奈落 ②
私はひんやりとした感触により目を覚ました。
「クワッ?(ここはどこ?)」
見渡すと限り洞窟内には怪しげな霧が立ち込めていて、更に奥の方には毒々しい滝や明らかに身体に悪そうな色の大きな湖があった……
なに、この地獄の様な空間は?
何一つとっても身体に悪そうなものしかないんだけど……
しかし、着ぐるみを着ているおかげなのか、怪しげな霧を吸い込んでも気持ち悪くなることは無さそうかな。
もしかして、色が悪いだけで身体には悪くないのかな?
パキッン……
「クワッ?(何か踏んだ?)」
湖の方に行こうかなと思って歩きだしたら、何か堅いものを踏んだみたい……
「クワッ!?(ギャアア!?)」
私は何を踏んだのかなと気になったので足の下を見てみるとびっくりしてしまった。
私が踏んだものは、人の頭蓋骨みたいな形をした骨だった……
しかも、足元を良くみると頭蓋骨は一つだけではなく、床一面が砕けた頭蓋骨や人体の骨に広がっていた。
えっ、なにここ……墓場?
そう言えば、何で私はこんな場所にいるんだっけ?
確か学生の2人と洞窟を脱出する為に頑張っていたのは覚えているんだけど……何でこんなところで倒れていたかが思い出せなかった。
それに2人はどこに行ったんだろ?
あの2人は直接的な攻撃魔術がないから、2人だけで騎士達に遭遇したら、戦えないし逃げるのも難しそうだから、非常に危険だと思ったのですぐにでも合流したいな……
っていうか、本当にここはどこなのかな?
私は骨まみれの地面を申し訳ない気持ちで湖の方まで歩いていくのだけど、湖までの距離が思った以上に遠くてびっくりする。
あれ?
距離感がかなり狂わされてるのかな?
いくら歩いても湖までの距離が縮まる気配がないな……
もう少しだけ湖まで歩いてみようと、進んでいたら……
【耐性魔術・妖魔を覚えました】
【耐性魔術・毒を覚えました】
【耐性魔術・麻痺を覚えました】
【耐性魔術・幻覚を覚えました】
【耐性魔術・呪いを覚えました】
【耐性魔術・腐敗を覚えました】
えっ!?
何か一気に耐性魔術を覚えてしまったのだけど、もしかしてこの霧みたいなのには良くない効果がいっぱいあったのかな?
私は着ぐるみの両手を見てみたが、腐ったり溶けたりしていないから、元々着ぐるみ自体に耐性があったのかな?と思い始めた……。
何か白木エルみたいな超天才なら、ついでみたいな感じでいろいろな機能をつけていてもおかしくはないのではないだろうか。
そして、私は念のために自身に覚えた耐性魔術のうち、妖魔と幻覚の2つをかけることにした。
本当は呪いの耐性魔術も使ってみたかったけど、私の処理能力では2つ同時が限界みたいだった。
ちなみに、耐性魔術は直接的な攻撃魔術みたいに撃ったら終わりではなくて、継続的に魔術を使っている意識をしていないと耐性魔術が切れたり弱まったりする感じで、攻撃魔術より難易度が高いなぁと私は思っていた。
「クワッ!(視界がクリアになった!)」
先ほどまで霧がかかったみたいになっていたけど、耐性魔術を使ってみたら一瞬にして視界がクリアになった。
あの霧は妖魔か幻覚のどちらかだったって事なのかな。
そして、視界がクリアになって湖までの正確な距離が見えるようになったのだけど、実は湖は近くにあって、幻覚の効果で湖の回りを歩かされていたみたいだった。
「クワッ(でも視界がクリアになっても湖や滝の色がヤバいのは変わらないのかな)」
「ほう、精気の気配がするから来てみれば、可笑しな生き物がおるな……」
「クワッ!?(誰!?)」
私は背後からおじいちゃんみたいな声が聞こえて来たので、びっくりして振り返ると、そこにはローブを羽織った鈍く怪しい色に光るガイコツが立っていた……
「クワッ!!!(キャアアア!!)」