歴史を感じる高級なホテルと言われた方がまだ信じられるかもしれない。

 ぞろぞろと俺達は階段を昇って最上階まで来た。

 荘厳なドアが開き、アニーが停まるまで歩く。

 横に五人ずつ並ばされて見回すと目立つ刺繍を施した色とりどりの厚そうな生地を着たお偉い方達。

 彼等の近くには鎧を着た兵士達がずらりと並んで俺達を威圧している。

 上質な赤い絨毯が伸びる先には五段の階段の上に俺の背丈の二倍はありそうな玉座が鎮座している。

 加えて玉座の背後にある渦を巻いた黄金の刺繍が入った赤い垂れ幕に俺達は圧倒される。

 彫刻が掘られたレリーフや金銀の細工による豪奢な大部屋。


 「ここって謁見の間ってやつか?」


 武田の問いに俺は小さく頷いた。

 初めて見る光景に一部の人達は興奮しているからか偉そうなおじさんが俺達を睨んでいる。


 「異界の勇者達、静かにしろ!」


 案の定、おじさんは怒りを爆発させた。

 顔を真っ赤にして怒気を孕んでいるだけに殆どの人が口を噤んだ。


 「私は宰相を任されているキュラム・バニンだ。今日は我々サンデル王国にとって希望に満ち溢れた一日だ。

直ぐに王がお前達とお話するためにお越しになられる」


 キュラムと名乗ったおじさんは紺色に銀の刺繍などをあしらった衣装を着ているから真っ赤になった顔が一際目立っている。

 眼を見開いて拳を握り込んでいる当たり、あれでも我慢しているようだ。

 静寂になったところへ壇上の脇から豪奢な真紅のマントを引きずる初老の男性が玉座に座った。

 威厳を感じるのはあのまるまる太った体による物だろうか。

 それと室内の照明に照らされて金色に光を放つギザギザした王冠が一際目立つ。

 ただ気になったのは品定めをするような視線を送っている気がした。


 「この御方はバイゼル・サンデル。ここサンデル王国第六代の現国王で在らせられる!異界の勇者達よ、此度は

国の、世界の危機に参じてくれたこと感謝する。お前達はこれから王の御前にて能力を判定する」


 宰相の言葉にアニー達は急いで準備を始めた。

 陰に隠れていた台座が運ばれ、黒い布が捲れると中にはボーリングのボール大の水晶が顔を見せた。


 「皆様にはこれから一人ずつ水晶に手を翳してもらいます。そしてステータスオープンと唱えてその内容を確認させていただきます」


 何人かは顔を見合わせていたが具体的にどうなるか分かっていないようだ。

 俺達も顔を見合わせたがスキルが手に入るイベントだと思い、武田たちは気持ち悪い程顔を綻ばせていた。

 多分俺の顔も変だろう。

 アニーの先導に従って前にいる人から順に水晶に手を翳した。

 手を翳した瞬間、淡い光が水晶から漏れ出たが派手な演出はなかった。

 ただ、水晶に翳してから教えて貰った呪文を唱えると中空に浮かぶ電子映像が現れた。 

 これにはクラスメイト全員が驚いた。

 やっぱり本当に異世界に来たのか。

 第三者にもくっきり見えているようでアニーや他のローブの人が手元の羊皮紙にメモを取っていた。

 それからクラスの殆どが水晶に手を翳したがアニー達の表情は様々だ。

 その中でアニー達が驚きや喜びの声を上げていたのは英を始めとしたクラスカースト上位とかだった。


 「やっぱり顔とかスペックで決まるのか?」


 「嫉妬なんてするもんじゃないぞ。人は人、俺達は俺達だ」


 「平本、もしお前が判定が高かったら呪ってやるからな」


 「マジであり得そうだからやめろよ」


 桑原の嫉妬と恨みを込めた視線をおれに向けるな。

 呼ばれて緊張した足取りの武田達三人も無事に儀式を終えた。

 アニーさん達に不憫な目を向けらているしあいつら自身も落胆している。

 結果は良くなかったんだろうな。


 「そこのあなた、来てください」


 俺も呼ばれて水晶の前に立った。


 「手を翳してください」


 不安半分期待半分を胸に息を吞みながら水晶に手を翳した。

 俺もあいつらと同じ運命を辿るのか?

 いや、俺だけ特別な能力かもしれないぞ。

 同じように淡い光が数秒放たれた。

 他の人達と差はなかったな。


 「では、唱えてみてください」


 アニーさんの落ち着いた声に従った。

 俺の心臓の音が良く聞こえる、落ち着け俺。


 「ステータスオープン」


 俺の胸の高さに半透明の電子映像のようなものが現れた。

 どんなことが書かれているのか。


 「えっ?これは……」


 さっきと打って変わって困惑するアニーさんに俺も不安になる。


 氏名:シンゴ・ヒラモト

 性別:♂

 称号:異界の勇者(F)

 能力名:フォーチュンダイアグラム


 良く見なくても思っていたのとは違う。

 滅茶苦茶簡素だった。

 こういうのってSTRとかゲームみたいなステータスに幾つかのスキルが表示されるもんじゃないの?


 「あの、これって」


 「あとで教えるわね。それから何人か前に出た後に彼等と同じように傅いてね」


 「え?」


 「態度が悪いとその場で処刑もあり得るから」


 さらりと怖いことを言われたぞ。

 アニーさんの目は真っ直ぐ俺に向いていることから嘘ではなさそうだ。

 元の場所へ行くように促されて俺も困惑しながら戻った。

 全員が並んだところでアニーさんが宰相にメモを見せ、宰相も王様にメモを見せていた。

 彼らの喜んだ表情を見る限り俺達の結果は悪くないらしい。

 宰相が王様から離れてから空気が変わった。


 「アニー魔法士官はじめ魔法士団の面々、ご苦労であった」


 重く重圧の掛かりそうな王様の声が室内に響いた。


 「とんでもございません」


 「それと異界の勇者達もご苦労であった。此度の儀式、我がサンデル王国の未来を切り開き国の繁栄を約束される結果と言っても過言ではない。これから我が王国を襲う魔の手を振り払い世界の平和と安寧のために協力して欲しい」


 腹の底に響くような王様の言葉にどんな風に返事をすればいいのか分からない。

 俺以外の人達も同じように困惑している。


 「呼ばれた勇者は前に出てください。ジン・コクボ、ゲン・フナト、リカ・ナカゾノ、ヒロナリ・キタヤマ、ユゥト・ハナブサ、トォル・カイガ、ミリア・キクチ、ミノリ・ドォモト、チサト・ワカヤマ。

彼等は最高ランクSの勇者達です」


 アニーさんに言われるがまま彼らは階段の近くまで並んだ。


 「ユゥト・ハナブサは誰か?」


 「俺です」


 英が一歩前に出た。

 あいつでも緊張しているんだな。

 王様は英達を見ているが表情が変わらない。


 「精悍で責任感のある顔つきだな。我が国、臣民のためにも勇者達の力を貸してもらえるか?」


 「はい、サンデル王国のためにも我々異界の勇者は魔の手を振り払う所存です」


 「良かろう、では期待しているぞ」


 英が傅くとSランクと紹介された面々も倣った。

 後ろ姿なのに菊池がものすごく苛立っている気がする。

 俺達もアニーさんに言われたことを思い出してすぐさま行動に移したことで特に咎められることはなかった。

 宰相から頭を上げるように言われてから、王様が退席するのを見届け、俺達も貴族や兵士達に見送られながら部屋を去った。

 謁見の間と思しき場所から城内の別の大部屋に移動してから全員が椅子に座れた。

 シンプルなデザインの木製椅子は堅いが意外と丈夫らしい。

 鈴木が座ってもビクともしなかった。

 武田が小声で話しかけてきた。


 「なぁ、さっきの英と王様のやり取りって」


 「アニーさんに言われるがままだろうよ」


 能力判定の時にSランク判定を貰った人たちの会話が長かったからな。

 というより今更だけど俺達に拒否権すら与えてくれなかったぞ。

 こういうのって人権とか人道的に戦わなくても良いって選択肢も用意するもんじゃないのか?

 まぁ読んでいた小説でも問答無用の展開は多かったな。


 「少なくとも異世界である以上僕達を守ってくれるのはこの国しかないってことじゃないの?」


 「一人の不始末で全員が死ぬとかシャレにならないよな」


 鈴木の言うことは極端だけど低ランクは切り捨てられる立場でも不思議じゃない。

 武田達と雑談しながらアニーさんの話にも耳を傾けた。

 儀式と能力の話を整頓すると、召喚された時点で俺達の能力は既に決まっていること。

 儀式は半透明の映像、情報盤を出したり能力を認識させることで扱いやすくするためらしい。

 元々は身体能力とかの補正値や使えるスキルも表示させられたが水晶の機能が半壊してるためそれらが表示されないらしい。

 そんな半端な状態で召喚するなよ!

 結局重要なのは能力とランク。

 ランクのアルファベットは能力と能力の強さと補正値によって決められているらしい。

 らしいと言うのはサンデル王国でも関係性を把握できていないとか。


 「皆さん、一人ずつ能力について説明しますが中には初めて確認された能力もありますのでご容赦ください。それでは一人ずつ呼びますので前に出て下さい」


 これを聞いて俺はまた期待してしまう。

 名前も変だからもしかしたら新種で化ける能力かもしれない。


 「俺はEランクの【シーフ】だったぜ」


 武田は情報盤を俺達に見せてくれた。

 アニーさんが言う通り全員同じ項目しか書いていないようだ。


 「俺もEランクで【マジック・ウォーター】」


 「水魔法が使えるってことか?」


 「そうかもしれないな、使い方が分からんけど」


 桑原もEランクなのか。


 「僕もEランクで【ヘビータンク】ってやつ」


 「鈴木っぽい能力だな」


 「言えてる」


 武田と桑原は鈴木を見て笑っていた。

 

 「タンクってゲームのイメージだと耐久系で盾を使うって感じだよな」


 「僕達のバランスは悪くないのかも」


 思ったほど鈴木は落ち込んでいなさそうだ。

 俺も三人に見せたが全員が不憫な目をして首を傾げた。


 「Fランクかよ」


 「平本、俺達を呪ったりするなよ?」


 「それにしても平本君はその…残念だったね」


 鈴木の同情が寂れた心に響いた。


 「俺達もEだがお前を見るとマシに感じるな」


 「言ってやるなよ武田」


 「桑原は良いよな、一番ファンタジー世界を堪能できるって言うか」


 俺が羨望と嫉妬の視線を送ると桑原は照れていた。

 なんかムカつくなぁ。

 暫く雑談していると俺達も順次呼ばれた。


 「シンゴさん、ですよね」


 「はい」


 アニーさんは憐みの目を向けながら淡々としている。


 「あなたの能力は【フォーチュンダイアグラム】、過去に一度確認されています」


 新種の能力じゃないのかよ!?


 「どんな能力ですか?」


 「未来視…に近い物です」


 「未来視?」


 未来予知じゃなくて未来視?

 首を捻る俺にアニーさんは続けてくれた。


 「自分の行動を起点に一つ先の未来を見ることができる、と文献には残されています」


 「それ以外に出来ることは?」


 「ないみたいですね」


 「一つ先の未来って言うのは1分後までとか1時間後までとかを見れるってことですか?」


 「時間の長さは関係ないみたいですね。というよりこれは能力を持つ当人にしか分かりえないことだと思うので

私からはこれ以上言えません」


 「そうですか……」


 「発展性もないので恐らくランクがFなのもそれも理由の一つだと考えられます」


 食い下がってみたけど曖昧だったし鬱陶しがられた。

 自分の評価があまりにも低いことに肩を落として武田達の元に戻った。

 周囲を見れば他の人達も俺達のように仲良しグループで固まって今後の話を聞いているが、満足そうな顔や不安や不満な顔など色々だ。

 衣食住を保障するけど訓練はほぼ毎日行うとのこと。

 これからの生活や方針を一通り説明されたら菊池が無遠慮に質問した。


 「あたし達はいつ元の世界へ帰られるんですか?」


 尤もな疑問。

 俺達は命を懸けさせられている。

 召喚したと言うことは帰すこともできる…はず。


 「それは…この世界が平和になってからです、他に質問のある方はいますか?」


 それから何人かは質問してアニーさんが答えたあと、俺達は敷地内の施設を一通り案内された。

 改めて見たがどれも黒や灰色の石による無機質な建物で外観で楽しめるものではなかった。

 見張り番の兵士は暇なんだろうな、欠伸までしてる。


 「それでは夕食まで部屋で寛いでください」


 横に長い宿舎で俺が割り当てらた部屋を開けると中は暗かった。

 それと変な臭いが籠っている。


 「くさっ!?」


 他の部屋に割り当てられたクラスメイト達も次々に声を上げた。

 何処の部屋も同じなのか?

 ドアを開けたまま通路の光を頼りに板で閉じられた窓を開けた。

 外は風が吹いていないから直ぐに臭いを追い出せない。


 「武田達と外で話すか」


 よれよれで色の抜けた布を使っているベッドに長年放置しているようなボロボロのイスとテーブル。

 臭いの原因であるバケツ。

 勇者と持て囃す割に好待遇とは思えない寂しい部屋を離れて武田達と合流した。

読んで頂きありがとうございます。

不定期更新なのでご了承ください。


文章力、構成力など至らない点が多々ありますが読みやすいように勉強して改稿していこうと思います。中々成長しないと思いますが長い目で見させることお許しください。

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