序章「日常の崩壊」
このお話は、平凡な男子高校生が突如特殊な転生能力を得て、時空をも越えて冒険をしていくという、若干王道転生ものになっています!
まだまだ未熟ですが、どんどんハイペースで投稿していくので、今後とも是非よろしくお願い致します!
それでは、「黄昏の輪廻」、お楽しみください!
なんでもない、いつも通りの日常の中で。俺はただ一人…
黄昏ていた。
「――――、――――ん、カイトくーん、もしもーし。留守ですかー?」
痛いほど聞き慣れたその声に呼ばれ、ふと俺は我にかえった。
そして俺は声の主へ向き、
「なんだよカケル、人がかっこよく黄昏てるってときに。」
「あのなぁ、カイト。一限から六限まで飯も食わずぶっ通しで黄昏てたってんなら、早く病院行った方がいいぞ。」
と、額を覆うように掌をあて、分かりやすいほど呆れながらそう話す少年の名はカケル。年の頃は17で、運動神経抜群、学年一桁を3年間キープし続け、それに加えこの甘いルックスである。
女子にモテない、などという嘘をつくには到底無理がある。
一方、一日中意識だけ別世界に行ってしまっていたこの少年はカイト。学力、運動神経、ルックス全て平凡。特筆することのない彼について、何か一つ挙げるならば、特徴的なのは前髪に縦に流れるように入る赤のメッシュだろう。
本人は「これを見て惚れない女はいない(キリッ)」と自負しているが、まずやるべきことは鏡を見ることだろう。
この二人は幼少期からの幼なじみで、何がこうも二人の間に差を作ってしまったのかは不明だが、端から見ればそれはとても仲の良い馴染みの二人である。
「それはそうと、カケル。今日のノート全部見せてくんね?ジュース奢るから。」
「はぁ、お前は一体何しに学校に来てるんだか…。」
カケルは、幸せが全て逃げていきそうなほど大きなため息を吐きながら、ほれ、とカイトにノートを手渡した。
カイトは時折、うわ、女子みてぇな字だな…キモ。などと借りている立場の人間とは思えないような酷い独り言を言いながらサラサラとノートを写しはじめた。
「そうだ、カケル。これ知ってるか?」
カイトがそう言いながらカケルに見せたスマホの画面に映されていた記事には、近頃この学校の付近で多発している連続通り魔事件について書かれていた。
「もちろん、知ってるよ。…って、まだ捕まってないんだな、犯人。」
「しかも襲われてるのは全員JKだと。とんだロリコンサイコパスだな。」
「はは、カイトはロリコンだから将来有名人かもな。」
「おい、ロリコンとは失礼な。俺はただ、年下の、小さくて、笑顔の素敵な女の子がストライクゾーンなだけだ。」
「それをロリコンというんだ、カイト君。」
「まあまあ、どうせ俺らは男だし?殺られないってこった。んじゃ、ノートサンキュ。帰ろうぜ。」
「その前に、ジュースだ。」
ふと、カイトは何かを決心したような強張った表情へと一変し、
「退散!!!」
放課後の廊下を一目散に駆けていった。
「そうそう、逃げるは恥だが役に立…って、まてぇぇぇぇぇぇい!!!」
そんな、男子高校生らしいくだらないやり取りを繰り返しながら、二人は夕日に照らさて橙色に焼けた校舎を後にした。
「じゃあな、カイト。俺こっちだから。」
「おう(泣)」
二人は既にいつもの帰路についていた。
そこでは、何故か泥まみれでボロボロのワイシャツを纏い、半泣き状態でとぼとぼ歩くカイトと、笑顔で美味しそうにジュースを喉に流し込むカケルが、ちょうど分かれ道で手を振り合っているところだった。
カケルと別れてから少し経った頃、ふと、話題の通り魔事件のことが頭に浮かんだ。
「まあ、俺男だしなぁ。殺られねえよな?急に気が変わって男襲ったりしないよな?」
と安心したり不安に駆られたりと、脳内会議が忙しくなってきた頃だった。
「いやあああああああああああ!!!!」
――ッ!?
今の声は普通じゃない。そんなことは誰が聞いても分かることだが、それよりも問題なのは
「通り魔…しか考えられねぇ!」
もし、声の主があの連続通り魔事件の犯人に襲われているのであれば、一刻を争う事態だ。
警察に通報したって間に合わない。近所の人を呼んでいる暇もない。ならば…
「ちっ…やらせるかよ…!!」
カイトは手に持っていた荷物を全て投げ出し、全速力で駆けた。
今、救えるかもしれない一人の女性の命を見捨てることは彼には出来なかった。
「間に合え間に合え間に合え……!!!」
そして、今まさに殺人現場になろうとしている路地へ足を踏み入れ、カイトは視界に必死に駆けてきたであろう少女の姿を捉えた。
更に奥にはキラリと輝く、物騒な刃物を片手に、狂ったように襲いかかろうとしている男の姿が。
そして、息つく間もなく男は目の前に立ちはだかり手を振りあげ…
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
カイトは少女の手を全力で自分の方へ引き寄せ、その勢いのまま、後方へと投げた。
しかし、その反動でカイトの身は前へ乗りだし、
「くっそ…!退けねぇ!」
真っ直ぐに振り下ろされるその凶器を、そのカイトが避けるのに十分な時間など、なかった。
ザシュッ……
何か柔らかいものを鋭利なもので綺麗に裂く音が、細い路地に響いた。
「ぐはっ……,いっ……!がはっ……」
カイトは深紅に染まる血反吐を吐き散らし、ドサッと音を立てて倒れこんだ。
(ははは…これで俺の人生終わりかよ…。かっこよく終われて何よりだ。。)
「―…!――ト…!」
(…聞き慣れた声だ。カケルか。わりぃな。もう一本くらい、ジュース奢ってやりゃよかったな……)
そうして、カイトは静かに息を引き取った。
「××くん、××、ほら、早く起きなさい。」
聞き覚えのない名で、女が俺を呼んでいる。
ゆさゆさと体を揺らされ、少しずつぼやけた視界が鮮明になっていく。
「……ここは?というか、あなた誰ですか。」
その女は、この子は一体何を言っているんだと言いたげな顔で
「もう、寝ぼけてないで。今日は父さんと魔術の練習するんでしょう?」
「ん?」
おかしい。なんだこの違和感は。俺は死んだ。
さらに、俺は俺なのに、俺でない気がしてきた。
そして、見渡す限り、明らかに俺の死んだ東京ではない。
ただ一つ。この違和感の最大の論点が
「これは…、誰の…記憶だ…?」
頭の片隅に、自分の物ではない誰かの記憶が、鮮明に刻まれていた。
そして、自分にかかる掛け布団のような布を払い、いざ、動かんとしたその時だった。
「な、な、な、ぬわああああああんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺、転生しますた☆
文章の切り方って難しいですよね。
私は困りに困って星つけちゃいますた☆