公爵邸
唇を擦りながらさっきのファーストキスを確かめながら歩いていると気づいたら家正門まで着いていた。
自分あんなロマンチック乙女全開な部分があったなんて昨日までの私には考えられなかっな何て思いだしてニヤける。
しかし、この門をくぐり抜けたら昨日私に戻り厳格な父と兄と向き合わなければならない、私がルドガーと婚約するのは並大抵の事では無いだろ。
大陸の覇者アース帝国第三王子と小国公爵令嬢正直各が足りないじゃないかと思うし、穏健派の中心である父に取って社交界の駒である私を簡単には手放さないだろね。
母は…………問題ないな!
私は門くぐり抜け玄関のドアを開ける。
「おかえりなさいませお嬢様。」
私つきのメイドのルナが出迎える。
ルナの母が私の母のメイドな上に同い年の私達は姉妹の様に育った、去年成人して私は学園へ、ルナはメイドになり私専属なった何でも話せて一番自然にいられる人それがルナ。
時々かなり相当軽口が多いのが難点ではあるが…
「ただいま、お父様やお兄様の様子は?」
ルナに訪ねると
「旦那様は帰宅と同時にトーラス様と御二人で書斎にこもり何やら談笑中の御様子です。」
今回、私に非がなくともこれだけの騒ぎを起こしてしまった私を、父と兄はどう思っているだろうか?
しかし、ルドガー王子との婚約を認めて頂くためにも諦めてはいられない私は唇を指で触り覚悟を決め書斎をノックする。
「失礼します。今回これ程の騒ぎを起こしてしまい大変申し訳ありませんでした。」
開口一番全力で頭を下げる私に兄が優しく抱きしめて言う。
「詳細は既に把握している辛かったろう。
あの場に私がいたら決闘でケリー王子を亡きものにしてやったのになルドガー王子は手加減し過ぎだ。」
兄の言葉と瞳にはケリー王子への怒りが満ちていた。
「これ、洒落にならんぞ!トーラスお前は下がっていなさい私はアイナと話がある。」
父は軽く兄を諌めて私を睨む。
兄が出ていき父と二人重々し空気の中父が口を開く。
「アイナお前には10日間の自宅謹慎だ、理由は説明の必要はないだろう。」
「はい。」
頷く私に父は話を続けた。
「今回のお前の処分は以上だ!」
このぐらいの処分で済んだのはゲイリー国王陛下のお言葉のお陰だろう。
「それでアイナ今回お前は過程はともかく、結果だけなら最高の結果を穏健派にもたらした。
無能な第一王子の継承権を剥奪し上に、今回の騒動に加担した生徒は皆、強硬派の子息達だ強硬派の発言力は地に落ちたろう。
必然的に家臣の信頼厚き有能で穏健派に近い第二王子を継承権第一位まで押し上げた。
狙ってやっていたなら恐ろしい位だ。」
呆れる表情で父は告げる。
「しかし困った、この国でお前を嫁に貰ってくれる様な奇特な者はもういなくなったろう…
まぁ国外ならなんとかいるかも知れんがな…」
「お父様、それでは…」
「お前は良くやったよ、あとは好きにしなさいアイナの心のままに…それと守ってやれなくてすまなかった。」
父は私を抱きしめて言う。
そんな父の腕の中で私は子供の様に声で出し泣いた。
父の書斎を出ると母とルナが心配そうに見つめていたが、私の表情から何か読み取ったようでホッとしていた。母は笑顔で
「食事にしましょう!」
と、言っていて我が家の食堂へ向かった。
するとルナが私に駆け寄り耳元で。
「良かったですね、10日後からは毎日白昼夢が見られますね。」
顔が人生最大に熱くなる。
まさか、聞かれていた!あの時の私はどうかしていた、一瞬で心奪われ物語のヒロインの様に凄く自分に酔っていた。
あの状況で唯一私に手を差しのべたルドガーがまさか超大国の王子様そして驚異的な強さを持つ英雄。
婚約破棄直後の処分さえ決まらない私…
盛りすぎて物語でさえ胃もたれするくらいのストーリーだ。
これが父の反対や強硬派の妨害などを乗り越え今夜するならともかく、今や力なき強硬派は自分達の子供せいで身動きは取れない…父は反対しない…
各なる上はアース帝国に期待するしかない!私のあのセリフを黒歴史にしないために私とルドガーの婚約の反対を…
もちろん最終的には認めていただきたいが………
それから10日間と謹慎が開けて登校するまで毎朝ルナは
「お嬢様白昼夢の時間ですよ!起きて下さい。」
と、毎日私をからかった。
謹慎開け登校する私を心配?するルナが着いてきてくれた。
校門ではルドガーが待っていた私に向かって笑顔で。
「おはよう!例の婚約なんだが両親に俺が選んだ相手なら文句ないと言われてオッケーを貰ってきたぞ!
アイナ嬢のご両親は婚約を了承いただけたろうか?」
ルナの肩は震えている。
私は思わず。
「反対とはしてなかったわ、ただ色々と立て込んでるみたいで…正式な婚約は何時になるか………」
ルナは我慢出来ず吹き出す。
「良かった反対はされてないだけでも安心した俺はまだ卒業まで三年あるそれまでに認めて貰うさ。今日は朝から演習場で授業だからまた後でな。」
まぶしい!彼がひたすらにまぶしい!彼笑顔で演習場に向かっていた。
ルナはすかさず。
「良かったですねお嬢様、人には一二つの黒歴史があるものですよ。おめでとうございますお嬢様、高嶺の花から人になれたのですね。」
肩を震わせ私に声をかける。
「ルナ!貴女はクビよ!」
「残念ながらお嬢様、私を雇っているのは旦那様です。
配置代えなら私の方から旦那様にお願い致しますが、私以外にお嬢様のポンコツ…いえ自由奔放な姿が見せられるならですが。」
言い切った、言い切りやがった。
私はこの悪魔メイドに言い返す術を持たない…貴族ってなんだろう?何か頭痛がしてきた気がする。
「だいたい見栄なんてはらずに素直に白昼夢が見られましたのに……ハァー」
私は卒業までの二年間口うるさいメイドのルナ無しで生活出来ないだろう、だが決めたこの二年の間に必ずルナに一泡吹かせてやると…
決意した見上げた空は雲一面に被われ凄く自信がなくなった。




