婚約破棄から始まる3時間でのざまぁ劇場。または狼さんと三食の子豚
2作品目です。よろしくお願いします。r15は保険です。
童話にしようかと思ったのですが、お前のような童話があるかとケンシ〇ウさんに殺されそうなので異世界恋愛になりました。
予約投稿とルビ(一か所だけですが)を使ってみました。
「わが婚約者たる公爵令嬢!男爵令嬢ちゃんを虐めた咎により貴様との婚約を破棄し、彼女との婚約を新たに結ぶこととする。」
ここは王立学園の多目的ホール。現在は卒業パーティーの最中でつい先ほど18時を知らせる鐘が鳴ったばかりである。そして舞台の上にいて声を上げているのは金髪でイケメンの王太子殿下であり,その後ろにピンク髪で庇護欲をそそられる容姿の男爵令嬢、そしてその周りには彼女を取り囲むようにしてインテリ眼鏡風宰相令息、細マッチョの騎士団長令息、河童ハゲの枢機卿令息がいる。そして相対するのは王太子の婚約者(もはや元婚約者であるといっても過言ではないが)である金髪縦ロール釣り目がちな、一部周囲からはその目つきの鋭さから金狼とあだ名を呼ばれる公爵令嬢というテンプレの婚約破棄現場である。
「王太子殿下。婚約破棄の件は承りました。せめて正当な手続きを踏んでから婚約の解消をしていただきたかったのですが、公衆の面前で宣言をされたのですから私も相応の対処をしなければなりません。いじめなど全く身に覚えのないお話です。私のみならず公爵家の名誉にかかわるため証拠等ございましたらご提示いただきたいのですが?」
「たわけ者が!校内にてずぶ濡れになった男爵令嬢ちゃんが目撃されているし、破られた彼女の教科書などが見つかっておるわ!」
と王太子が自信満々に告げる。加害者とのつながりが全くないように思えるが調子づいた周辺も続く。
「さらに切り裂かれた彼女の制服も見つかっております。」
とは宰相令息。
「しかも彼女は先週階段から突き落とされている。」
と騎士団長令息が続く。
「彼女が大変な目にあっていたのはわかりましたが、私がやったという証拠をお示しください。」
「ふっ簡単なことだ。貴様には婚約者たる俺様に嫉妬したという確固とした動機があるからな。貴様がやったに違いないのだ!」
「そんな話で私を犯罪者扱いするのですか・・・。そもそも私たちの婚約は政略結婚のためのもので殿下に恋愛感情はございませんよ。さらに疑わしきは罰せずと法学の授業で習ったと思うのですが?」
すると枢機卿令息は淡々と話しだす。
「神は言っている。あなたがやったに違いないと。」
思わずそんなセリフで大丈夫か?と突っ込みたくなるが、そもそも河童ハゲは枢機卿令息といっても枢機卿を含めた聖職者は教会によって妻帯を認められていないため庶子である。そのため存在自体が脱法行為であり法律論などは気にしない人間であった。というか聖職者でもない河童ハゲが髪を語って、もとい神を騙るなど教会組織への反逆と取られても文句の言えないところだ。彼はどこまで行っても河童ハゲでしかない。
(どうせ彼らに逮捕権はないのだし、これ以上は話をするだけ無駄か)
と内心で思いながら公爵令嬢がため息をついた瞬間、ホール内の照明が落ちた。今は3月上旬でまだ日の短い時期であり真っ暗になる。
「なっ何事だ!何が起きたんだ!」
「皆あわてるな。早く照明をつけるんだ。」
ホール内は混乱しかけるが幸い30秒ほどでホール内の照明は回復する。
「照明を落とすなど小細工を。さすがは悪役令嬢の名に恥じぬ行いだ。」
何事もなかったように王太子が断罪劇を続けようとする。
「私はここにいたのにどうやったというのでしょうか?まあそれはともかく男爵令嬢さんはどちらに行かれたのでしょう?」
彼女の姿はホール内のどこにもない。
周囲を見渡した河童ハゲと仲間たちは慌てだす。
「なっ!貴様彼女をどこにやった!」
「知るわけがないでしょう。私はここにずっといたわけですし、どこに隠すというのですか?」
「ええい。今はそんなことを言っている場合ではない。かわいらしい彼女のことだ。どこぞの不審者にさらわれたかもしれない。未来の王太子妃に何かあっては大変だ。何をしておる捜せ!捜せ!」
ラスト10分の時代劇の悪代官のように王太子は声を上げると、駆け出して行った。当然パーティーは中止になり捜索が繰り広げられることになった。
*
そして3時間後彼女は発見された。
「王都警察の銭亀です。学園の調理実習室にて男爵令嬢さんを発見いたしました。」
王太子を中心に安堵の声が広がる。
「そうかよくやってくれた。して彼女は?」
すると銭亀は沈痛な表情で答えた。
「犯人は大変なものを盗んでいきました。」
「なっ何を盗んでいったというのだ!」
「それは彼女の身体です。」
「なんだと!でっでは彼女は・・・・」
呆然とした表情で王太子がその先を促すと
「いえ生きてはいますが、我々が駆け付けた時には大量の白濁液まみれになっており、このようなメモが・・・」
そういって渡されたメモには
『大変おいしゅうございました。
~怪盗子豚・ザ・ファースト~』
どっかの料理評論家か!調理実習室だけに。そしてその紙には子豚を描いた透かしがしてあった。
「あら大変ですわね。しかしこれで彼女の王太子妃という将来はなくなりましたね。まさかそのように汚された彼女を未来の王妃にはできませんでしょう?殿下、あなたが悪いのですよ彼女を表舞台に引っ張り出すから・・・・・」
公爵令嬢は口元を扇で隠すと王太子に向けて告げる。
「まっまさか貴様がやったのか?こんなことまでやるだなんて・・・・」
「言いがかりはおよしになって下さいませ。何の証拠もございませんでしょう?それどころかこの三時間公衆の目の前にいたのですからこれ以上のアリバイはございません事よ。」
「いや貴様の手のものが!」
「そういった話は証拠なり実行犯なりをつれて私との関係を証明されてからするのが筋ですわ。どうやらこれ以上話をしても無駄なようですね。夜も更けて参りましたのでそろそろ失礼させていただきますわ。ああそうそう、婚約破棄の件は了承いたしましたが私に過失のない一方的な破棄は契約違反に当たりますので後ほど王家に規定の賠償金を請求させて頂くことになります。」
そういって公爵令嬢が帰ろうとすると王太子は反論する。
「まっ待て!貴様には男爵令嬢を虐めていた件があるだろう。過失がないとはどういうことだ。」
「そもそも先ほどの話は証拠にもならない話ですわ。法廷で犯罪が確定しているわけでもなしその状態で婚約を破棄されたのは殿下です。それに彼女が被害にあったのが、私が原因でないと今日の件で皆様理解いただけていることと思いますわ。ちなみに彼女との不貞行為の証拠はございますので冤罪による名誉棄損に浮気を載せてトッピングコンプリートの慰謝料マシマシですわ。払いきれるといいですわね。」
そういうと公爵令嬢は今度こそ帰途に就いた。そしてその後ろでは
「ああやっぱり今回もダメだったよ。王太子は言うことを聞かないからな。」
「うるせえ!河童ハゲ。残りも毟るぞ。ゴラァ!」
「髪は言っている。ここで死ぬ定めではないと・・・」
不毛な争いが続いていた。
*
一週間後、公爵邸の私室には椅子に座り紅茶を飲む金髪令嬢とその世話をするピンク髪侍女の姿があった。
「いやぁ。ほんと今回は助かったっす。公爵令嬢ちゃん・・・いえお嬢様には感謝してもしきれないっす。本当にあの4人はうざかったっす。」
ピンク髪の侍女が令嬢に話しかける。例の事件後、関係各所で話し合いがもたれ処分が下された。王太子は有責での婚約破棄が決められ、廃太子、再教育と王位継承権の5位繰り下げなどが決まり、この結果実質王位に就く可能性はなくなった。
宰相令息は眼鏡はく奪(伊達メガネだったらしい)と、再教育。もともと次男で家の継承順位は低かったがさらに下げられたらしい。
騎士団長令息は廃嫡のうえ騎士団のブートキャンプに根性を叩き直すためとして叩きこまれているらしい。無事に卒業できれば辺境兵団で一兵卒からやり直しとのこと。
河童ハゲはもともと次ぐべき地位もないのでプー太郎である。ちなみに教会は神を騙ったことで激怒しているそうなので聖職者の道は完全にない。語ったのは髪のことで坊主にしますからと涙ながらに嘆願したが受け入れてもらえないらしい。坊主を反省ととらえる文化はこの国にはないからね。
傷物とされた男爵令嬢は精神的療養という名目で公爵令嬢が引き取った。最初は事件の黒幕とうわさされた公爵令嬢と被害者を一緒にするなんてと反対の声が上がったが、黒幕呼ばわりは名誉棄損になりますよと公爵家がにらみを利かせると周囲は沈黙した。王太子一味が興味をなくしていたうえ、公爵令嬢のそばが一番安全だからとの男爵令嬢本人の要望もありそういうことに落ち着いた。
「まあ私もあほ王太子と結婚するのは嫌でしたし、悪役令嬢として婚約破棄をされた瑕は、慰謝料と賠償金の一部として将来の女公爵として認められたことで、余裕でおつりが来ますからね。」
この国ではなかなか女性の爵位継承が認められないが、不可能でも全くないわけでもない。今回これが認められた以上、彼女は国内最上級の公爵家ということも超優良物件になった。婿探しなど入れ食い状態でいくらでも選べる立場になったのだ。
「それにしてもあの白濁液は何だったのです?というかやりすぎだったのでは?誘拐されたとされた時点で傷物扱い。王太子妃にならずとも済んだでしょうに・・・」
ちなみに今回の話は企画・立案・主演とも男爵令嬢ちゃんであり、万が一にも話が漏れないように、また漏洩した場合にも連座されないように公爵令嬢は最低限の情報と役割しか与えられていなかった。
「あれは水で溶いた米糊をベースにして、ちょちょっととろみをつけイカの臭いエキスを追加した物っす。簡単三分クッキングで特に体に害はないっすよ。いや~捜査に来た警察の方々にエロい目で見られるのはちょっと恥ずかしかったっすけどね。あと体中がカピカピになったのがちょっとだけ困ったっす。」
「そっそう・・・ちょっとなのね。さすがは庇護欲をそそる小さな身体に大きなお胸。天然物は違いますね。」
後ろの方が小声でつぶやきながら若干引いている公爵令嬢。
「あれくらいやらないと王太子はともかく河童ハゲとかに付きまとわれる可能性が消せなかったんすよ。権力もってるエロガキって本当に困るっす。こっちは庶子で元平民の下位貴族のなんちゃって令嬢っすからね。ストーカー防止法とかもないし。どこでどんな権力を使われるかわからないっすから。王太子妃になる件に関しては非処女っすから婚姻前の処女検査で側室どころか妾がいいところ。王宮は堅苦しくて外に遊びにも出られないし、あたしには無理っすよ。」
「非処女ってひょっとして王太子たち?」
少し憐れむような眼でメイドを見る。
「あっ。気にしなくていいっすよ。アホ王子は根拠のない自信たっぷりに『君を正妃にするから』とか言って、断れない感じで迫られましたけど、やった分だけ貢がせましたから。今ではちょっとした資産家っす。お嬢様に雇っていただけるのも合わせて一生安泰です。それに王太子達に食べられる前にとっくに幼馴染に捧げてたっす。」
「え?そうなの?」
「はいっす。庶民風イケメンっていうか平民のちょっとした色男だったんすけど、『君のことは好きだけどパン屋になる夢を捨てられないんだ。』って言われて捨てられたっす。まあ相手の子は一人娘で家持の職人の家庭ですから平民カースト上位で実質逆玉みたいなもんでしたらね。その頃の私は酒場のウエイトレスでしたから仕方なかったっす。若気の至りっていうやつですね。」
「その後男爵家に引き取られたのよね。いくつのころなの?」
「当時は14歳でしたね。」
「平民は進んでいるのね。」
公爵令嬢は価値観の違いに驚いている。貴族女性の婚姻は18歳以上でもちろん婚前交渉などあり得ないのだ。強く言えばやらせてくれる・・・そういうところでアホどもが彼女に溺れた理由でもあった。
「照明が消えたのはどうやったの?」
「あれは銭亀さんにやってもらったっす。昔ハニトラに引っ掛けとった杵柄っす。未成年のうちに手を出させたので今でもいい協力者っす。」
そう照明が消えた後男爵令嬢が消えたのは誘拐でも何でもなく彼女が自分で舞台から下り屋外へと出て行っただけだった。ちなみにこの国の成人年齢は16歳で未成年に手を出したのが発覚すれば最低公職追放である。
「そっそう・・・子豚さんって見かけによらず肉食なのね」
「子豚さん?」
「ほら手紙に『怪盗子豚・ザ・ファースト』って」
「あっほら私ってピンク髪じゃないですか。子豚さんの色に近いかなって。ペンネームみたいな物っす。時間まで暇だったんで会場から銭亀さんにパクってきてもらった料理を食ってたっす。大変おいしゅうござったっす。ちなみに豚は雑食ですよ。もともとイノシシを家畜化したもので数年前に人間も食べたって事件がありました。これ豆っす。」
そういうと公爵令嬢に後ろからそっと抱き着いて耳元でささやいた。
「だからお嬢様もおいしく頂いちゃおうかなって思うんですよ。」
「えっ何をするの?」
子豚さんの手が怪しい動きをする。
「まさか・・・・私たち同性じゃない。」
「ほら子豚は雑食ですから、ノンケだってかまわないで食っちまうんすよ。」
「え?え?」
こうして狼さんは子豚さんにおいしく食べられてしまったのでした。
*
三時間後ベッドに横たわる金狼さんと、彼女の髪をなでる子豚さんの姿があった。
「うう・・・もうお嫁にいけない・・・」
金狼さんがつぶやく。
「お嬢様は婿を取るので問題ないですよ。それに穴をあけるような真似もしませんし。」
「もうやめてって言ったのにあんなに激しくするなんて・・・・」
金狼さんが少し恨みがましい目を向けるが子豚さんは気にしない。
「私は百戦錬磨の大ベテランすからね。ルーキーどころか処女に毛の生えたようなって、お嬢様は毛の生えた処女でしたね。そんな方にベッドの上で負けるわけがありませんから。それにしても三食お嬢様付きとは最高の職場ですね。本当にありがとうございます」
「私を食事の付け合わせのように言わないでくださる?」
「何をおっしゃるのですか!これは一日三回お嬢様を食べられるお嬢様付きの侍女っていう意味で、お嬢様がメインディッシュに決まっているではありませんか!
「そんな雇用条件は認めていません。」
「あんまり細かいことを考えていると小じわが増えますよ。ではいただきます。」
こうして狼さんが毎日子豚さんに食べつくされる生活が始まったのであった。
ちなみに数年後公爵令嬢が婿を取り無事に夜の生活を送れることを見届けると、お邪魔虫にならないように子豚さんは銭亀さんと結婚をした。
「やっぱり公務員は安定していていいわ。さて今日も搾り取るか」
こうして二人の令嬢は末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
登場人物紹介
男爵令嬢:登場人物完食。淫乱ピンクの面目躍如。夜の生活以外も実は相当多芸で成績も優秀。公爵令嬢とは割と初期から接触していた。実は転生者でこの世界が18禁の乙女ゲ―だと知っている。前世では相当やりこんでいたため攻略情報もあった。ゲームでは攻略対象ではない推しキャラであった公爵令嬢を食べられて大満足。
公爵令嬢:普通に優秀。家の力関係で政略結婚の駒にされていたが、あほ王子にはうんざりしていた。結婚するまではちゃんと処女だった。
元王太子:あほボン。優秀な元婚約者に嫉妬していた。数年後国王の引退とともに王族籍を抜け宮廷伯になる。
宰相令息:再教育の結果視力が落ちて10年後モノクルになった。
騎士団長令息:再教育の結果ゴリマッチョになった。脳筋だが10年後優秀な上司に出会い辺境でうまく使われているらしい。
枢機卿令息:実は転生者。ゲームの設定で河童ハゲになっているので何をしようと皿の部分に髪は生えない。そしてそのことに絶望していて厭世的。10年後大銀杏を結って皿部分を隠した。
銭亀:原作ゲームには登場しない。実は子爵位を持っており優良物件。嫁が絡まなければ誠実でまともな人。現嫁にお助けキャラにするため食べられた。夏でも帽子をかぶっているが将来の禿候補生ではないかと嫁に疑われている。




