夢幻の数え歌
ひとつ ひとよの ひめごとを
ふたつ ふるえて ふみにかき
みっつ みじかき みちのはて
よっつ よいまち よいしぐれ
いつつ いびつな いろとよく
むっつ むげんの むつみごと
ななつ なくした なをよべば
やっつ やさしい やみのおと
ここのつ このこえ このからだ
とおで とおくへ とつげもせず
■□ ■□ 原文 ■□ ■□
一つ 一夜の 秘め事を
二つ 震えて 文に書き
三つ 短き 道の果て
四つ 宵待ち 宵時雨
五つ 歪な 色と欲
六つ 夢幻の 睦み事
七つ 失くした 名を呼べば
八つ 優しい 闇の音
九つ この声 この体
十で 遠くへ 嫁げもせず
■□ ■□ 意訳 ■□ ■□
たった一夜の秘め事だったけれど
震える手で書き残した
二人で歩いた短い道の果てには
祝福するかのように宵待ちの月が照らしてくれた……かと思えば、あっという間に時雨に隠されてしまった
所詮はいびつな色と欲の関係
あんなに求めあった睦み事も夢か幻か
姿を消したあいつの名を呼べば
うすら優しい闇の音しか聞こえてこない
あの人に捧げてしまったこの声とこの体
もう、どこへも嫁ぐことはできない