(1)
「えー。なんでー?」
ホテルの一室。
眼下で股を開いた女が僕に問いかける。
僕の見た目だけを見てホイホイついてきた女にはやはり勃たない。
「あー、おん、ごめんな」
「根元までズルムケなのに勃たないとか最悪〜」
女は今まで被っていた猫を投げ捨てたかのように明らかに不機嫌な顔をしそそくさと服を着て部屋を出て行った。
別に何を気にすることもないし、釣った鯛が逃げたなんて大層なことも思わない。
女にはたいして興味はない。
タバコに火をつけ大きく吸いながら服を着る。
「ホテル代半分くらい払って帰れよ…」
軽く呟きながら部屋を出る。空は真っ暗。
ホテルに入る前はまだ少し明るかったのにな。
空の色の移り変わりの早さに冬を感じる。
今日はもう帰るか。
バイクに跨る。
10分程走ったか。公園横の道を通過中。
毎朝ランナーが多く利用する公園。
ちょっと寄るか。
駐車場にバイクを停め少し公園内を歩く。
朝は多くのランナーが利用するが夕方以降はあまり人がいないようだ。
5mほど前に1人、スポーツウェアを着たおばさんがウォーキングしている。
僕は背中のリュックの中の包丁を握りしめ、足音をおさえながら早歩きで近づいた。
包丁を振り下ろす瞬間、僕の根元までズルムケのイチモツは激しく勃っていた。