魔術王による最終試練 ②
私は両手に光属性魔術であるレーザーソードを展開して、ガイコツ師匠に斬りかかった。
『魔術の完成度は良いのじゃが……やはり、その体型では速く動けないみたいじゃの』
『これでも限界まで強化してるんですよ!』
私は纏気の他に風属性魔術も併用してスピードアップをはかりながら、ガイコツ師匠へ連撃を繰り出しているのだが、一向に当たる気配がない。
このままではガイコツ師匠に良いところを見せる前に魔力が尽きて最終試練が終わりになってしまう。
そして、最終試練に失敗したらガイコツ師匠は私を本気で殺すだろうというのが、半年一緒に生活していて何となく分かってしまう。
ガイコツ師匠は生きた証を残したいという気持ちが凄く強いのだが、その為にはガイコツ師匠の魔術を引き継ぐレベルの継承者として満たない者は不要という非情な考え方をしていた。
生前は違っていたみたいだけど、アンデッドになったことにより性格等もかなり変わってしまったみたいだった。
まあ、長い年月をアンデッドとして生きていたら、性格が変わってしまうのも仕方ないのかもしれない。
しかし、困ったな……
私は今の攻撃でそこそこ良い勝負になっているのでは?と甘い考えをしていたけど、ガイコツ師匠の実力は遥か先にあることがはっきりと分かってしまった。
『そろそろ隠している魔術を使わないと、そのまま死ぬぞ?』
『えっ、隠している魔術って……』
『どんな魔術かは分からないが、あるんじゃろ? 隠し球が』
『……』
確かにガイコツ師匠にまだ見せていない危険な魔術はいくつかあるけれど……ほとんどが超級魔術な上に使いこなせていないので、使い方を失敗したら暴発して私も師匠もまとめて吹き飛ぶんだよね……
一度、師匠が長期で奈落ダンジョンの調査に行っている時に、一番やり易そうな魔術を一人で試したのだけど、あっという間に魔術が暴発してしまい、私を中心として大きなクレーターが出来上がってしまうという事件が起きたのだけど、ガイコツ師匠が戻って来る前に、身体を治して地面を整地したりしたのでばれていないと思っていたけど、しっかりとバレていたのかな?
しかし、ガイコツ師匠の言う通りで、このままの攻防をしていたら確実に私の方が力尽きるだろうというのは容易に想像出来た。
だってガイコツ師匠は魔術で身体を強化しなくても、素のアンデッドである身体能力と剣術で戦えるし、スタミナもほぼ無限だから、時間をかければかけるほど、私がピンチになるという簡単な話だった。
それならば、やっぱりチャンスに賭けるしか無いのかな?
それに私が超級の魔術に失敗してもなんとかしてくれそうな気がする……多分。
『もし試すなら、中途半端な安定を求める魔術よりも、一発で私を倒すくらいの威力の魔術を撃ってみると良いかもしれないのう』
『それは……』
流石にそれは不味い気がする……
下手したら、この空間自体が……
『失敗が怖いのかのう?』
『むうっ、そこまでいうなら見せますけど、師匠が死んでも知りませんよ!』
『おぬしの力ではまだアンデッドのわしを殺せるとは思えんが……そうじゃな、わしが展開する防御魔術を10枚削れたら最終試練は合格して、おぬしを継承者として認めよう。どうじゃ? 少しはやる気が出たかの?』
『……本当に危ないですよ?』
私の予想では師匠の防御魔術を30枚くらいは破壊するだけの威力があるのではないかと思っているのだけど……大丈夫かな?