国外脱出 ④
私はいきなり超級氷魔術を覚えてしまい、びっくりしていた……
リーダー格の騎士が自慢げにアイスブリザードを使っていたのを考えると超級魔術というのは、簡単には覚えられないものだろうと分かるからだ。
まあ、騎士たちが実は雑魚騎士だったなら話しは違ってくるだろうけど、王女の勇者召喚に立ち会う位だから、雑魚騎士という事はないだろう。
「ううう……さ、寒さが限界……」
「私も意識が……」
あっ!?
ヤバい!
余計な事を考えている場合じゃなかった!
私はアイスブリザードと共に覚えた耐性魔術・氷耐性を女子2人に早速使い、更に治癒魔術・自然治癒を重ねて使ってみた。
2種類の魔術を同時に使うのは初めてだったけど、わりと何とかなってしまった。
しかし、2種類の魔術を使ってみて分かったけど、同時に違った作業をするのと同じで、2種類の魔術なら難しくないけど、これが3種類とかになってくると難易度が一気に跳ね上がる気がした。
これは私が同時にいくつの作業をこなせるかという能力次第っぽいから訓練次第では多少は使える数も増えるかもしらないなと思った。
「あれ……? 急に寒さが和らいだ? しかも、身体がポカポカして心地よいかも」
「うん……枕があったら寝ちゃうかも」
「クワッ!(寝ちゃ駄目だから!)」
「もしかして、これはペンギンさんが……?」
「クワッ(そうだよ)」
私の言葉は通じないけど、多少は頷く事は出来るので、女子の疑問に頷いておく。
「な、何故、アイスブリザードの中で会話が出来るのだっ!? 耐性がない限りは吹雪の中では会話すら出来ないはず……まさかレアな氷耐性魔術を使える者がいるのか?」
リーダー格の騎士がアイスブリザードを使いながらも、私達が吹雪の中で死んでいない事に戸惑いの表情になっていた……
あれ?
氷耐性の魔術ってレアなの?
「……しかし、既に風、土、水と3人の属性は分かっているし、2属性持ちならば勇者様と共に勧誘される筈だから、こんな場所にいるはずが」
吹雪のせいでリーダー格の騎士が先ほどとは違って、小声でブツブツと話しているから、何を言っているのか分からないが、騎士が戸惑っている今がチャンスな気がしたので、私は騎士めがけて勢い良く滑走する。
「クワッ!(体当たりを食らえ!)」
「な、何だとっ!?」
しかも、アイスブリザードのおかげで足元は新雪の様になっているからちょうど良くて、召喚部屋で滑走した時よりもスピードが出ている上に狭い道なので、回避される心配も少なかった。
ドゴッン!!
「ぐはっ!」
リーダー格の騎士はアイスブリザードを使うのを止めて逃げるか、そのままでいるかを一瞬ではあるが迷ってしまった為に、私の体当りから逃げそびれてしまい、まともに私の体当りを受けて吹き飛ばされていた。
「……うぐっ」
リーダー格の騎士は私の体当りをまともに食らい、かなり吹き飛ばされていたのに、衝撃ですぐには立ち上がっては来ないまでも、気絶するほどの衝撃では無かったみたいだ。
ここでリーダー格の騎士をしっかりと倒してから逃げようかとも思ったけど、他の騎士達が来てしまうのではと不安になったので、私は逃げる事を選択した。
「クワッ(戦利品はもらっていきますね)」
私はリーダー格の騎士から高そうな剣と魔術石、腰に付けていた大きめの袋を戦利品としてもらって行くことにした。