表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/30

第二十七話 それぞれの道

 俺たちはギアを囲んでいた。

 ギアは床に横たわり、指一本動かせないほど衰弱している。

 あの一撃をまともに受けたのだ。ダメージは大きかろう。

 ギアは力なく笑った。


「ひどいなぁ、ネル……ぼろぼろだよ……」

「俺を殺そうとしていた奴が何を言う。その程度で済んで恩の字だろ」

「……まったく、ネルは厳しいね……」


 やはり弱々しく笑うギアに俺は告げる。


「俺の勝ちだ。約束通りこの世界を滅ぼすのはやめてもらうぞ」

「……そうだね。僕の完敗だ。さすがにこれ以上恥を晒すことはしないよ」


 ギアはため息を吐く。


「これからどうしようかな……」

「俺たちと一緒に来い」

「……そうはいかない。けじめはつけなければいけないからね……」


 そのセリフに俺は歯がゆく思う。


「つまんないことにこだわってんじゃねえよ! 俺と一緒に来い! 仲間だろうが!」


 俺はギアに触手を差し伸べた。

 ギアは大きく目を見開いてそのスライムの触手を見つめている。

 ややあってから目元がふっと笑った。


「ネルは嫌になるほど優しいね……」


 その皮肉めいた言い方に俺も笑うしかなかった。


「こんな時まで皮肉かよ? ほらいいから手を出せ」

「……本心なんだけどな……。ところで申し訳ないけど指一本動かせないんだ。少し手を貸してくれないかな?」

「ああ、分かったよ」


 俺はギアに少し近付いて、もう一本触手を出して抱き起そうとする。

 しかし――その瞬間だった。


「ネルは優しいよ……でも、甘いね」

「え?」


 ギアの手が急に伸びてきて、触手を引っ張られ引き寄せられる。

 そしてスライムのボディにギアのパンチが埋まっていた。


「ぐはっ!」


 あまりの不意打ちに俺は避けられなかった。衝撃がコアまで響き俺は意識が薄くなる。

 俺はそのまま引き寄せられてギアに耳打ちされた。


「ネル……その甘さがいつか命取りになる。気を付けて……ラピス王女が隠し事をしているのは本当だから」


 ギアは俺を手離し、俺の体は地面にずるりと落ちた。


「ネル様!」

「ネル殿!」

「ご主人様!」


 ラピスとリリィが駆け寄ってきて、クロがギアに向かって短剣を振りかぶる。

 そこまでは見えた。

 しかし――そこで俺の意識は闇に沈んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ