奈落ダンジョン攻略 ②
私とガイコツ師匠が奈落ダンジョンを攻略し始めてから2週間近い経過していたのだけど、師匠が言うには目の前にある巨大な扉の奥に奈落ダンジョンボスがいて、ダンジョンボスを倒すと地上に戻るための転移門があるらしい。
『そろそろおぬしともお別れじゃな……』
『やっぱり師匠が地上に行くことは出来ないんですか? 師匠って見た目を誤魔化す魔術も使えますよね、妖魔も人里から離れた場所で暮らせば……』
『わしは地上に行くつもりはない。それにおぬしは妖魔に耐性があるから分からんじゃろうが、人が妖魔の瘴気にやられると変容してしまう恐ろしいものじゃ。下手したら魔王並みにやっかいな怪物が出現することになるのじゃ』
『そうですか……師匠に会えなくなるのは寂しいですね』
『カッカッカ、もしわしに会いたければ、また奈落ダンジョンに来れば良いのじゃよ。奈落ダンジョンは無くなることがないからのう』
『それはちょっと……』
師匠と2週間ではあるが、奈落ダンジョンに挑んでみて分かったことは、私の実力ではまだ早かったという事実だった。
やっぱり師匠の言う通り、半年程度の修行では生き延びるだけでギリギリで、もし修行をしていなかったら、ダンジョン序盤の雑魚っぽい敵の広範囲攻撃により、あっさりと死んでいたと思う。
ちなみに何故2週間もダンジョン攻略にかかったかと言うと、移動の時間ではなくて敵の攻撃による怪我の治療時間や魔力を回復させる為の時間がほとんどだった。
たぶん、師匠だけなら2日位でここまで来れてしまうのではないかな?と思ってしまう。
そして、ダンジョンボスの扉を開いて見ると、そこには薄暗くてはっきりとは全体が見えないけど、かなりの広さがあることが分かる。
『ダンジョンボスは?』
私の勝手なイメージで、扉を開いたらダンジョンボスが正面にドーンと待ち構えているのかと思ったけど、そうでもなかっみたいだ。
『きっと中を徘徊しておるのじゃろうな、わしもここに入るのは初めてじゃから、何が来ても良いように常に警戒するんじゃぞ』
『分かりました』
私と師匠が広い空間に入ってから少し経過すると、入ってきた扉はいつの間にか消えていた。
師匠の言う通り、ダンジョンボスのいる空間は最初に誰かが入室してからしばらくすると扉は消えてしまい、内部にいる人が死んでから数時間経過しないと扉は再度出現しないのがダンジョンボスの定番らしい。
まあ、例外もあるらしいが奈落ダンジョンボスは定番の方だったんだろう。
ズンッ……
ズンッ……
『えっ、地震?』
『どうやらダンジョンボスは奥で寝ていて、これはダンジョンボスが近づいてくる足音らしいのう』
『それって……』
こんな身体が揺れる程の地響きが起こる位の足音って、ダンジョンボスの身体がそれだけ重たいって事だよね?
『という事は、身体がもの凄く巨体なのか、もの凄く重たい金属などの身体で出来ているかですか?』
師匠からダンジョンや街の外にいるモンスター等はある程度のタイプを習っていて、魔術生命体という魔術により作られたタイプの中に魔術金属で作られたタイプもあると言っていたので、これだけの足音なら、あり得るかなと思った……というか、もの凄く巨体なモンスターではあってほしくはないと考えていた。
だって、地震の様な足音のモンスターだなんて、明らかに……
『違う、この足音はドラゴンのものじゃな。しかもきっと古代種レベルのドラゴンじゃ……こりゃ、わしの予想を超えるレベルの個体じゃな……』
『えっ、こんなに大きなドラゴンってアリなの?』
私もドラゴンの姿が見える様になった時、あまりの大きさにびっくりしてしまった。