地上へ ②
私と師匠はダンジョンの外へ出るための転移門前にいた。
『やっぱり師匠はここに残るのですか?』
『ふむ、ダンジョンボスの死体を見て分かる通り、わしの妖魔属性はアンデッドや高位の妖魔耐性がない限りは死を撒き散らす危険なものじゃからな。わしは地上に上がりたいとは思うが、世界を滅ぼしてまで地上へ行きたいとは思わんよ。それにわしの特別な魔術を継承してくれた弟子がおるしな』
『そうですか……でも、今更ですが師匠の魔術を継承したのが私で良かったんですか? 多分、師匠と比べたら凄く性能が落ちているんですが……』
師匠から超級魔術を超える禁忌級の魔術をいくつか継承したのだけど、師匠が試しに手加減して放ってくれた見本より高い精度を放つ事が出来た魔術はひとつもなかった。
多分、師匠が全力で放ったら私が放つ魔術の10倍は出るのではないかと思っていた。
『……おぬしはもう少し自信を持つことを覚えた方が良いかもしれんのう。わしは今の実力になるまで数十年という歳月がかかっとるのじゃぞ?半年やそこらで追い抜けるほど魔術の真髄は甘くないぞ』
『それはそうなんですが……』
どうしても師匠の凄さを見てしまうと、何十年鍛練したとして私は本当に師匠に追い付けるのかなと考えてしまっていた。
しかも、師匠みたいに無限に近い寿命があるわけでは無いので、才能が師匠を超えていないと師匠を超える事は不可能という事になるのだ。
『まあ、おぬしが地上に出ればわしの言っている事も理解するじゃろう。さあ、そろそろ転移門に入らないと門が閉じてしまうぞ。それともまたダンジョンボスと戦うかのう?』
『えっ! またダンジョンボスと戦うのは嫌です!』
ダンジョンボスとの戦いは圧勝の様に見えるが、実は魔力もギリギリだったし、私と師匠の切り替えタイミングも絶妙だったから勝てたところもあったので、またすぐにダンジョンボスと戦えと言われたら勝てる気はしないので、是非とも辞退したいと思う。
『そのうちおぬしが成長したらまた奈落ダンジョンに来るのじゃぞ。その時にまた成長具合をみてやろう』
『分かりました。いつになるかは分かりませんが、必ず来ます!』
そう言って、私は転移門へと入っていくと視界が真っ白になっていく。
師匠の話では視界が回復したら地上に上がっていて、ダンジョンの遺跡みたいな場所に出る筈だと言っていた。
ダンジョンの遺跡などは神々が地上を作ったときに作成したものなので、基本的には人レベルでは破壊不可能な強度らしいので、変わってはいないだろうとの話だった。
さてと、地上に上がったら、一緒に転移された学生達がどうなっているかを調べて、無事に逃げていて普通に生活出来ていれば私は特に関わる気は無いけど、もし不自由な生活をしていたり囚われていたのなら、偽善者っぽいけど同じ日本人として全力で助けてあげたいと思っていた。
出来れば私の助けはいらない状況になっていれば嬉しいかな……
おっ、視界が回復したら師匠の言っていた通りで神殿みたいな場所に出てきたぞ。
もしかしたら遺跡内には警備している騎士などがいるのかなと思っていたけど、回りを見渡しても人がいる気配がしなかった。
いくら破壊不可能な遺跡だからって言っても不用心過ぎないかな?と思ったけど、ダンジョン帰りの冒険者などが毎日のように通過する場所なのだから、変な人達がたまる事は無いのかなと思い直した。
確か師匠が地上にいたときは、ダンジョンの遺跡と街は凄く近い場所にあったと言っていたけど、現在はどうなっているかなと考えながら遺跡の外へと出たのだけど、目の前には予想外の光景が広がっていた。