奈落ダンジョン攻略 ③
奈落のダンジョンボスが遠くから歩いてくるのを見て、正直こんなのに勝てるの?って思ってしまった。
最初は広場自体が薄暗くてダンジョンボスの全体像は見えなかったけど、視認できる様になると頭の位置が5階建てのビル並みの高さにあり、羽は小さいが代わりに身体自体が物凄く大きかった。
『このダンジョンボスはおぬしにはちと荷が重いかもしれんのう……怖いようなら離れた場所で耐性魔術を使うだけでも……』
『大丈夫です! 確かに怖いですが、ここまで来たんですから一緒に戦います!』
『ほう、頼もしい返事じゃな! ならば一緒に戦うかのう。しかし、危険だと感じたら下がるのじゃぞ、古代種レベルのドラゴンブレスは超級の魔術すら超えるかもしれんからの……おぬしは炎属性には弱いから、相性は最悪じゃ』
『無理そうなら下がりますので安心して下さい』
私は半年前に騎士の炎属性魔術をほとんど耐えられていたから、氷属性魔術よりは耐性が低くても、弱いとは思っていなかったのだけど、師匠とのいろいろな属性耐性を調べるときに、炎属性や火属性に弱い事が発覚したのだ。
しかし、それなら何故騎士の炎属性魔術は耐えられたのかを聞いてみたら、師匠いわく騎士のレベルが低かったのだろうという話だった。
『初手はわしが光属性の超級魔術・ラクリエスを使うから光耐性魔術をかけておくのじゃ』
『分かりました』
ラクリエスは師匠のみが使えた魔術らしくて、巨大な光の剣士を顕現させて戦わせる魔術だと聞いたことがある。
まあ、通常はラクリエスをつかうよりも師匠自身が剣で攻撃したほうが戦闘としては楽だし、周りにも被害が少ないから、ラクリエスを使う必要性は全く無いのだけど、きっと古代種のドラゴンってのは師匠が迷いもなく超級魔術を使わなくては行けないほど見た目通りのヤバいダンジョンボスなのだろう。
私は全力で自身と師匠に、光耐性魔術、衝撃耐性魔術を展開しながら氷属性の超級魔術を準備する事にした。
流石の師匠でもラクリエスを使ったあとは、一定期間魔力回復させないと次の超級魔術を使うのは困難なため、私が時間稼ぎのために氷属性魔術を使うつもりだった。
ドラゴンはある程度の距離まではのんびりと歩いてくる感じだったのに、師匠の魔術に反応したのか、攻撃範囲に入ったからかは分からないけど、ドラゴンはいきなり猛スピードでこちらに向かってきた。
ちょ、地震みたいに地面が揺れる!?
のんびり歩いていても地響きがしていたのに、走り出したらもう地震と変わらないレベルの揺れになり、なかなか魔術に集中出来なかったのだけど、そんな中……
師匠は揺れに対して一切反応していない感じだった。
この激しい揺れの中で平然と魔術を発動させようとしている師匠を見て、どうなってるの!?という感じだった。
そして、ドラゴンが師匠を攻撃してくるより先に、師匠の光属性魔術・ラクリエスが発動する。
すると、師匠の目の前に出現した小さな光の珠は、一瞬にしてドラゴン並みのサイズまで膨れ上がり、人形へと変わっていった。
そして、師匠が魔術を発動してから一秒程度だったのに、巨大な剣を片手に持った輪郭がぼやけた光の巨人が立っていた。